眼科 脳神経外科
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脳疾患を知る

11-9
トロサ・ハント症候群

  • 特徴

Tolosa-Hunt 症候群は通常一側の激しい眼窩痛と眼筋麻痺を特徴とし、ステロイド治療が奏功する疾患です。一側の眼周囲の痛みと眼を動きが悪くなる疾患なので「虚血性眼球運動神経麻痺による頭痛」と症状は同じですが、疼痛および脳神経麻痺の原因は, 海綿静脈洞、眼窩尖端部という神経が密集するエリアに生じた炎症性肉芽腫性病変です。典型例では造影MRIで同病変が造影されます。非典型例として脳神経にも造影効果がみとめられることがあります。

(診断基準)

A.片側の眼窩または眼窩周囲の頭痛でCを満たす

B.以下の両方を満たす

 ①海綿静脈洞、上眼窩裂または眼窩内に肉芽腫性炎症がMRIまたは生検により確認される

 ②動眼神経・滑車神経・外転神経のいずれか1つ以上の麻痺

C.原因となる証拠として、以下の両方が示されている

 ①頭痛は肉芽腫性炎症と同側に認められる

 ②頭痛と動眼・滑車・外転神経のいずれか1つ以上の麻痺が出現する間隔は2週間前以内か、

  または麻痺と同時に出現している

D.他に最適なICHD-3の診断がない

  • 解説

現在は国際頭痛分類第 2 版(ICHD-II)の診断基準で,治療しなければ数週間持続する片側性眼窩痛を 1 回以上みとめ,その後 2 週以内に眼筋麻痺を発症し,ステロイドによる治療で疼痛および眼筋麻痺は72時間以内に寛解する疾患と定義されていました。第3版では時間的な制約は減っているものの特徴的な所見です。視神経、三叉神経、顔面神経,聴神経が侵された例も報告されています。ステロイドによって72時間以内に寛解した症例は少数で報告では最大1440日要したとの報告もあるため第3版では廃止されたものと考えます。トロサハントは何らかの理由で形成される海綿静脈洞あるいは眼窩尖端部の炎症性肉芽腫性病変が原因と考えられ,多くの症例では MRI で同部にガドリニウムという薬で造影される病変を同定できます。しかし約10%は臨床的に トロサ・ハント症候群と考えられても MRI で病変が特定できないです。
「眼周囲の刺さるような痛みの出現と同時に、眼の動きが悪くなった。MRIを撮ると海綿静脈洞周囲に異常がある」といったところです。ただし以上の条件からすべてがトロサ・ハント症候群と確定診断をするのは危険です。筆者は以前、トロサ・ハント症候群と判断しステロイド投与を考えましたが、議論の末に生検術を行った結果、海綿静脈洞の膿瘍だった(ステロイドは禁忌です)経験があります。最終的な確定診断は生検術になると思います。他にも肥厚性硬膜炎、サルコイドーシス、感染症、糖尿病性眼筋麻痺、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、眼筋麻痺性片頭痛 にも気をつけるべきです。

特徴をまとめますと

・左右どちらでも出現しますが、両側性のことも稀ながらあります。

・発症様式は急性であることが多いです。

・疼痛は未治療では8週間程度持続します。

・眼球運動麻痺は疼痛と同時期か, 疼痛出現後2週間以内にで出現します。

・眼窩周囲の刺されるような疼痛であることが多いです

・視神経障害の合併も報告されています。

・ステロイドを投与すると疼痛は72時間以内に改善しますが、眼球運動障害は改善まで長時間かかります。