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脳疾患を知る

14-6
巨細胞性動脈炎による頭痛

概要

巨細胞性動脈炎は大型から中型の血管を侵す肉芽腫性血管炎で、浅側頭動脈、椎骨動脈、眼動脈に発生する頻度が高い疾患です。夜間に悪化しやすい拍動性・片側性の側頭部痛を起こします。また約半数に咀嚼時のあごの痛みがみられ、眼動脈とその枝の閉塞を招くと失明します。側頭部に拡張した側頭動脈が認められ、確定診断には側頭動脈の生検が行われます。

疫学

男女比1 : 1.7, 好発年齢は50歳以上である。北欧諸国に多く、わが国では稀な疾患です。2011年Chapel Hill会議で、大血管炎は高安動脈炎と巨細胞性動脈炎が分類されましたが、高安動脈炎はアジア人若年者に多く、巨細胞性動脈炎は欧米の高齢者に多く発生します。

症状

 

  • 頭痛

夜間に悪化しやすい拍動性・片側性の側頭部痛を起こします。前頭部や頭全体の痛みを訴える人もいます。寛解と増悪を繰り返しながら痛みは悪化していきます。

 

 

  • 顎痛

約半数に咀嚼時の顎の痛みがみられます。

 

 

  • 失明

眼を栄養する眼動脈は内頚動脈から枝分かれをします。浅側頭動脈は外頚動脈から枝分かれをしており眼動脈と同じく中型の頚動脈から分枝した血管です。眼動脈に炎症を起こしますので血管炎による血流は低下します。これを虚血性視神経症といいます。発症初期に視力・視野異常を呈しますが、眼動脈が閉塞し血流が消失すると失明します。約20%が視力の完全又は部分性の消失を来すと言われています。また一過性黒内障と呼ばれる一時的に目の前が真っ暗になる症状を自覚する人もいます。片眼の失明からもう片眼の失明までの期間は通常1週間以内なので迅速な対応が必要となります。

 

 

  • 発熱

倦怠感や食欲低下、体重減少、発熱があります。微熱が続くことが多いですが、39度以上の高熱の方もおられます。

 

 

  • リウマチ

巨細胞性動脈炎の患者さんの30~50%にリウマチ性多発筋痛症を、リウマチ性多発筋痛症の10~20%に巨細胞性動脈炎が合併するといわれています。これによって肩周囲、首、臀部のこわばりが認められます。

 

 

  • 一過性脳虚血発作

巨細胞性動脈炎の10~15%に大血管の動脈病変があるといわれています。内頸動脈や椎骨動脈に炎症を起こせば一過性脳虚血発作や場合によっては脳梗塞を引き起こします。頭痛を伴う一過性脳虚血発作や黒内障が反復する場合は強く巨細胞性動脈炎による頭痛を疑う必要があります。

巨細胞性動脈炎の診断基準

アメリカリウマチ学会巨細胞性動脈炎分類基準

発症年齢≧50歳

新しく発症した頭痛

側頭動脈の圧痛、あるいは、動脈硬化症とは無関係に起こった脈拍の減弱

赤血球沈降反応>50mm/時

浅側頭動脈生検で、血管炎を認める

巨細胞性動脈炎による頭痛の診断基準

 

A新規の頭痛で、Cを満たす

B巨細胞性動脈炎と診断されている

C原因となる証拠として、以下のうち少なくとも2項目が示されている

  1.頭痛は巨細胞性動脈炎発症の他の臨床症候または生態学的徴候(あるいはその両者)と時期的に一致して発現した。または頭痛が巨細胞性動脈炎の診断の契機となった。

  2.以下の項目のいずれかまたは両者を満たす

  a)頭痛は巨細胞性動脈炎の悪化と並行して有意に悪化した

  b)頭痛はステロイドの大量療法により3日以内に寛解または有意に改善した

  3.頭痛は頭皮の圧痛または顎跛行(あるいはその両者)を伴う

D.他に最適なICHD-3の診断がない

(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)

診断

側頭動脈の5~6cmを採取し、血管周囲の肉芽腫形成・リンパ球浸潤と弾性板の破壊を確認する事です。

治療

副腎皮質ステロイドホルモンで治療します。プレドニゾロン40~60mg/日で開始し、状況を確認しながら2週間程度毎に、1年程度かけて減量・中止します。視力障害を避けるため抗血小板剤を併用することが多いです。すでに視力障害がある場合は免疫抑制剤を使用することもあります。治療後の経過は比較的良好です。