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脳疾患を知る

11-2
レビー小体型認知症ー症状ー

認知機能低下

アルツハイマー型認知症と異なり障害の度合いは軽度です。そのため病初期には記憶障害については一見気がつかないこともあります。健忘の自覚は初期からみられますが、簡便な検査では初期には比較的正常に近い値を示し判断に迷う事があります。進行すると記憶障害は顕在化し、他覚的にも明らかとなります。アルツハイマー型認知症のように新しいことを記憶できない障害とは異なり、脳にすでに入っている事柄を思い出せない想起の問題が中心となります。そのため、アルツハイマー型認知症では、ヒントを与えても全く思い出せないことが多いですが、レビー小体型認知症はヒントを差し出すと思い出せることがあります。つまり記銘力の低下よりも記憶の再生障害が顕著な前頭葉性記憶障害が主体です。よって病初期にはMMSEが比較的高いスコアを示します。病初期は記憶障害より、遂行機能障害および視空間認知障害とともに注意障害、構成障害などの症状が強く出現するのも特徴です。

中核的特徴(最初の3つは早期から出現し、臨床経過を通して持続します)

●注意や覚醒レベルの著明な変動を伴う動揺性認知障害

 病初期に目立つことが多く、比較的急速に起こり、数分から数時間、時に数週から数ヵ月に及ぶことがあります。ボーっとした状態とはっきりした状態を繰り返したり、1日のうちでも「まるで別人のように変わってしまう」と訴えることが多いです。またレビー小体型認知症ではアルツハイマー病に比べてせん妄の既往が多いだけでなく、経過中でもせん妄を生じやすく、しばしば認知機能変動との区別が困難な事もあり慎重に見極める必要があります。

●繰り返し出現する構築された具体的な幻視

アルツハイマー型認知症の章でも詳しく解説しましたが、子供や小動物の幻視が多いですが、大人、虫、光など様々です。動揺性認知障害の変動と一致し、注意覚醒レベルが低下したときや夕方など薄暗い時間に多く現れます。せん妄との鑑別が必要ですが、持続性、反復性といった点や本人が詳細に説明する点などで鑑別可能です。知機能障害が進行するに伴い、幻視は目立たなくなります。紐が蛇に見えたり、洋服を人と錯覚する錯視、物や人物の形や大きさが変化する変形視など現れます。また家族や友人の顔を他人と見間違える人物誤認や、自宅にいても自宅ではないと主張する場所誤認がみられる事もあります。

(動物に関するもの)

猫が部屋の隅にいる

ヘビがとぐろをまいている

兎が部屋の隅にいる

(人に関するもの)

小さな子供が部屋の隅にいる

死んだ兄が毎晩やってきて帰ってくれない

体の大きな軍人が、銃をもってウロウロしている

知らない男の人が、ベッドに入ってきて寝ている

などが多いです。

見えるものは様々ですが、一般的に小動物や虫、人物が多いです。また多くの場合動きを伴います。注意が必要なのは、「蛇に見えたが実は紐だった」というのは幻視ではなく錯視です。また「2階にだれかがいる」というのは、妄想です。人が見える場合、相手を特定することもできる場合もあれば、特定出来ない場合もあります。「顔がよく見えない」「ぼやけていて名前を聞くのだが答えてくれない」などと言います。本人にはしっかりと見えていますので、確信を持って家族や医師に説明を行います。

 

対応法)

まず介護者は、幻視は本人にとっては本当に見えていることを理解しましょう。頭ごなしに強く否定したり、感情的に対応すると、本人は興奮したり混乱します。また妄想に発展してしまったり、抑うつに変化したりします。また認知症における幻視は統合失調症の幻視とは異なり、幻視が危害を加えようとはしないことが特徴で幻視を見ている本人が怯えている様子がありません。ですので本人が見えていると訴えていることさえ受け入れられれば、特段対処は必要にならないことが多いです。また大抵の幻視は、近づいたり、触ったりすると消えてしまうので一緒に近づいたり、触ったりしても良いでしょう。ただ、おかしいと思ったら早い段階での認知症専門医の受診が大切です。

他に

・カプグラ症候群身近な人が瓜二つの他人とすり替わったと思い込むことです。

・フレゴリの錯覚他者を別の他者の変装であると確信するものです。たいていの場合は自分を迫害するなどという妄想を伴います。

・相互変身症候群身近な人が相互に変身してしまうという妄想です。

・自己分身症候群自分とそっくり同じの分身がいると確信する妄想です。

・幻の同居人赤の他人が家の中に住んでいると思い込む妄想です。

・鏡徴候鏡に映った自分の姿が認識できずに他人だと思い込む妄想です。

・TV徴候テレビの世界と現実との区別がつかなくなる妄想です。

●認知機能の低下に先行することもあるレム期睡眠行動異常症

レム期睡眠行動異常症(RBD)はかなり多く遭遇する症状でしたが、2017年までの診断基準では中核症状としては認められていませんでした。しかしながら、2017年に改訂された臨床診断基準では中核的特徴として位置づけられました。アルツハイマー型認知症は、概日リズムの中枢といわれる視交叉上核という部分の変性脱落が生じるために睡眠リズムの変化が起こりやすいと言われています。一方、レビー小体型認知症やパーキンソン病は、病変が嗅球近傍という部分から上行するためREM睡眠のスイッチに影響が生じるようです。そのような理由からREM睡眠行動障害が生じやすいと言われています。この点ではパーキンソン病とレビー小体型認知症は共通しています。レビー小体型認知症は約60- 80%と極めて高率にレム睡眠時行動障害が出現します。また幻視やパーキンソニズムに先だって認められます。夢内容と一致する行動異常が現れ、大声を上げたり暴れるなどの行動異常が認められます。一方でパーキンソン病は歩行障害などの運動症状発現後にレム睡眠時行動障害が続発するケースも多く、割合は約40-50%と言われています。この行動異常は悪夢がベースとなり、夢の中での自己防衛のための動作や行動が現れます。そのため怒鳴ったり、叫んだり、場合によっては殴る、蹴るなどから歩き回るケースまであります。レム睡眠時行動障害に対しては、第一選択薬として clonazepam、他の選択薬として、imi- pramineなどの三環系抗うつ剤、carbamaze- pine,melatoninなどが使用されます。

