診療予約
眼科 脳神経外科
現在の呼び出し番号
現在の待ち人数
現在の待ち人数

脳疾患を知る

9-4
アルツハイマー型認知症ー中核症状ー

総論

アルツハイマー型認知症の症状は大きく分けて

①中核症状  と

②周辺症状  に分けられます。

 

①中核症状とは認知症によって、脳の細胞が死滅する、脳の働きが低下することによって直接的に起こる記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認などの認知機能の障害を中核症状と言います。

一方で

 

②周辺症状とは取り巻く環境などに影響して現れる妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下などの精神機能や行動の症状の事を言います。


中核症状

ここではまず①の中核症状について解説します。

アルツハイマー型認知症の中でも最も有名な症状で、皆様が真っ先に頭に浮かぶ症状はやはり記憶障害になると思います。他には時間や場所が分からなくなる見当識障害。複雑な物事が上手に出来なくなる実行機能障害なども思いつくかもしれません。実はこれらの症状は他の認知症とは異なる形で現れていたり、認知症の簡易検査で間違えるポイントが異なっております。そのため詳しく問診や視診を行えば、他の認知症と容易に鑑別が可能です。他の中核症状は「コーヒーを入れる」「服を着る」など日常的に行っていた動作や物の操作が運動機能障害がないにもかかわらず行えなくなる失行・自分の身体の状態や自分と物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識することが難しくなる失認・言葉を上手に使えない失語といった症状が現れます。

 

A記憶障害

アルツハイマー型認知症において最も中核的な症候は記憶障害になります。簡単に説明してしまうと、新しいことを覚えられなくなり、さっき聞いたこと、したことをすぐに忘れます。次第に、覚えていたことも忘れるようになっていきますが、自分が子供の頃の古い記憶など、昔の出来事は比較的覚えています。

さてもう少し詳しく解説していきます。

記憶障害について総論で詳しく説明しましたが、記憶を頭の中に保持出来る時間によって即時記憶・近時記憶・遠隔記憶と分類されました。アルツハイマー型認知症は、近時記憶(数分から数ヶ月の記憶)が顕著に障害されます。よって「さっき話したことをすぐ忘れる」「さっき行った事をすぐに忘れる」「この前購入した事を忘れて同じ商品を購入してしまう」など少し前の記憶が障害されます。病初期には記銘と想起の間に干渉を挟まない即時記憶は良好なため、話した直後の記憶は保たれるため会話そのものは可能です。そのため簡単な会話をしただけでは気がつかないケースもみられます。近時記憶とは対照的に、古い出来事を記憶する遠隔記憶は末期まで保たれています。

次に記憶の内容によって分類されるエピソード記憶と意味記憶がありました。エピソード記憶とは個人が経験した出来事に関する記憶です。例えば、「昨日どこに行って何を食べたか」というような記憶です。長いものですと、最終学歴、職業歴、結婚など個人史となります。一方、意味記憶とは日常生活に必要な世間一般の知識です。例えば、「車」が意味するもの(機能、大きさ、形、乗り物の一種であるという知識など)に関する記憶が相当します。アルツハイマー型認知症はエピソード記憶を強く障害されます。体験をそっくりそのまま記憶から抜け落ちています。そしてこれらの事を訪ねられても「分かりません」「忘れました」とは決して答えません。取り繕いや言い訳する傾向があります。一方でうつ病による記憶障害では、「分かりません」「忘れました」と答える傾向にあります。

 

    ー要点・アルツハイマー型認知症の記憶障害の特徴ー

近時記憶障害・・・・・数分前に会話した内容を忘れ、繰り返し尋ねる

エピソード記憶障害・・約束を忘れる つい先日行ったことを忘れるなど

ーアルツハイマー型認知症による記憶障害がもたらす簡易試験の特徴ー

アルツハイマー型認知症は遅延再生課題が大きく傷害されます。遅延再生課題とは、なんらか(HDS-Rだと桜・猫・電車と言葉)を記憶してもらい、少し時間が経過してから(HDS-Rでは一旦記憶してもらった後に計算問題を行います)思い出してもらう能力です。例えば「桜、猫、電車」と覚えてもらいます。すぐに確認する場合は即時再生記憶を確認していて、アルツハイマー型認知症では障害されません。即時再生課題が傷害される疾患は、皮質下性認知症です。皮質下性認知症は思考緩慢、集中力の問題で、直後に再生が出来ません。一方、しばらく時間が経過してから覚えてもらった言葉「桜、猫、電車」を思い起こしていただく遅延再生課題が大きく傷害されるのがアルツハイマー型認知症の特徴です。アルツハイマー型認知症では他の試験項目に比べて圧倒的に出来が悪い問題です。ヒントを与えても全く思い出せず、頭の片隅にすら残っていないケースが多いです。直前の数字の課題と間違えて「数ですか?」と尋ねたり、特有の取り繕いや誤魔化しが見られるケースが多いです。一方で皮質下性認知症(VD、PDD、PSP、CBD…)は、なかなか答えが出てこないのですが、ヒントに反応して再認課題クリアしやすい特徴があります。アルツハイマー型認知症は緩徐な発症と持続的な認知機能低下を特徴として、MMSEでは1年に平均3-4点ずつ減少していく経過を辿ります。

記憶障害に続き現れる症状は見当識障害、遂行機能障害、失語となります。

 

