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急性期治療(トリプタン-各論-)
種類と使い方
現在日本国内では、5種類のトリプタン(スマトリプタン・ゾルミトリプタン・エレトリプタン・リザトリプタン・ナラトリプタン)が扱われています。そしてそれらは7種類のお口から飲む経口薬・1種類の鼻から吸う点鼻薬・2種類の注射薬が市販されています。各トリプタンにはそれぞれ違いがあります。簡単に違いを説明します
一番左は5種類のトリプタンの一般名です。そして左から2番目に商品名を記載しています。
イミグランだけはお口から飲む錠剤と鼻から吸引する点鼻薬と自分で注射出来る皮下注射薬のキットがあり、各々で効果が違うので3つ記載しています。他の4つのお薬はお口から飲む内服薬です。ただしゾーミッグは通常の錠剤の他にRM錠と言い口腔内速溶錠・マクサルトは通常の錠剤の他にRPD錠と言い口腔内崩壊錠があります。片頭痛は時間や場所を問わず発症するため、発作に備えて常時携帯し簡便に服用できることや片頭痛の随伴症状の悪心・嘔吐を伴う場合には、水なしでも服用できることが患者さんにとって有用です。水なしで服用できますが、必ず薬が溶けた唾液を飲み込み、効果を上げるためにはお水で服用してください。
最高血中濃度到達時間とは
『一番薬の効果を感じる時間』
薬は服用した場合、胃や腸などで溶け、吸収され効果が出るまで時間がかかります。その吸収された薬が、血液中でもっとも濃度が高い時を『最高血中濃度』と言います。そして最高血中濃度にかかる時間を『最高血中濃度到達時間』と言います。ジワジワと効果が出始めて一番効いてる時間までにかかる時間ですので、数字が短い数字であれば効き目が早く、数字が長い数字であれば効き目がゆっくりのお薬となります。
イミグランの皮下注射は12分・・・ すぐに効きます
アマージは2.7時間・・・・・・・・ゆっくり効きます
半減期とは
『薬の効果が半分になるまでの時間』
身体に入ったお薬が代謝されて尿や便になって排泄されていきます。よってお薬が半分に減るまでに要する時間を示しています。半減期が短いということは薬物が素早く代謝・排泄されることを示し、結果、薬の効き目も短くなり、半減期が長ければ、薬が作用する時間が長いことを意味します。よって、薬の半減期は投与間隔を決める重要な目安とされています。
イミグランの皮下注射1.5時間・・・効果は短いです
アマージは5時間・・・・・・・・ 効果が長いです
使い方と追加投与の間隔
各々の薬の『効果までの時間』と『効果の持続時間』を考えて一人一人に合ったお薬を見つけるのです。発症が激烈なので、とにかくすぐに効果が現れるお薬が良いのか?片頭痛発作の持続時間が長く、頭痛の再発が多いからとにかく長く効果が持続するお薬が良いのか?などと考えてお薬を選択します。各々の薬に半減期の違いがあることから、各々の薬には追加の投与までの時間が厳密に決められています。半減期の短い薬では、短い時間で体内のお薬の濃度が下がるので追加投与しても問題ない間隔が短いです。逆に半減期の長いお薬では次の追加投与が可能になるには時間がかかります。それらによって1日の最大投与数も決まっています。
イミグラン
国内初のトリプタン系片頭痛治療薬です。使用経験の蓄積が多く、特に小児・妊婦での使用例は他の製剤に比べ豊富なお薬です。第1世代トリプタン系薬、作用が強く速効性があります。錠剤のほか、錠剤よりも効き目が早い点鼻薬、速効性で効果が確実な注射薬などがあります。点鼻薬は鼻にさす薬です。内服による腸管からの吸収よりも鼻粘膜から即座に吸収されるので、飲み薬よりも早く効果が現れます。臨床試験結果によると、投与後15分で効果が認められました。二峰性の濃度曲線(効果の山場が2回ある)を示し、速くも効くし、ゆっくりも効くようです。ただし点鼻液が喉の奥に流れると、強い苦みを感じますので注意して下さい。水を飲むのが厳しい場面(例えば吐き気や嘔吐を伴う重症例・会議中など)に向きます。また確実な即効性が期待できる自己注射キットもあります。
ゾーミッグ
第二世代のトリプタン製剤になります。通常の錠剤の他にRM錠と言う口腔内速溶錠があります。片頭痛は時と場所を選ばずに発症します。発作に備えて常時携帯、簡便な服用、片頭痛の随伴症状の悪心・嘔吐を伴う場合にも服用できる事・これらが患者さんにとって有用です。水なしで服用できますが、必ず薬が溶けた唾液を飲み込みましょう。また効果を上げるためにはお水で服用してください。オレンジ味で概ね飲みやすいようです。ゾーミッグ自体の特徴はイミグランと比較して体内への吸収率が改善されています。効果が出現するまでの時間はスマトリプタンよりも遅いですが、効果の持続時間は長いです。
レルパックス
いつの間にか効いている感じのマイルドな効き方で、トリプタンの副作用である首や胸の締め付け感も少ないです。最高血中濃度到達時間が短く、半減期も長いため速効性と再発率の低下が期待できます。
マクサルト
マクサルトは通常の錠剤の他にRPD錠と言う口腔内崩壊錠があります。ゾーミッグと同じです。片頭痛は時と場所を選ばずに発症します。発作に備えて常時携帯、簡便な服用、片頭痛の随伴症状の悪心・嘔吐を伴う場合にも服用できる事・これらが患者さんにとって有用です。水なしで服用できますが、必ず薬が溶けた唾液を飲み込んで下さい。また効果をより上げるためにはお水で服用してください。RPD錠は普通の錠剤より立ち上がりが遅くゆっくり効くようです。またミント味なので好みは分かれるようです。経口剤では立ち上がりが最も早いが、消失半減期も短いです。
アマージ
最高血中濃度到達時間が2.7時間と長いため速効性は欠けます。立ち上がりがゆっくりでマイルドな効き方です。トリプタンの副作用である首や胸の締め付け感やフワフワ感などが少ないです。代謝を受けにくく、半減期が5.5時間と長いので、効き始めると長く効くのが特徴なので再発が認められる方に向いているお薬です。
他剤との関係
次に薬各々に持病や他に飲んでいるお薬と組み合わせが良くなく使用できない状況があります。左から使用できない状況・一緒に内服できないお薬・一緒に内服するには慎重に経過を診ないといけないお薬や状況をまとめました。これらはしっかりと担当医にご自分のお体の状況や持病、現在内服しているお薬を伝えてましょう。
自分に合ったトリプタン
各トリプタンに対する反応や副作用の出方には個人差があります。最初のトリプタンが合わなくて期待したような効果が現れなかったり、副作用が出現することもあります。しかし他のトリプタンでは全く違う反応を示す場合があります。全てのトリプタンに反応しない方もおりますが、相当少数です。トリプタンで期待した効果が得られなかったときは、①『本当に片頭痛の発作時だったか』②『服用方法が正しかったか?』③『服用のタイミングが正しかったか?』など検証します。本当に効果が得られていない場合は、投与量や併用薬の調整、別の剤型・別のトリプタンへの変更などの対応策を考えます。ほとんどの方は自分に合ったトリプタンが見つかります。頭痛の性状や発作時間、薬に対する頭痛の変化をしっかりと頭痛手帳に記載して医師と一緒に自分に合ったトリプタンを探しましょう。