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再発性有痛性眼筋麻痺性ニューロパチー
特徴
1本以上の眼球運動に関わる脳神経(動眼神経が多い)麻痺の繰り返す発作で、同側の頭痛を伴います。左右どちらかの頭痛とともに、同側の眼の動きが歩くなる発作を繰り返す病気です。
診断基準
A.Bを満たす発作が2回以上ある
B.以下の両方を満たす
①片側性の頭痛
②頭痛と同側の3本の眼球運動神経のうち1本以上に運動麻痺がある
C.適切な検査により眼窩内、傍トルコ鞍または後頭蓋窩の病変が除外されている
D.他に最適なICHD-3の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
解説
以前は眼筋麻痺性片頭痛と呼ばれていましたが、この症候群は片頭痛様ではなく、再発性有痛性ニューロパチーであることから、以前の呼び名は棄却されました。頭痛の後に眼筋麻痺を呈するまれな疾患であり、有病率は100万人に1人未満と報告されています。小児もしくは若年で発症し,動眼神経の障害がもっとも多く,外転神経麻痺は頻度が低いといわれています。
ちなみに眼球運動を担う神経は動眼神経・滑車神経・外転神経となります。詳細は省きますが、各々の神経が障害された場合の眼球運動の症状は
動眼神経麻痺
眼球は外側を向いてしまいます。他眼瞼下垂(瞼が下がる)、散瞳(黒目の真ん中の瞳孔が大きく開きます)、対光反射消失(光を当てて縮むはずの瞳孔が縮みません)
滑車神経麻痺
ぱっと見分かりません。しかし階段を降りる時など下を見るとダブって見えたり、頭を障害されていない側に向けると症状が軽くなり、障害側に傾けると眼が上転します。
外転神経麻痺
眼球は内側を向き、外側を向けません。
このような眼の動きの障害が頭痛後に一時的に生じます。眼筋麻痺は可逆性(元通りに戻る)であることがほとんどだが,不可逆性(元通りに戻らない)となった症例も報告されています。典型的には、12未満の小児発症、男児に多く、その場合、動眼神経麻痺の合併が多いです。外転神経麻痺や滑車神経麻痺の合併は稀です。一方小児で,頭痛をともなわず 6 カ月以内自然軽快する反復性外転神経麻痺を示す病態が,女児に多く報告されています。一般的には頭痛はしばしば1週間以上持続し、かつ頭痛発現から眼筋麻痺発現までに最大4日の潜伏期間が存在する事が多いです。