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脳疾患を知る

9-6
アルツハイマー型認知症ー治療(中核症状)ー

抗認知症薬

現在、複数のアルツハイマー型認知症治療薬が使用可能となり、認知症治療が大きく変貌してきています。コリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの 3 種類およびNMDA受容体拮抗薬のメマンチンの4種類のお薬が使用出来ます。認知症ガイドラインにも「アルツハイマー型認知症に対するドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの有効性が示される」と記載され、「強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる」と推奨されています。

まずコリンエステラーゼ阻害薬について簡単に説明します。アルツハイマー型認知症の脳は、アセチルコリンが低下しています。アセチルコリン は、アセチルコリンエステラーゼという酵素によって分解されます。そこで、アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害してアセチルコリンを増加させるアセチル コリンエステラーゼ阻害薬が開発されました。現在、我が国で使用されているChEIはドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの 3 種類となります。Cochrane Database Systematic Reviewによれば、軽度から中等度のAlzheimer型認知症患者に対して認知機能、全般的機能、日常生活動作、行動障害を改善することが報告されています。3剤の作用機序には多少の相違はありますが、基本的には治療効果に明らかな差はありません。各々の薬の解説をする前に、患者や家族は認知症のお薬が認知症を治すお薬と思っているケースもあります。そのため投与前には正しい抗認知症薬の説明を行うべきです。アルツハイマー型認知症とは、現在の医学では根本的な治療法は見つかっておらず、利用できるお薬は限られています。それらのお薬も認知症を治す、お薬ではなくこれ以上の進行を抑制するお薬です。目に見えて効果が現れるのは3−4割です。3年先には家族の顔が分からなくなるのを5年先に延ばす可能性があるお薬です。大きな副作用はあまりないのですが、薬に過大な期待はしてはいけません。抗認知症薬で進行を抑え、周辺症状が現れたら他のお薬で対応し、上手な介護でご本人が安心して暮らせる環境を作ることが大切です。

①ドネペジル

我が国では1999年に初めて販売されたコリンエステラーゼ阻害薬です。錠剤、口腔内崩壊錠、細粒、ゼリー製剤の4酒類があります。1日1回3mgから開始し、副作用の有無を観察した上で、1~2週間後に1日1回5mgに増量します。重度のアルツハイマー型認知症では5mgを4週間以上継続した後に、1日10mgに増量することができます。軽度から中等度~高度の症例に適応が認められているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬はドネペジルのみです。 認知機能の改善、認知機能低下の進行抑制が期待される他に、周辺症状の改善効果も認められます。周辺症状の中ではアパシー、うつ、 不安などの改善作用も示されています。副作用は食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状が多くみられます。これらの副作用は内服開始日から1-2週間以内に出現する事が多く、出現するとその後服薬を拒否してしまうことが多いので消化管機能改善薬の併用などを考慮します。一般的に消化器症状は慣れてくると言われますが、一回起きるとその後の服薬は難しくなります。また、投与開始時期に焦燥・興奮などの精神症状が出現することがあり、介護の抵抗性が出現したときは注意が必要です。これは脳内のアセチルコリンが増加することにより、神経細胞が刺激されて生じるものと考えられています。他には徐脈や不整脈やパーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されています。アルツハイマー型認知症に対しては他の3剤も保険適応がありますが、レビー小体型認知症に適応がある唯一の薬となっています。注意が必要なのはジェネリック品については現在のところ「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症」「高度のアルツハイマー型認知症」のみ認可されており、レビー小体型認知症はジェネリック品は使用出来ません。ドネペジルの効果をどう判定するのか悩まれる方も多いですが、記憶障害の改善を主目的とすると効果はみられません、記憶障害進行抑制が目的です。しかしながら感情、行動、注意、意欲の面で効果を示す事が多いのは事実です。感情が穏やかになった、減退していた意欲が増してきた、活発になって外出が増えた、表情が明るくなったなどの声はよく聞かれます。記憶障害の進行抑制以外にもこのような点に注意するとドネペジルの効果を実感出来ると思います。ただし一点、活発になったとい効果は、効果がより一層強く現れた場合は介護への抵抗性や興奮といった症状に繋がるケースがあります。数は少ないですが、臨床の現場では一定数経験します。体重が軽い方、元来興奮や焦燥が強い方、レビー小体型認知症の疑いが晴れない方の場合に過度な効果を示す傾向があります。

