2-10
網膜片頭痛
解説
網膜片頭痛は単眼の視覚障害の発作が片頭痛に伴って繰り返し起きます。まれな疾患と考えられ、正確な有病率は不明です。
A 1.2『前兆のある片頭痛』の診断基準と下記のBを満たす発作がある
B 前兆は下記の両方の特徴を持つ
①完全可逆性で、単眼性の陽性または陰性視覚症状(あるいはその両方)(例えば閃輝、暗点、視覚消失)があり、発作中に下記のいずれか、または両方により確認される
・a臨床視野検査
・b(適切な指示のもとに)患者が図示する単眼視野障害
②少なくとも下記の2項目を満たす
・a5分以上かけて徐々に進展する
・b症状の持続は5-60 分
・c前兆に伴って、または前兆発現後60分以内に頭痛発現
C 他に最適なICHD-3の診断基準がない、また、その他の一過性黒内障の原因が除外されている
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
診断基準をくだいて解説すると『前兆が片方の眼に起きる片頭痛』という事です。「片眼に起きる前兆」というのが肝です。両眼に起きる視覚症状は、通常の『前兆のある片頭痛』です。アメリカ片頭痛財団によれば、『網膜片頭痛では視覚症状の原因は眼に由来している一方で、「前兆を伴う片頭痛」の視覚症状の原因は脳に由来している(だから異常は両目で見られる)』という事です。最後の一文『他に最適なICHD-3の診断基準がない、また、その他の一過性黒内障の原因が除外されている』は重要です。片目だけに影響を与える視力の問題は、脳卒中や網膜剥離などの可能性があるため、眼科的な検査から脳の画像診断から頸動脈の検査までを適切に行わなければなりません。視覚症状として頻度の多いものから、視力の完全な喪失、ぼやけた視力、暗点、または死角の発生、部分的な視力喪失、視力の増減となっています。ほとんどの場合前兆は比較的短時間で、5~20分ほど持続すると言われています。片頭痛の痛みは冒された目と同じ側の頭に発生する事が多いようです。