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脳疾患を知る

3-2
治療前に行う事ー二次性高血圧ー

(原発性アルドステロン症)

測定した①血漿アルドステロン濃度 (PAC)②血漿レニン活性(PRA)の結果を読み解きます。

①血漿アルドステロン濃度(PAC)が120pg/ml以上

②アルドステロン/レニン比(PAC/PRA比=ARR)が200以上

ならば原発性アルドステロン症陽性と考えます。

検査陽性の場合、カプトリル負荷試験、フロセミド立位試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験の機能確認試験のうち、1つ以上の項目が陽性の場合原発性アルドステロン症と考えます。(これらの各種検査は成書を参考にして下さい)また腹部CTで副腎腫瘍の確認を行うほか、内分泌専門医へ紹介するべきです。内分泌専門医紹介後は手術療法を念頭に副腎静脈サンプリングなどの検査を行うわけですが、仮に最初から手術を希望されない方もおります。その場合は薬物療法でコントロールすることも可能です。そのような場合、どの降圧剤を使用するべきなのか解説します。原発性アルドステロン症は珍しい疾患ではありません。そして手術による治療を希望しないで最初から薬物療法を希望する方も大勢いらっしゃいます。その場合はMR拮抗薬というお薬が重要となります。

 

MR拮抗薬とは)

アルドステロンは腎臓における尿細管で水分やナトリウムを血管の中にへ再び吸収させ、血管に流れる血液量を増加させることで血圧を上げる作用があります。またアルドステロンは心臓や血管、脳などにも作用し、心筋の線維化や心臓を肥大化する作用、血管の炎症反応などを亢進させる作用や腎臓障害に関わる作用をち、血圧を上げると言われていますMR拮抗薬はアルドステロンが作用する鉱質コルチコイド受容体に拮抗的に作用することで、アルデステロンの作用を抑え尿細管などにおけるアルドステロンの働きを防止して血圧を下げるお薬です。これまでMR拮抗薬はスピロノラクトンとエプレレノンが使用可能でしたが、それぞれ問題を持っていました。

 

・スピロノラクトン

MRとの親和性が強いが、女性化乳房、乳房痛、EDなどの性ホルモン系の副作用が強いです。

 

・エプレレノン

性関連副作用はないですが、MRとの親和性に劣ります。さらにエプレレノンは糖尿病性腎症の方には使用禁忌であり、カリウム製剤との併用も行えません。

 

・エサキセレノン(商品名ミネブロ)の登場

これらの問題から若年ー中年男性では、可能な限りエプレレノンを使用し、糖尿病性腎症を持つ方ではスピロノラクトンを使用するのが現実的です。MR拮抗薬のみでは降圧が不十分なことも多く、その場合はカルシウム拮抗薬を併用します。特にジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(アムロジン・ニフェジピンなど)自体にMR拮抗作用があるため有効と言えます。これらの問題から2019年1月に新規MR拮抗薬として、エサキセレノン(商品名ミネブロ)が高血圧症を適応として承認されました。これまでの非臨床研究から、エサキセレノンは既存のMR 拮抗薬に比べて強力かつ選択的なMR拮抗作用を有し、1日1回の投与によって優れた降圧作用と腎保護作用を示しています。また中等度腎機能障害、アルブミン尿を有する2型糖尿病を合併した高血圧症患者を対象とした臨床試験に加えて、III度 高血圧症患者や、原発性アルドステロン症を合併した高血圧症患者を対象とした臨床試験においても、良好な降圧効果及び安全性が確認されており使いやすくなったお薬ではないでしょうか。

(褐色細胞腫)

褐色細胞腫とはカテコラミンといって血圧上昇を促す物質を産生する腫瘍です。褐色細胞腫の90%は副腎という腎臓の上にある臓器に発生しますが、残りの10%は全身の交感神経節に発生します。全高血圧の0.5%と言われており、ほとんどが良性腫瘍ですが10%は悪性例が存在します。また10%は多発性内分泌腺腫症です。