②ガランタミン

2011年ガランタミン、リバスチグミンの2種類のコリンエステラーゼ阻害薬が販売されました。

ガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用の他に、ニコチン性アセチルコリン受容体への増強作用を示します。これによってより効率的に情報伝達が行われるようになり、臨床効果がより強い可能性も指摘されています。軽度から中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に使用されます。(重度アルツハイマー型認知症に適応はありません)また、不安、興奮、脱抑制異常行動などの周辺症状にも効果があります。1日2回投与を行い、1日8mgから開始して4週間後に1日16mgに増量して維持します。4週間以上投与した後には、症状に応じて1日24mgまで増量できます。副作用はドネペジル同様に、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状が多くみられます。他には徐脈や不整脈やパーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されています。また、代謝の関係から、コリン作動薬、ジゴキシン、β遮断薬、抗コリン薬、抗うつ薬などとの併用時には注意が必要です。

③リバスチグミン

2011年ガランタミン、リバスチグミンの2種類のコリンエステラーゼ阻害薬が販売されました。

リバスチグミンは、ドネペジル同様のアセチルコリンエステラーゼ阻害作用の他にブチリルコリンエステラー ゼ阻害作用を持ちます。軽度から中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に使用されます。(重度アルツハイマー型認知症に適応はありません)また、不安、興奮、脱抑制異常行動などの周辺症状にも効果があります。リバスチグミンの最大の特徴はパッチ剤(飲むお薬ではなく体に貼るお薬)であることです。吸収が緩やかでソフトな印象です。また内服できない方や、内服が疑わしい場合、貼付状況ならば介護者にとって確実です。1日1回4.5mgから開始し、4週ごとに4.5mgずつ増量して1日1回18mgを維持量として貼付します。また、忍容性が良好な症例には9→18mgの1ステップ漸増法が可能となりました。副作用はドネペジル同様に、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状が多くみられます。他には徐脈や不整脈やパーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されています。しかしリバスチグミンのパッチ製剤は、カプセル剤に比べて副作用は有意に低下しています。逆に痒みなどの皮膚症状がデメリットです。ガランタミンは不安・脱抑制・異常行動・興奮/攻撃性に有意の改善を認めるのに対して、リバスチグミンは、アパシー・不安・脱抑制・食欲低下・夜間異常行動に改善傾向がみられています。

④メマンチン

2011年に発売されたメマンチンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル・ガランタミン・ リバスチグミンとは作用機序が全く異なる製剤です。NMDA受容体拮抗剤で、過剰なNMDA受容体の活性化を抑制して神経細胞を保護する薬剤です。中等度から重度のAlzheimer型認知症患者にメマンチンは認知機能・行動障害・ADL・全体機能障害を改善することが報告されています。また興奮・妄想・幻覚・易刺激性・行動障害や攻撃性に有効であったことが報告されています。 中等度から重度の Alzheimer 型認知症患者におけるドネペジルとメマンチンの併用療法については行動障害、ADL、全般評価を有意に改善し、認知機能に対 しても改善傾向を認めたことが報告されています。1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量して1日1回20mgを経口投与します。メマ ンチンは腎排泄型薬剤であり、高度の腎障害患者では維持量の減量が必要です。副作用と してめまいや頭痛、体重減少が報告されています。頻度は少ないですが、痙攣、失神の副作用の報告もあります。

 

当院は静岡県伊豆半島に開院した脳神経外科専門医・眼科専門医・脳卒中専門医・頭痛専門医・認知症専門医が常勤しているクリニックとなります。一般的な眼科・脳神経外科・内科などの外来はもちろん、頭痛外来・もの忘れ外来・高血圧外来・生活習慣病外来などの専門外来も常時受け付けております。CT,MRIが完備されているため頭蓋内疾患は即日診断が可能です。眼科は白内障や眼瞼下垂、硝子体の手術を行っております。脳神経外科で手術が必要な場合は昭和大学脳神経外科、順天堂大学脳神経外科、その他ご希望の病院と提携し紹介させて頂いております。駿東郡・清水町・三島市・沼津市・長泉町・伊豆の国市・函南町・裾野市・熱海市・伊東市・伊豆市・小山町の方々から遠方の方々まで、気になることがございましたらいつでもご相談下さい。