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一次性雷鳴頭痛
特徴
雷鳴頭痛とは,その名称のごとく,突如雷に打たれたかのように,にわかに起こる激しい頭痛を意味します。以前より「瞬時に痛みがピークに達する激しい頭痛」という意味で使用されていました。この特徴を有する頭痛が現れる疾患として、くも膜下出血、頸動脈あるいは椎骨動脈解離、脳出血、下垂体卒中、脳静脈血栓症などが報告され,器質性疾患を基礎にする二次性頭痛として捉えられていました。しかし、雷鳴頭痛を示す症例のなかには、原因疾患が明らかにすることができない例も多くみられることから、国際頭痛分類第2版で器質性疾患によらない一次性頭痛として「一次性雷鳴頭痛」が一次性頭痛のカテゴリーに独立した疾患として登場しました。
診断基準
A.BおよびCを満たす重度の頭痛
B.突然発症で、1分未満で痛みの強さがピークに達する
C.5分以上持続する
D.ほかに最適なICHD-3の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
解説
突如雷に打たれたかのように突然起きる激しい激痛です。このような頭痛は通常、二次性頭痛を強く疑います。くも膜下出血・脳出血・大脳静脈血栓症・動脈解離(頭蓋内および頭蓋外)・中枢神経系血管炎・下垂体卒中・第三脳室コロイド嚢胞・低髄液圧・急性副鼻腔炎。これらが全て否定されなければ一次性雷鳴頭痛と診断されません。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)の「一次性雷鳴頭痛」のコメントでは,「存在のエビデンスは乏しく,すべての器質的原因が明確に否定された場合にのみたどり着く最終的な診断であるべき」と記載されており,脳実質,髄液から脳血管を含めた疾患の除外診断が必要です。以前はこれらが全て否定された時点で一次性雷鳴頭痛と診断されていましたが、最近、雷鳴頭痛の原因としてRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)が報告されています。RCVSの脳血管収縮の所見は、当初出現しない場合があるので経時的なMRA検査が必要と考えられています。 血管評価を継続的に行って,血管攣縮が起こっていないか慎重に経過を診なければならないRCVSは確定診断するのが困難なケースも多いです。純粋な一次性雷鳴頭痛は果たして実際に存在するのかといった議論は続いています。