 

B見当識障害

「今自分がどこにいるのか」「今はいつなのか」を判断する能力を見当識と言います。見当識は記憶、注意、意識、視覚認知といった機能によって維持されています。つまり認知症に限らず、せん妄や覚醒不良などで見当識障害は目立ちます。見当識障害は大きく3つに分けられます。 1つは時間、1つは場所、1つは人の見当識です。時間の感覚を失う、場所が分からなくなる、人の認識を誤るなどが見当識障害です。アルツハイマー型認知症の場合は、物忘れに続いて、見当識障害も起こしやすいです。アルツハイマー型認知症による見当識障害は「時間ー場所ー人」の順で進むことが多いです。

 

C遂行機能障害

遂行機能とは計画を立てて、実際、行動を行う能力のことです。遂行機能が障害されると物事の順序が立てられず、優先順位が分からない、予期せぬトラブルに対応が出来ない、手順を言われても理解が困難などといった症状が現れ、前頭葉の機能障害と言われています。具体的には、「食事の準備ができない」、「計画的な買い物ができない」、「電化製品の使い方がわからない」などの症状です。遂行機能障害は、認知症の種類によって現れ方が異なります。側頭葉が病変の割合を大きくしめるアルツハイマー型認知症では、遂行機能障害はみられるものの記憶障害より顕著ではありません。症状の主座はあくまでも記憶障害であり、遂行機能障害は経過の過程で後期になって現れてくる症状の一つです。一方で前頭側頭型認知症や皮質下認知症では、早い段階で遂行機能障害を認め、重症の場合が多いです。血管性認知症では閉塞する血管によって症状は異なり、遂行機能障害は主に前大脳動脈の閉塞によって認められる症状です。

 

D失行

アルツハイマー型認知症は出来ていた事が出来なくなる疾患です。失行もその一つで、過去に一度身につけた一連の動作を行う機能が、手足など運動器官に異常がないにも関わらず低下することをいいます。手や指に麻痺などの問題がないにも関わらず、食事や書字、着衣といった、簡単な動作が行えなくなります。失行にもいくつかの種類があります。

:構成失行

空間的な把握が困難になります。具体的には描画、平面的図形構成、立方体構成がうまくできません。積み木を組み合わせて形をつくることが困難となります。図形描写を命ずると途中まで何度も条件設定動作を繰り返すclosing inと言われる症状が見られます。

:肢節運動失行

運動麻痺や感覚障害がないにも関わらず、硬貨をうまくつかめなかったり、ボタンを上手にかけられなくなる症状です。

:観念失行

「個々の運動はできるが、複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される」と定義されています。個々の行動は正しいのですが、順序、対象を誤るといった場合が典型的です。紙やハサミの名前、使用方法も分かるのですが、「ハサミを使って紙を切る」「紙を折って封筒に入れる」といった一連の動作ができない状態です。

:着衣失行

体と衣服を空間的に把握できず、衣服の上下、裏表の区別がつかない。「ボタンがかけられない」などの症状が出現します。

アルツハイマー型認知症では構成失行が病初期から出現しますが、進行すると観念運動性失行、観念失行が出現します。これらの失行は、幼少の頃から習い覚えた動作である手続き記憶の障害と合併し進行し、最終的には整容、食事、入浴、排泄などが出来なくなり、最終的に運動動作も行えない状態になります。

 

E 失認

アルツハイマー型認知症は出来ていた事が出来なくなる疾患です。失行もその一つで、体の感覚を司る器官(目・耳・鼻・舌・皮膚等)に問題がないにもかかわらず、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感に関係する認知能力が正常に働かなくなる状態をいいます。体の感覚を司る器官は、目・耳・鼻・舌・皮膚等とあるので、各々、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚による失認様々です。アルツハイマー型認知症では視覚による失認が多く現れます。視覚による失認は図形の模写が困難、道を間違うなどの症状で現れます。道順障害に地誌的記憶障害です。進行すると人物に対する失認が現れ、相貌失認や人物誤認といった症状が現れます。他にも半側空間無視、手指失認、病識欠如、カプグラス症候群といい家族が他人にすり替わったと訴える症状や、同じ家に他人が住んでいると訴える幻の同居人現象などの失認が現れます。

 

F 失語

アルツハイマー型認知症は出来ていた事が出来なくなる疾患です。失語もその一つです。失語には多くの種類があります。それぞれはhttps://kuwana-sc.com/brain/1206/に解説してあります。アルツハイマー型認知症では健忘性失語が目立ちます。健忘性失語とは物の名前が分からなくなる失語です。「えーと、あれあれ、食べるときにつかうあれ、あれ」など回りくどい話し方になる失語症です。物品名を思い出せない、人物名が思い出せず指示語が増える語想起障害を認めます。また語性錯語も目立ちます。語性錯語とは言葉を言い間違えることです。例えば「鍵」を「ネジ」と言うように、他の単語に言い間違えてしまう事です。会話の流暢性や復唱は保たれるため超皮質性感覚性失語を呈します。聴覚的理解の障害、読字、書字障害(漢字に強く現れます)が認められます。進行すると単語数や自発言語が減少し会話の内容が薄くなります。また相手も言葉のオウム返し(反響言語)や同じ言葉の繰り返し(同語反復)が現れ、最終的には無言症になります。