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10-12
口腔内灼熱症候群

特徴

口腔灼熱症候群は、しばしば舌、口の痺れで、口内炎などの異常がない人にみられるものです。灼熱感やチクチク感、麻痺したような感覚が口全体または舌だけに起こり、持続的な場合もあれば間欠的な場合もあります。閉経後の女性に最も多く発生します。痛みは両側性で、好発部位は舌尖、舌縁、舌縁、口蓋です。気分障害や更年期障害との関係も報告されますが発生機序は明らかではありません。

 

診断基準

A.BおよびCを満たす口腔痛がある。

B.3ヵ月を超えて、1日2時間を超える連日繰り返す症状。

C.痛みは以下の特徴を有する

 ①灼熱感

 ②口腔粘膜の表層に感じる

D.口腔粘膜は外見上正常であり、感覚検査を含めた臨床的診察は正常である。

E.他に最適な国際頭痛分類第3版の診断がない

(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)

 

解説

口腔灼熱症候群とは、口の中に灼熱感のある痛みを引きおこす病気です。50~70歳代の閉経周辺、閉経後の女性に多くみられます。3ヵ月を超えて、かつ1日2時間を超えて連日再発を繰り返す口腔内の灼熱感、あるいは異常感覚で、臨床的にあきらかな原因病巣を認めないものです。通常舌の表層の灼熱感ですが、歯肉、口唇、頬の粘膜、口蓋、口底などに痛みがでることもあります。最も好発する部位は舌の先端部です。激痛は少なく、多くはヒリヒリ、チクチクしたり、焼けるような痛みが多い傾向にあります。口腔内乾燥、口渇、味覚変化を感じることもあります。灼熱感から不眠、睡眠中覚醒を繰り返す事あります。この感覚は持続的な場合も間欠的な場合もあり、1日を通して徐々に強くなっていくことがあります。また、飲食することによって緩和する場合もあります。痛みは数か月から数年続くことがあり、睡眠障害、うつ病、社交性の低下、癌への恐怖心を発症する人もいます。原因は不明なことが多く、中枢神経の問題、心因的な問題が関連していると考えられています。

 

鑑別疾患

舌炎、口内炎

カンジタ

口腔扁平苔癬

ドライマウス

糖尿病

甲状腺機能低下症

ビタミンB12、葉酸不足、亜鉛欠乏

シェーグレン症候群

貧血

薬剤誘発性(降圧剤ARB)

パーキンソン病

これら原因が明らかな場合は原因疾患の治療を優先します。

 

治療

抗うつ薬または抗不安薬を使用します。アミトリプチリン、ノルトリプチリン、デュロキセチン、パロキセチンなどが報告されていますが、大規模調査は行われておりません。またクロナゼパム初回0.5mgが選択されることが多いです。2021年の慢性疼痛診療ガイドラインではクロナゼパムの局所投与が推奨されています。具体的にはクロナゼパム1mgを舌の上に乗せて唾液で溶かして、口腔内の疼痛部位に3分置き、その後唾液ごと吐き出す行為を一日3回行う治療です。さらに、酸性食品(パイナップル、トマト、オレンジ、レモンなど)、アルコール、喫煙、アルコール含液での含漱、研磨剤を含む歯磨き粉の使用といった、症状を悪化させる食べ物や習慣を含むいかなる要因も管理あるいは回避される事が推奨されます。

その他、口腔内灼熱症候群の9割以上に咽喉頭酸逆流症を合併しているとの報告もあります。咽喉頭酸逆流症とは胃食道逆流症と同じ概念で、強い酸である胃酸が食道に逆流して、食道の粘膜に炎症が起きる病気いいます。胃食道逆流症に対する治療では、胃酸の分泌を抑えるお薬が有効で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)がよく使われます。わが国では、従来のPPIと比較してより強く酸分泌を抑えるとされるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が使われることもあります。他に六君子湯なども使用されることがあります。

 

当院での対応

このページをご覧になられたという方は相当悩まれた結果、当ホームページに辿り着いたかと思います。この症状は経験したことのない人には想像出来ない苦しみです。また診断に至らずに数多くの病院を転々と回った挙げ句に「心の病気」と診断を受けられている方が後を絶ちません。実際、この疾患は非常にマイナーな疾患のため、残念ながら一般的な疾患ではありません。この疾患で当院に受診されている方々も、診断に至るまで数年から十数年の時間を使っている方々が多いのも事実です。ほんの少しのポイントで診断に至り、改善可能な疾患のため気軽にご相談下さい。