カテコラミンが過剰産生する結果、血圧が上昇します。褐色細胞腫の約45%の患者に高血圧がみられます。一方、褐色細胞腫の患者が自覚する症状は動悸・頭痛・吐き気・不安感・発汗異常・手指振戦などがあります。その他、頻脈、不整脈、起立性低血圧、過呼吸、便秘、呼吸困難感というようないろいろなものが現れます。高血圧・高血糖・代謝亢進・頭痛・発汗過多の5症状を5Hと呼んでいます。運動・ストレス・過食・排便・腹部圧迫などの各種刺激で高血圧が誘発され、高血圧クリーゼを起こす可能性があります。特にメトクロプラミド(プリンペラン)の静脈注射はクリーゼを誘発するので禁忌とされています。

一般的な検査では褐色細胞腫は分かりません。血中カテコラミンであるエピネフリン・ノルエピネフリンの増加を認めますが、これらは健常者でも変動幅が大きいため参考値としかなりません。そのためカテコラミンの代謝物である尿中メタネフリンあるいは血漿遊離メタネフリンの検査は有用な検査と言えます。また2019年1月より血漿遊離メタネフリン・ノルメタネフリン測定が保険適応となりました。血漿遊離メタネフリン・ノルメタネフリン測定まで行わなくともスクリーニング検査でカテコールアミンが陽性であれば、腹部と胸部のCT検査あるいはMRI検査を行います。MRIでは内部壊死、嚢胞変性を伴う3cm以上の腫瘍でT2強調画像で高信号なのが特徴です。必要によって、123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)による核医学検査が行われます。褐色細胞腫の治療は、降圧および血圧の安定化が重要であり、α遮断薬および必要に応じてβ遮断薬という薬を使用しますが、根治療法は手術療法です。手術は、腫瘍の大きさにもよりますが、多くの場合は腹腔鏡下副腎摘出術が選択されます。腫瘍が大きい場合は、腹手術を行うことも考えます。

(クッシング症候群)

クッシング症候群とは、副腎皮質ステロイドホルモンのひとつであるコルチゾールが過剰に分泌され、全身に多彩な症状が生じる一連の病気のことです。クッシング症候群の中でも、下垂体という脳の組織が原因の疾患をクッシング病(下垂体腺腫)といいます。下垂体という脳の組織からは8種類(前葉後葉あわせて)のホルモンが分泌されています。その中の一つがACTHというホルモンなのですが、副腎を刺激してコルチゾールを多量に生成する働きをします。下垂体に腫瘍が出来て、このACTHが異常に分泌された結果、刺激を受けた副腎から多量にコルチゾールが分泌されるわけです。また副腎に出来た腫瘍などによって副腎からコルチゾールが過剰に分泌されたものを副腎性クッシング症候群といいます。その他、肺癌からACTHが多量に産生されることがあります。これも副腎を刺激してコルチゾールが多量に生成されます。このようなものを異所性ACTH産生腫瘍によるクッシング症候群といいます。症状は高血圧・高血糖・満月様顔貌・野牛肩・赤色皮膚線条・中心性肥満・皮膚菲薄化などが認められます。全身の症状からクッシング症候群が考えられる場合、血液検査で血液中のコルチゾールだけでなく、アルドステロンや性ホルモンの値を測定します。また、下垂体ホルモンのACTHの値を測定します。これらの検査でクッシング症候群が強く疑われた場合、頭、胸部、腹部、骨盤に至るまで全身のCT検査を行うことが一般的です。CTで腫瘍が発見できても、最終的な因果関係を証明するためにデキサメタゾン抑制試験という検査を行います。副腎皮質でも下垂体でも、腫瘍がみつかってコルチゾールの分泌が過剰になって症状が出ている場合には、外科的手術が原則となります。

(腎血管性高血圧)

腎動脈が狭窄し,レニン・アンジオテンシン(renin-angiotensin:RA)系が亢進した結果、血圧が高くなる疾患を腎血管性高血圧といいます。高血圧患者全体の1%にあたるため注意が必要です。腎血管性高血圧の原因は、大部分が動脈硬化による狭窄です。動脈硬化は全身の血管を蝕むため、腎動脈に狭窄があるならば全身の他の動脈も考えなければなりません。つまり腎動脈狭窄を認める方は動脈硬化性病変の合併が重要で、脳動脈・頚動脈・冠動脈・閉塞性下肢動脈硬化症の他の動脈硬化性病変の検索を行うことことが重要です。

