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高血圧の意味
概要
高血圧は、日本では4300万人と最も患者数の多い生活習慣病です。近年、国を挙げて生活習慣病の予防を啓蒙していますが、理由を考えたことはありますか?高血圧、脂質代謝異常、糖尿病などの生活習慣病は病初期は自覚症状がありません。そのため多くの方が、健診などで指摘されても「まぁ、いいか」「特に症状もないから薬は飲まなくても大丈夫だろう」と現実から眼を背けている方は多いかと思います。しかしながら生活習慣病の本質は、本人が気づかない間に、全身の血管を少しずつ蝕んでいくことが恐ろしいのです。そのため「サイレントキラー」と呼ばれます。多少の不調や頭痛などで自覚するケースもありますが、自覚症状が乏しいまま正しい治療を行わないケースが多いです。その場合、自覚症状として現れる頃には全身血管が蝕まれ続け、終末期の症状として自覚する事となります。終末期の症状とは脳卒中、心筋梗塞、眼底出血、腎機能障害、下肢閉塞性動脈硬化症などの深刻な状況です。脳梗塞を発症し、寝たきり状態や片麻痺の状態になってから過去の不摂生を後悔し、いくら予防治療を開始しても失われた機能は元に戻りません。深刻な状況になる前に予防医学の介入が重要なのです。発症原因の80%以上が高血圧である脳出血の死亡率は1950年代には人口10万人当り120人、日本人死亡原因の第1位でした。しかしながら高血圧治療の啓蒙と発展により1990年以降は20人台まで減少しています。高血圧の治療の進歩が死亡率を押し下げているのです。国を挙げて生活習慣病の予防を啓蒙している理由はここにあります。この症では、高血圧を正しく学びいかにして予防を行うべきかを解説して参ります。
高血圧とは
血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管の壁を押すときの圧力のことです。血圧の値 は、心臓から押し出される血液の量(心拍出量)と血管の太さや弾力性(血管抵抗)によって決まります。心臓が収縮して血液が送り出されている時の最も高い血圧を「収縮期血圧」(上の血圧)と呼び、心臓に血液が戻ってきている時の最も低い血圧を「拡張期血圧」(下の血圧)と呼びます。収縮期血圧が140㎜Hg以上、拡張期血圧が90㎜Hg以上のとき、高血圧と診断されます。
まず第一に血圧を測定します。
①クリニックで測る診察室血圧
②自宅で測る家庭血圧
③特殊な機器をつけて15分~1時間ごとに1日掛けて血圧を測る24時間血圧の3つの測定法があります。
一般的には①診察室血圧と②家庭血圧を参考に診断を進めます。日本高血圧学会のガイドラインでは、血圧の値を次の表のように分類しています。