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眼科 脳神経外科
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脳疾患を知る

2-6
頭部外傷-各論(脳挫傷)-

脳は外部の強い力から頭蓋骨という固い骨で守られています。しかし、転倒や交通事故などの突然も急速な加速や減速が生じると、頭蓋骨の中で脳が揺さぶられ、固い骨に強く打ち付けられ脳自身に挫滅が限局的に生じます。挫滅により脳内ではじわじわと出血し、血腫をつくることもあります。時間経過とともに挫滅創周囲の脳が腫れます。これを脳浮腫と言います。脳浮腫は24~48時間後にピークをむかえ、これが脳挫傷をさらに悪化させます。挫滅した脳では細胞の自己融解が起こり、最終的には液化・空洞化します。

 

症状

脳挫傷の生じる場所によって様々な症状が現れます。壊される部位と大きさにより千差万別です。脳挫傷のサイズが小さく重要な部位を破壊していなければ頭痛、めまい、嘔気・嘔吐が現れます。もちろん頭痛だけの場合もあれば、症状が何もない方もいます。脳挫傷はじわじわと挫傷部位から出血し拡大するケースや周囲の組織の浮腫を招きますので、サイズが大きくなれば意識障害につながり放置すれば死亡します。サイズが小さくても損傷された脳の場所によって、運動麻痺、感覚障害、失語症や高次脳機能障害が引き起こされることもあります。さらにてんかん(外傷性てんかん)を生じることもあります。

 

検査

最優先する検査は頭部CTとなります。もちろん頭部MRIでも評価可能です。脳挫傷はじわじわと出血し拡大および周囲の組織の浮腫を招きますので、数時間から数日の経過で急激に悪化することもあります。小さいサイズの脳挫傷でも必ずCTによる経過観察が必要です。CTでは脳内にごま塩状の出血を認めることが特徴的です。後日、細かな脳挫傷の評価まで行うときにはMRIを行います。

 

治療

脳細胞は破壊されると元に戻す事は出来ません。脳出血や脳梗塞と同様に脳挫傷も損傷された脳を治すことも再生させることも不可能で、損傷された脳が重要な機能を持っている場所(運動・知覚・言語・意識・呼吸・心臓など)でしたら、その機能を失った状態が永続することとなります。後遺症です。そのため脳挫傷の治療は、最初のステップは挫傷部位の拡大を防ぐための治療。それは点滴、呼吸・循環管理、脳圧コントロール、低体温療法など様々です。更に脳挫傷に付随する病態の治療(痙攣のコントロールや感染症予防)を行います。しかしそれらの治療を行なっても脳浮腫や脳出血が悪化し、頭蓋内圧の上昇が止まらない場合は救命のために開頭減圧術や開頭血腫除去術などの外科的治療を行うこともあります。通常脳を守るはずの固い頭蓋骨は、全方向からの攻撃から脳を守るために密閉された容器状態です。唯一脳から脊髄に繋がる部分だけ穴が開いていますが、そこには脳と脊髄を繋ぐ脳幹という生命の中枢が存在します。脳挫傷、出血、浮腫によって圧力が上がると(密閉された容器内に出血が増えれば圧力は上がりますね)どこからか圧が逃げようとします。当然頭蓋骨を破って圧は逃げれないので、その生命の中枢である脳幹がある穴から圧が逃れようとします。その結果脳幹は押しつぶされます。生命の中枢が押しつぶされる訳ですので、その生命は途絶えます。これが脳ヘルニアです。これを避けるには圧を別の場所から逃す治療・それが減圧開頭血腫除去術です。頭蓋骨を大きく外し、血腫を除去することで圧は脳幹には向かわず救命する事が可能になる手術です。