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傍三叉神経交感神経症候群(レーダー症候群)
特徴)
三叉神経の目のまわりを支配する領域に持続する左右どちらかの片側性の痛みです。その痛みの周辺にホルネル症候群といって瞳孔が小さくなったり、上のまぶたが下がったり、眼球がへこんだように見えたりします。。眼の徴候以外では,顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする症状が合併します。
診断基準)
A.持続性、片側性の頭痛でCを満たす
B.同側のホルネル症候群があり、中頭蓋窩または同側の内頚動脈のいずれか一方に頭痛の原因疾
患の証拠を示す画像所見を伴う
C.原因となる証拠として、以下の両方が示されている
①頭痛はその疾患の出現と時期的に一致して発現している。またはその疾患の診断の契機になた。
②頭痛は以下のいずれかまたは両方の特徴を有する
a)三叉神経眼枝の支配領域に限局し、上顎枝の領域に広がることも広がらないこともある
b)眼球運動で増悪する
D.他に最適なICHD-3の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
解説)
少々診断基準が分かりにくいかもしれません。最初にホルネルとはなんぞや?と思われる方もおられると思いますので説明します。
ホルネル症候群とは
ホルネル症候群では、顔の片側のまぶたが下がり、瞳孔が小さくなり、眼がくぼんで、発汗が減少します。原因は、脳と眼をつないでいる神経線維が分断されることです。眼と脳を結ぶ神経線維(交感神経)なのですが、経路が少し複雑です。交感神経はまず脳内にある視床下部という場所から始まります。通常の神経は途中で交差するので、脳内で左に障害を受ければ逆の右に症状が現れますが、交感神経は交差しません。よって右がやられれば右の症状が出現します。
視床下部ー延髄ー脊髄ー肺尖部といって肺の上側ー内頚動脈ー眼と交差しないで、一端下行してから上行します。このような経路をとるために、少し難しく感じます。さて上瞼とはミュラー筋と眼瞼挙筋の2つの筋肉が眼瞼を挙上します。ミュラー筋は交換神経支配・眼瞼挙筋は動眼神経支配です。よって交感神経の障害ではまぶたが下がります。瞳孔とは眼の真ん中(黒目の中の真ん中の日本人なら茶色、欧米人なら青色(虹彩)のさらに真ん中の部分です)に開く円形の小窓です。カメラの絞りと同じで、光の量と焦点深度にちょって大きさを調整しています。広くなることを散瞳・縮めることを縮瞳といいます。散瞳は瞳孔散瞳筋 縮瞳は瞳孔括約筋が行っており、瞳孔散瞳筋を支配している神経は交感神経、瞳孔括約筋を支配している神経は動眼神経の中に含まれる副交感神経になります。このように瞳孔は交感神経と副交感神経の2つの神経により支配されています。よって交感神経が障害されて副交感神経優位になると縮瞳します。眼球陥凹は眼瞼下垂が起きた結果、眼瞼狭小のためのみかけの現象です。汗腺は汗を出す器官で皮膚に分布しています。交感神経の緊張により汗の分泌が増えます。よって交感神経が障害を受けると、障害を受けた同側の発汗が減少します。顔面の発汗減少は実際には
以上がホルネル症候群の解説です。つまりホルネル症候群+眼痛、頭痛がリーダー症候群です。「中頭蓋窩または同側の内頚動脈のいずれか一方に頭痛の原因疾患の証拠を示す画像所見を伴う」と診断基準に記載されているのように、ホルネル症候群でも肺尖部腫瘍によって生じたホルネル症候群は頭痛、眼痛を伴いませんので除外されることになります。よってホルネル症候群を伴った頭痛を診察したときは、傍トルコ鞍腫瘍、転移癌、動脈瘤などの器質的疾患が中頭蓋窩前部に拡大しているケースや歯根膿瘍、内頚動脈の動脈瘤また急性に生じた場合は内頚動脈解離性動脈瘤を念頭において検査する必要があります。