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頭部外傷-各論(急性硬膜外血腫)-
強い力が頭部に急激に加わり、硬膜の外側と頭蓋骨の内側の間に生じた血腫です。(部位については前章の急性硬膜下血腫を参照)頭蓋骨線状骨折や陥没骨折に伴うことが多いですが、骨折なく起こることもあります。骨折により主に硬膜を走行している動脈を損傷してしまい、その動脈から出血することによります。さて硬膜下血腫同様に硬膜外血腫の部位から解説します。ここで一回言葉の意味を説明します。大事な脳を守るために何重にもバリアが張られています。外から順に
①皮膚②骨膜③頭蓋骨④硬膜⑤くも膜⑥軟膜
血腫が溜まる部位によって言葉が変わっているだけです。上の図ですと①皮膚②骨膜③頭蓋骨は言葉の説明に関係しないので、次は「膜」だけで説明します。膜は3つ存在します。
硬膜
くも膜
軟膜
の3つです。
骨の下に硬膜が存在し、その下にくも膜が存在、その下に軟膜があります。つまり硬膜外といえば硬膜の外=骨と硬膜の間です
症状
受傷の程度が強ければ受傷時から意識障害が生じますが、最初は意識がしっかりしているにもかかわらず、数十分から数時間の時間経過で意識障害が急激に出現し進行することもあります。lucid intervalといい「元気に話をしていたのに、気づいたときには」の状態です。そのほか、頭痛、嘔吐、不穏、けいれんなどが生じることもあります。
検査
頭部CTで評価します。頭蓋骨骨折の状況、ならびに硬膜外血腫の場所・血腫量、脳への圧排程度を評価することができます。数十分から数時間の経過で急激に症状が悪化することもあり、その都度CTによる評価を行い、手術が必要か検討する必要があります。
治療
血腫量が軽度で、血腫の増大傾向がなければ点滴等で様子をみます。しかし血腫が急激に増大して脳への圧迫が強い場合は、緊急手術を行います。手術は、開頭して硬膜外血腫を除去し、硬膜や頭蓋骨の出血部位を止血します。脳実質の損傷が少なければ、速やかに適切に治療を行うことで回復が期待できますが、進行が著しい場合や対処が遅れると、二次的に急速に不可逆的脳損傷が起こり、後遺症を残すことや、救命困難となる場合があります。