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CADASIL
概要
皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)とは、常染色体優性遺伝形式を示し、10-30歳代から「前兆を伴う片頭痛」が先し、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの脳卒中リスクファクターを持たないにも関わらず、CT・MRIで同定される大脳白質病変が徐々に進行し、中年期から皮質下白質にラクナ梗塞を繰り返し発症し、うつ症状、脳血管性認知症に至る疾患です。NOTCH3遺伝子変異を認め、病理学的に脳小血管の平滑筋の変性と、電顕でオスミウムに濃染する顆粒(GOM)の蓄積を特徴とる疾患です。
CADASIL -診断基準-
①55 歳以下の発症(大脳白質病変もしくは 2 の臨床症候)
②下記のうち,二つ以上の臨床症候
a. 皮質下性認知症,錐体路障害,偽性球麻痺の 1 つ以上.
b. 神経症候をともなう脳卒中様発作.
c. うつ症状.
d. 片頭痛.
③常染色体優性遺伝形式
④MRI/CT で,側頭極をふくむ大脳白質病変
⑤白質ジストロフィーを除外できる(ALD,MLD)
Definite
3,4 を満たし(側頭極病変の有無は問わない),Notch3 遺伝子変異,または皮膚などの組織で電子顕微鏡でGOMをみとる.
1)Notch3 遺伝子の変異は EGF 様リピートの Cysteine のアミノ酸置換をともなう変異. その他の変異に関しては,原因とするためには,家系内での解析をふまえ判断する .
2)凍結切片をもちいた抗 Notch3 抗体による免疫染色法では血管壁内に陽性の凝集体を認める
Probable
上記の 5 項目をすべて満たすが,Notch3 遺伝子の変異の解析,または電顕で,GOM の検索がおこなわれていない.
Possible
4 を満たし(側頭極病変の有無は問わない),1 もしくは 2 の臨床症候の最低 1 つを満たし,3 が否定できないもの(両親の病歴が不明など)
*注意事項:発症年齢は 55 歳を越えることもある.認知症は皮質性が目立つこともある.
CADASILによる頭痛の診断基準
A.典型的、片麻痺性、または遷延性の前兆のある片頭痛を繰り返し、Cを満たす
B.遺伝子検査によるNOTCH-3突然変異または皮膚生検(あるいは両者)で皮質下梗塞および白質脳症を伴った常染色体優性脳動脈症(CADASIL)と証明されている
C.以下の項目のいずれかあるいは両方を満たす
1.前兆のある片頭痛がCADASILの初期の臨床症状であった
2.CADASILの他の症状(虚血性脳卒中、気分障害、認知機能障害のいずれか(またはその全
て)が発現したり、悪化したときに前兆のある片頭痛発作が改善したり、消失する
D.他に最適なICHD-3 の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
特徴
1)10~30 歳代で前兆を ともなうあるいはともなわない片頭痛発作がみられる。
2)脳卒中のリスクファクターをもたずに比較的若年でTIA やラクナ型脳梗塞発作をくりかえす。
3)60 歳を過ぎる頃には進行して仮性球麻痺や認知症症状を呈する。
4)家族に類似症状(常染色体性優性遺伝)をみる。
以上のような特徴を認めたならばCADASILを疑う必要があります。CADASILは優性遺伝するため、必ず1~3親等の親族に比較的若く脳梗塞を起こしている方が複数います。片頭痛、うつ病、若年性脳梗塞、認知症があればMRIを行い、CADASILである疑いが出れば、確定診断のために遺伝子検査を行います。 病院によっては、さらに皮膚生検を行って診断の補助とする場合もあります。
画像
MRI上、FLAIR 画像やT2強調画像で両側側頭極、外包、内側前頭極の高信号域は本症に特徴的で、とくに側頭極の病変は特異性が高いとされています。
遺伝子診断
CADASILの典型的な症状はCADASILだけで見られるものではなく、 脳小血管病でも認められます。そこで、確定診断には遺伝子診断が行われます。 DNAを採取し、NOTCH3遺伝子の変異があるかどうかでCADASILの診断をします。
GOM
CADASIL患者さんの毛細血管、動脈を電子顕微鏡で観察すると、血管平滑筋の周辺に、黒い顆粒状物質 (granular osmiophilic material: GOM)が観察されます。CADASILの症状は主に脳で現れますが、血管の異常自体は全身の血管にも存在しています。