 

腎動脈狭窄を疑う所見

 

・若年性重症高血圧

・夜間多尿

・急に増悪する高血圧、悪性高血圧

・説明のつかない突然の肺水腫

・ 治療抵抗性の高血圧

・RA阻害薬 開始後の腎機能障害の増悪

・低 K 血症

・腎臓の大きさの左右差(1.5 cm 以上)

・腹部の血管雑音

・他の動脈硬化病変を認める

 

腎血管性高血圧の治療の目標の一つは,降圧であることは間違いありません。しかし更に重要な事は腎臓保護作用と、心脳血管イベントを予防することです。RA系が亢進している病態であるため、第一選択薬としてアンジオテンシン変換酵素(angiotensin-convert- ing enzyme:ACE)阻害薬やアンジオテンシンII 受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker: ARB)が勧められます。しかし、急性腎障害発症のリスクはRA阻害薬を用いた場合1,87倍と高値のため少量から開始し、1週間に1回は採血を行い、クレアチニンやK値を確認する必要があります。血清クレアチニン濃度が1.3倍以上に増加、または高K血症を呈した場合はACE阻害薬やARBの投与を中止しなければなりません。また両側の腎動脈狭窄は、ACE阻害薬やARBは禁忌です。降圧が不十分であれば、 Ca拮抗薬・利尿薬・β遮断薬・中枢性交感神経遮断薬等を追加します。狭窄が強度でステント術を考慮する場合は、粥状硬化の場合可能ですが、線維筋異形成では適応となりません。

 

ステントが検討される腎血管性高血圧

 

・増悪する悪性高血圧

・繰り返すうっ血性心不全、急性肺水腫

・ARB、ACE 阻害薬投与にて腎機能悪化する症例

・進行する腎機能障害

・両側の腎血管狭窄

・単腎の腎血管狭窄

・線維筋性異形成

(腎実質性高血圧)

腎臓とは、塩分排泄、体液量調整、ホルモン調整などを行い全身の血圧調整を行っています。腎実質性高血圧とは、糸球体腎炎、多発嚢胞性腎、糖尿病性腎症といった腎臓そのものの病気が高血圧を引き越す疾患です。二次性高血圧の中で最も頻度が高いと言われています。注意が必要なのは慢性腎臓病(CKD)や高血圧によって生じる腎硬化症は含まれず、あくまでも腎実質病変によって引き起こされる高血圧のことに限定されています。高血圧に先行する腎疾患、高血圧治療過程における急激な腎機能悪化、浮腫、血尿などを伴う高血圧は腎実質性高血圧を疑います。検査は蛋白尿、血尿、尿沈渣異常、血清クレアチニン上昇、高尿酸血症が基本的検査となります。治療については、アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme: ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker: ARB)を基礎薬とした降圧治療が基本となります。ただし腎疾患患者はこれらRA阻害薬により血清クレアチニンや血清カリウムが増加することがあり、クレアチニンが1.3倍、カリウム(K)が5.5mEq/l以上に上昇した場合には、専門医への紹介が望まれます。降圧目標の達成も重要で、利尿薬、Ca拮抗薬の適切な追加治療が求められます。

 

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まったり、強いいびきを繰り返し、て体の低酸素状態が発生する病気です。この結果、質の良い睡眠を得られず熟眠感の喪失や日内の継続的な眠気、重症ですと意識障害やもの忘れを伴う疾患です。また高血圧や虚血性心疾患、糖尿病などの生活習慣病を高率に合併し、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中から心筋梗塞などの虚血性心疾患となり生命予後に影響を与えることが明らかになりました。睡眠時に無呼吸があるということを自身で気づくことは難しく、家族や同僚などに指摘されて初めて分ることが多いという特徴があり、治療が必要な方が多数世の中に潜在していると言われています。

 

・ご家族からいびきを指摘される

・夜間の睡眠中によく目が覚める

・起床時の頭痛やだるさが多い

・日中の強い眠気

・記憶が曖昧なことがある

このような症状がある方は、早めに睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることがよいかと思われます。

治療法など詳しい内容は

https://kuwana-sc.com/brain/2216/?preview_id=2216&preview_nonce=3b007bd15d&preview=true

に記載されています。