●特発性パーキニズムの以下の症状のうち1つ以上

まずパーキンソン病の症状について簡単に解説します。これまでパーキンソン病の症状として、無動・寡動、安静時振戦、筋強剛、姿勢反射障害が4大徴候とされていました。しかし新しく2015年に提唱された新しい診断基準では、無動・寡動が必須条件となり、安静時振戦か筋強剛のどちらか 一つないし両方を認めるものとされました。他にも進行性核上性麻痺などのパーキンソン症状を引き起こす他の疾患の除外を目的として、「姿勢保持障害に起因する繰り返す転倒が発症3年以内に認められた場合」は、パーキンソン病が除外されることとなりました。高齢者のパーキンソン病は、初発症状に安静時の振戦より歩行障害が目立つことが多いです。歩行障害とは前かがみの姿勢で小刻みに歩行する「小刻み歩行」・歩き出しの一歩が踏み出せない「すり足」・歩いているとだんだんスピードが速まる「加速歩行」など特徴的な歩行を呈します。

 

①無動・寡動

動作の開始や動作が緩慢になり素早い動作ができなくなります。動きが小さくなり、歩いているときにもほとんど手を振らなくなります。一度にいくつもの動作をしようとすると、さらに動きが鈍くなります。また表情が乏しくなり仮面様顔貌と言われたり、文章を書いていると字が徐々 に小さくなる小字症が現れます。

 

②安静時振戦

座って何もしていない時に、手足が小刻みに震えます。動いたり、何かしようとするときには、震えが止まることが多いのが特徴です。片側の上肢にみられることが多いです。暗算などの精神的緊張を負荷すると出現しやすいです。

 

③筋強剛(固縮)

筋肉がこわばり、身体がスムーズに動かなくなります。他動的に患者の肘や手首を屈伸する際に抵抗を感じます。歯車のように規則的な動きになる場合を歯車現象、こわばりが続く場合を鉛管現象と呼びます。

 

④姿勢反射障害

姿勢を保つことが困難になり、軽く押されるとバランスを崩してしまいます。バランスを崩すと元に戻しづらくなり、転んでしまうことがあります。これは進行すると出てくる症状です。

上述した4大症候のうち2つ以上の症状を満たすものをパーキンソン症候群と呼びます。パーキンソン病以外の神経変性疾患では、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、レビー小体型認知症で見られます。また症候性パーキンソニズムとしては薬剤性・血管障害性・正常圧水頭症・甲状腺機能低下症・一酸化炭素中毒など見られます。薬剤性パーキンソニズムは歩行障害や無動・寡動を初発症状とすることが多いです。

さてレビー小体型認知症のパーキンソニズムについて以下解説して参ります。レビー小体型認知症の診断がついた時の約25-50%の方にパーキンソニズムが認められます。寡動、筋強剛、振戦がみられ、小刻み歩行、前傾姿勢、姿勢反射障害、構音障害、仮面様顔貌など、パーキンソン病でみられるものと差異はありません。ただし、初期には下肢脱力と易転倒性がみられる程度で、進行しても寡動と筋強剛のみで振戦は末期まで目立たない場合があります。他にパーキンソン病と比較して左右差が少ない特徴があります。一方で認知機能障害はパーキンソン病と比較して処理速度,視空間認知機能,遂行機能,注意機能などはレビー小体型認知症の方が強く現れます。

支持的特徴

抗精神病薬に対する重篤な過敏性

レビー小体型認知症の人は、お薬に過敏に反応することが知られています。さまざまな副作用があらわれ、また通常の服薬量でもお薬が効き過ぎたり、症状が悪化したりすることがあります。どのお薬に対しても過敏性が認められますが、特に向精神薬を使用した場合、悪化するケースが目立ちます。精神症状・行動異常を抗精神病薬で治療を行えば過敏性のためパーキンソニズムの悪化を来すことがあるため注意が必要です。逆にパーキンソニズムに対してはドパミン製剤を使用したりドパミンアゴニストを使用すれば精神症状の悪化を招くケースもあります。このようにレビー小体型認知症に対する効果的な薬はいくつかありますが、それらのレビー小体型認知症の治療薬であっても、上記のような症状が増悪し、新たな問題を発生させたりすることは少なくありません。このような事からも認知症専門医でさえも、時にコントロールに難渋します。従って、認知症における充分な知識・技量と豊富な経験を有した医師が求められます。レビー小体型認知症に対する理解不足、あるいは誤った判断によって、誤った薬・不適切な用量で処方されている例は、少なくありません。

姿勢の不安定性

繰り返される転倒

失神または一過性の無反応状態のエピソード

高度の自律機能障害 (便秘・起立性低血圧・尿失禁など)

過眠

嗅覚鈍麻

幻視以外の幻覚

体系化された妄想

アパシー 、不安、うつ