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可逆性脳血管収縮症候群:RCVS
概要
Reversible cerebral vasoconstriction syndrome(可逆性脳血管収縮症候群;RCVS)とは、平均40代の女性に好発する平均時間1-3時間の雷に打たれたような突然の激しい頭痛を繰り返す疾患です。頭痛の引きがねとして、性行為、排便、排尿、運動、咳、入浴、シャワーなどが多く視覚異常、失語症、感覚異常、片麻痺などを伴うケースもあります。脳血管撮影や3D-CTA・MRAなどの脳血管の精密検査で分節状血管狭窄と拡張を認めます。発症から2週間の間にくも膜下出血、脳出血、脳梗塞を合併するケースもあります。多くの場合、頭痛・脳血管の所見は数週間で消失します。
診断基準
A.新規の頭痛でCを満たす
B.可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と診断されている
C.以下のうち少なくとも1項目が示される
1.頭痛は局在神経学的欠損または痙攣発作(あるいはその両方)を伴うことも伴わないこともあり、血管造影で「数珠(strings and beads)」状外観を呈し、RCVS の診断の契機となった
2.頭痛は以下の項目のいずれかまたは両方の特徴を持つ
a)雷鳴頭痛として発現し、1ヶ月以内は繰り返し起こる
b)性行為、労作、ヴァルサルヴァ手技、感情、入浴やシャワーなどが引き金となる
3.発現から1ヶ月を超えると著明な頭痛は起こらない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
症状
繰り返す雷鳴頭痛
雷鳴頭痛とは,その名称のごとく,突如雷に打たれたかのように,にわかに起こる激しい頭痛を意味します。以前より「瞬時に痛みがピークに達する激しい頭痛」という意味で使用されていました。この特徴を有する頭痛が現れる疾患として、くも膜下出血、頸動脈あるいは椎骨動脈解離、脳出血、下垂体卒中、脳静脈血栓症などの二次性頭痛が中心です。これらの疾患は命の危険性が差し迫った状況ですので、必ずCTあるいはMRI検査を行う必要があります。これら二次性頭痛の鑑別疾患の中にRCVSが加わりました。RCVSを含めた上記の二次性頭痛が否定されたら一次性雷鳴頭痛の診断が成り立ちます。雷鳴頭痛を示す症例のなかには、原因疾患が明らかにすることができない例も多くみられることから、一次性頭痛として「一次性雷鳴頭痛」が一次性頭痛のカテゴリーに独立した疾患として登場しました。
頭痛は両側性が多く、頭全体の痛みが多いです。嘔気、嘔吐、光過敏、音過敏など片頭痛様の随伴症状が伴うことがあります。激しい痛みは1-3時間程度ですが、その後は中等度の痛みが持続し、1-4週間の間に平均1-4回激しい頭痛が襲うことが多いようです。頭痛の引きがねとして、性行為、排便、排尿、運動、咳、入浴、シャワーなどが多く視覚異常、失語症、感覚異常、片麻痺などを伴うケースもあります。
画像所見
多くの場合脳自体に異常所見は認めません。しかしMRA・3D-CTA・血管撮影にて脳血管を撮影すると「数珠(strings and beads)」状外観を呈します。脳動脈の収縮と拡張が交互に存在します。しかし症状が出現して1週間は正常の血管を呈することも多く、繰り返し血管の精査が必要です。
(発症時)
(発症35日目)
合併症 経過
雷鳴頭痛が繰り返す過程の中で、一過性脳虚血発作、PRES、脳浮腫、脳梗塞、くも膜下出血、脳出血など重篤な合併症を発症することがあります。これら合併症の程度によって予後が決まります。