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脳幹前兆を伴う片頭痛
解説
以前は脳底型片頭痛と呼ばれていました。脳幹とは脳の下の方にある大事な部分です。呼吸、血液循環、嚥下、睡眠や覚醒、といった生きる上で必要な活動を司る中枢です。脳幹症状を以下に具体的に記します。
1.会話は正常だが呂律が回っていない構音障害 2.回転性めまい 3.耳鳴 4.難聴 5.複視 6.運動失調 7.意識レベルの低下があります。力が入らない脱力はここには含みません。
また、見ているものが大きくなったり、小さくなったりする「不思議の国のアリス症候群」がみられることもあります。若年者、特に女児に多く、10歳以下では珍しくはないと言われています。
A 1.2『前兆のある片頭痛』の診断基準と下記のBを満たす発作がある
B 前兆として下記の2項目の両方を認める
①下記のうち少なくとも2項目を満たす
1.構音障害
2.回転性めまい
3.耳鳴り
4.難聴
5.複視
6.感覚障害に起因しない運動失調
7.意識レベルの低下
②運動麻痺(脱力)あるいは網膜症状は伴わない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
とされています。前兆は、回転性めまいが最も高頻度に認められます。次いで構音障害となります。また、見ているものが大きくなったり、小さくなったりする「不思議の国のアリス症候群」と言われる症状が認められる事があります。若年者、特に女児に多く10歳以下では珍しくはないと言われています。一方、30歳代以降では少ないです。先に記した前兆の最中あるいは終了後30分以内に頭痛が始まります。頭痛は『前兆のある片頭痛』の診断基準に合致した頭痛です。頭痛は後頭部に比較的多いようです。
治療
頭痛発作の頓座薬(頓服)としては、血管を収縮させる作用を持つトリプタンは脳梗塞発生の危険性を考慮し使用禁忌(使ってはいけない)とされています。同じくエルゴタミン製剤も使用禁止となっています。しかし片麻痺性片頭痛と同様に大規模な試験やデータが存在しないため一定した見解がなされておりません。その他の急性期治療薬に関して『前兆のある片頭痛』と同様な治療が行われています。予防薬はカルシウム拮抗薬のベラパミル(ワソラン)がよく反応すると言われています。また塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)などの片頭痛の予防薬も使用されています。