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持続性特発性顔面痛
特徴
持続性特発性顔面痛(PIFP)は、以前は“非定型顔面痛”と呼ばれていました。神経痛の特徴を持たず、持続的な顔面の疼痛のことです。三叉神経痛のように左右どちらかの顔に痛みがありますが、三叉神経痛とは異なり、発作的な痛みではなく持続痛です。
診断基準
A.BおよびCを満たす顔面または口腔(あるいはその両方)の痛みがある
B.1日2時間を超える痛みを連日繰り返し、3ヶ月を超えて継続する
C.痛みは以下の両方の特徴を有する
①局在が不明瞭で、末梢神経の支配に一致しない
②鈍く、疼くような、あるいは、しつこいと表現される痛みの性質
D.神経学的診察所見は正常である
E.適切な検査によって歯による原因が否定されている
F.他に最適なICHD-3の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
疫学
PIFPの罹患率は三叉神経痛(TN)よりもはるかに少ないです。30-50代のうつ病傾向や、自律神経失調症の女性に多いです。
臨床所見
顔面片側の特定領域の痛みですが、局在性に乏しく境界が不明瞭、そして神経の支配領域に一致していません。経過とともに範囲が拡大するケースがあるようです。痛みは鈍く、疼くようでしつこい持続痛です。三叉神経痛は神経支配に一致して、境界明瞭、誘発性の突発痛なので明確に異なります。上顎に始まることが多く、鼻・歯疾患と誤診されるケースが多いです。しかし上顎洞癌や鼻咽頭癌の可能性もあります。頭蓋内に留まらず頭蓋底から副鼻腔を含めた広範囲の精査が不可欠です。ストレス、疲労によって増悪します。心理的な側面を併せ持つ事が多く、うつ病に合併する事も多いです。
治療
非定型顔面痛の治療には抗うつ薬による鎮痛効果が有効です。抗うつ薬の抗うつ効果の発現よりも比較的早期に鎮痛効果が認められることから、抗うつ効果とは別の経路で鎮痛効果を発揮していると考えられます。