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脳疾患を知る

7-4
動眼神経麻痺-症状-

診察のアプローチ

ここからは実際に動眼神経麻痺の患者をどうアプローチするか解説します。まず複視を主訴に来院した方で動眼神経麻痺が疑われる例があったならば

 

①動眼神経の単独の麻痺か?それとも他の神経麻痺も合併した複合神経麻痺か?

 

②動眼神経の3つの機能(眼球運動・開眼・瞳孔調節》のうち、どの症状が一番強いか?

 

③重症筋無力症、甲状腺眼症のサインはないか?

 

この3点を考えながら診察をすすめると理解しやすいかと思います。

 

①動眼神経の単独の麻痺か?それとも他の神経麻痺も合併した複合神経麻痺か?

 

 「視力・視野障害の有無」

   (視神経の問題はないか?)

 

 「外転制限の有無」

    (外転神経の問題はないか?)

 

 「下転時内方回旋の有無」

   (滑車神経の問題はないか?)

 

 「角膜知覚の異常」

   (三叉神経の問題はないか?)

 

これら複合的な神経症状が現れている場合は海綿静脈洞症候群、眼窩先端部症候群などを中心に考えます。いずれにしろMRI・MRAの撮影を行う事になるので「いちいち細かい事考えないで撮影すれば良いだろ」と考えたくなるのですが、撮影し終わった後に「冠状断も一緒に撮影しておけば良かった」「脂肪抑制眼窩内撮影も一緒に撮影しておけば良かった」など後悔し、後から追加撮影しなくても良いように撮影前にどのポイントを重点的に撮影するかを考えるべきです。

 

 

②動眼神経の3つの働きのうち、どの症状が一番強いか?

 

この症はあくまでも「複視」診療の進め方を解説しているので、動眼神経の眼球運動の働きが障害されているパターンが多くなります。しかしながら同じ動眼神経麻痺でも糖尿病では眼瞼下垂の症状が強く出るし、動脈瘤では瞳孔の症状が強く出ます。つまり②の動眼神経麻痺のどの症状が強く出現しているかどうかを認識しながら診察をすすめます。

 

③重症筋無力症、甲状腺眼症のサインはないか?

 

重症筋無力症は眼瞼下垂が有名ですし、甲状腺眼症は眼球突出や上転障害が有名です。しかし日常診察を行っていると初発症状に「複視」を主訴に来院するケースも多くあります。患者さんにとっては「複視」は明らかに日常生活を障害します。そのため、必ず重症筋無力症と甲状腺眼症は鑑別疾患に考えておき、「複視」以外の特徴的なサインがあれば検査の項目に抗アセチルコリン受容体抗体、甲状腺検査一式を組み入れると良いでしょう。

 

注意(動眼神経麻痺と滑車神経麻痺の合併)

 

複合神経麻痺の場合、動眼神経と外転神経の合併は分かりやすいのですが、動眼神経と滑車神経の両麻痺の場合は少し難しいので記載します。

 

 ・まず「内下方視の内旋の有無」について解説します。

これは動眼神経麻痺と滑車神経麻痺合併を考える際に非常に重要なキーワードです。動眼神経麻痺があると眼は下方外側を向いてしまうため、上斜筋による下内転の眼球運動評価が上手く出来ません。復習になりますが、滑車神経が支配している上斜筋の働きは

①内側を向いたときに目を下に動かす作用

②眼球を内側に回転させる作用

この2つになります。しかし動眼神経麻痺があると、最初から眼は下方外側を向いてしまうため評価が困難です。そこで患者さんに勢いよく内下方を見ようとしてもらいます。動眼神経麻痺があるので、実際には内転はしません。しかし、その際に眼球が内旋すれば上斜筋は保たれていると判断出来ます。つまり滑車神経麻痺は合併しておりません。一方で、内旋が見られなければ上斜筋は障害されていると判断します。内旋を観察する際には眼球結膜の血管を観察すると分かりやすいです。

 

注意(動眼神経麻痺と視神経障害の合併)

 

 まずRAPDが陽性か否かを確認します。

RAPD(relative afferent pupillary defect):

日本語では相対性求心性瞳孔反応欠損と言います。目でものを見る視機能を評価する検査です。

検査)ペンライトを使って片眼1~2秒ずつ交互に光を当てます。視神経機能が障害されている側に光を当てても、視機能が障害されていれば光刺激が脳にも動眼神経核にも伝わらないため直接対光反射、間接対光反射いずれも起こりません。先述した動眼神経の瞳孔調整の話を思い出して下さい。視神経を伝わった光は対象物を認識するために後頭葉に行くルートと光の量を調整するためにEdinger-Westphal核に伝わり動眼神経を経て瞳孔の調節を行うルートです。たとえば左眼のみ視神経障害があるとします。ペンライトの光を正常眼の右眼に当てると、右眼は縮瞳します。これを直接対光反射といいます。この際に左眼も縮瞳します。これを間接対光反射と言います。今度は障害のある左眼にペンライトを当てます。障害があるため光の信号は後頭葉にもEdinger-Westphal核にも伝わりませんので直接対光反射は起きません。正常眼の右眼も両側支配のため縮瞳しません。これを右眼RAPD陽性といいます。つまりRAPD陽性の動眼神経麻痺であれば視機能の障害が合併されているため、MRI撮影をオーダーする際に眼窩先端部をターゲットに追加シークエンスを加えられます。

 

 

「単独神経障害」か「複合神経障害」か?【動眼神経+視神経(RAPD)】【動眼神経+滑車神経(内下方視による内旋の有無)】
動眼神経の3つの働きのうち、どの症状が一番強いか?
重症筋無力症、甲状腺眼症のサインはないか?

症状

上述した動眼神経の働きを理解すると動眼神経麻痺の症状が自ずと理解できます。つまり

 

   A 眼を動かす眼球運動

 B 瞼を開ける開眼

 C 瞳孔を調整する瞳孔調整機能

 

これらの機能が障害されます。

A:上直筋・内直筋・下直筋・下斜筋が障害されるため上斜筋と外直筋が相対的優位になります。

自ずと眼位は下向き外転位 “down and out” となります。また目が内側や上下に動かなくなります。

 

   B:開眼機能が障害されるため、瞼が下がる眼瞼下垂を生じます。

 

   C:縮瞳の機能が障害されるため瞳孔は開いた散瞳状態になります。ただし副交感神経線維は動眼神経の最外側を走行します。このため動脈瘤の圧迫など外部からの刺激による障害は散瞳が強く現れます。散瞳せず外眼筋麻痺のみを呈する動眼神経麻痺を“pupil sparing”といい、微小血管障害で動眼神経の内部を障害される時の特徴となります。