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脳疾患を知る

10-7
有痛性視神経炎

総論

国際頭痛分類ICHD-3の13-6に有痛性視神経炎と診断分類に加えられています。以前の名称は球後性視神経炎と記載されています。有痛性視神経炎(球後性視神経炎)とは「視神経乳頭には異常がなく正常所見な視神経の炎症」となります。一方対比する言葉としては「視神経乳頭が赤く腫れる視神経の炎症」である視神経乳頭炎となります。これらは両方とも特発性視神経炎の分類内に組み込まれます。先に視神経炎を整理した方が疾患の病態の理解が深まるので、視神経炎について触れます。すこし頭痛から脱線しますので、飛ばして読んでいただいて結構です。

日本眼科学会ホームページから視神経炎についての知見をお借りします。

視神経は、眼球(網膜)で集められた外界から光の情報を脳に伝える神経線維(電線に例えられる)の集まりです。この電線のもとになる神経細胞は網膜にあって、そこからの情報を伝達してはじめて、脳で意味のある「ものを見る」ことができます。この電線になんらかの障害を起こす病気を「視神経症」、その炎症を「視神経炎」と呼びます。原因がはっきりしていることもありますが、不明な場合も多くあります。

視神経の障害の原因が「なんらかの理由」ですと視神経症、視神経の障害の原因が「炎症」ですと視神経炎になります。

視神経症の症状と診断

片眼、時には両眼の急激な視力の低下や視野の真ん中が見えないといった中心暗点や上または下半分が見えなくなるのが主な症状で、眼球運動痛(眼球を動かすときの目の痛み)、目の圧迫感などを伴うこともあります。視神経症の原因を探るために、視力検査・眼底検査・視野検査のほか、磁気共鳴画像(MRI)検査・血液検査・髄液検査などが必要に応じて行われます。

次に視神経症を分類しています。

視神経症は①特発性視神経炎

     ②抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎

     ③虚血性視神経症

     ④圧迫性視神経症

     ⑤外傷性視神経症

     ⑥中毒性視神経症

     ⑦遺伝性視神経症

     ⑧その他に分類されています。

先に有痛性視神経炎(球後性視神経炎)がこの分類に入っていないのが、気になる方もいるかもしれませんので説明しますと

①特発性視神経炎が

a)視神経乳頭炎(視神経乳頭(視神経の眼球側の端)が赤く腫れる場合)

b)球後視神経炎(視神経乳頭には当初所見がなく正常にみえる場合)

に分類されます。特発性とは原因不明の意味です。20代から50代の、女性の方がやや多い疾患です。比較的急激に、片眼または両眼の視力低下が生じます。見ようとするところが見えない中心暗点型の症状が多いですが、全体に霧がかかるとか、視野の一部からだんだん見えにくくなることもあります。視神経乳頭炎は比較的改善率が良いですが、球後視神経炎は多発性硬化症が原因になるようで軽快と悪化を繰り返します。さてこの球後視神経炎つまり頭痛分類で有痛性視神経炎と呼ばれる疾患は頭痛を伴うようです。特徴的なのは「眼球運動によって悪化する頭痛」という点です。

(診断基準)

A.片側性または両側性の眼窩後部、眼窩、前頭部または側頭部のいずれか1つ以上の領域の痛みでCを満たす

B.臨床所見、電気生理学的所見、画像所見または血液所見のいずれか1つ以上が視神経炎の存在を示す

C.原因となる証拠として、以下の両方が示されている

 ①痛みは視神経炎と時期的に一致して発現した

 ②痛みは眼球運動によって増悪する

D.ほかに最適なICHD-3の診断がない

(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)

ICHD-3のコメントには「視神経炎の90%に痛みを伴う」と記載されていますが、ここでの視神経炎はこの章で説明してきた「有痛性視神経炎(球後視神経炎)」の事を指していうるのか、「視神経乳頭炎」を含めた特発性視神経炎の事であるのか、または抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎を含めているのか判断がつきません。ちなみにですが、抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の頭痛の頻度は50%に頭痛、眼痛の症状があるようです。