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頭部外傷-各論(外傷後てんかん)-
大きな外傷は脳に損傷を引き起こすので、それが原因となっててんかん発作を起こすことがあります。幼少時の頭部打撲は非常に多いです。それは成長の段階で子供は体に比べて頭部の割合が大きく、足の筋肉を始め全身の筋肉量が成人に比較すると少ないために必然的に頭部打撲が増えます。ブランコから落っこちた、窓から落ちた、木登りから落ちた、赤ちゃんを床に落としたなど、例を挙げればきりがありません。怪我したあと意識が数時間戻らなかったようなケースでは脳に傷がついた可能性があります。
外傷後のけいれんは、その発生時期により、次の3型に分けられます。
1 直後けいれん(immediate seizure): 受傷後24時間以内に生じます
小児に多く、外傷性てんかんへの移行は少ないと言われています。一般に、頭部を打撲した場合、24時間以内にけいれん発作が起こることがありますが、打撲のみで脳の損傷がなければ、通常は1回のみでおさまります。
2 早期けいれん(early seizure): 受傷後7日以内に生じます
小児に多く、外傷性てんかんへ移行しやすいと言われています。
3 晩期てんかん(late epilepsy): 受傷後7日を超えて生じます
受傷後8日以降に起こるけいれんをいいます。発症するとすれば1年以内に50%、2年目までに80%程度が発症すると言われています。般に「外傷性てんかん」は「晩期てんかん」をさすことが多いです。
外傷性てんかんの診断(Walkerの診断基準)は下記のようになっています。
①発作がてんかん発作である。
②受傷前に発作を起こしたことがない。
③発作を起こす可能性のある疾患がない。
④外傷の程度が脳損傷を起こすほど強い。
⑤最初の発作は受傷後あまり時間がたっていない。外傷後まもなく発症。
⑥発作の型、脳波所見が脳損傷部位と一致。