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アルツハイマー型認知症ー診断ー
診断基準
アルツハイマー型認知症の臨床的診断基準は、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-5と米国国立老化研究所とアルツハイマー協会(NIA-AA)による診断基準の使用が推奨されます。厳密な診断と研究の目的には国際ワーキンググループによるIWG-2が使用されます。
NIA-AA
Probable アルツハイマー型認知症(AD)
1.認知症があり
A.数ヶ月から年余に緩徐進行
B.認知機能低下の客観的病歴
C.以下の 1 つ以上の項で病歴と検査で明らかに低下
a.健忘症状,b.非健忘症状:失語,視空問機能,遂行機能
D.以下の所見がない場合
a.脳血管障害,b.レビー小体型認知症,c.behavior variant FTD,
d.進行性失語症(semantic dementia,non-fluent/agrammatic PPA)
e.他の内科・神経疾患の存在,薬剤性認知機能障害
Probable アルツハイマー型認知症(AD)with increased level of certainty
認知機能検査の進行性低下例,原因遺伝子変異キャリアー
Possible アルツハイマー型認知症(AD):
非定型な臨床経過
他疾患の合併例
a.脳血管障害,b.レビー小体型認知症,c.他の神経疾患や内科疾患,薬剤性
Probable アルツハイマー型認知症(AD)with evidence of the AD pathophysiological process
脳 Aβ 蓄積のバイオマーカー:CSF Aβ42 低下,アミロイド PET 陽性
2 次性神経変性や障害のバイオマーカー:
CSF tau,p-tau 増加,側顕・頭頂葉の糖代謝低下(FDG-PET)
側頭・頭頂葉の萎縮(MRI 統計画像処理)
Possible アルツハイマー型認知症(AD)with evidence of the AD pathopbysiological process
非アルツハイマー型認知痙(AD)の臨床診断,
バイオマーカー陽性か AD の脳病理診断
(日本精神神経学会(日本語版用語監修)高橋三郎・大野裕(監訳):DSM-5 精神疾患の診断・ 統計アニュアル.p602-603,医学書院,2014)
DSM-5
DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類です。「5」は、第5版という意味です。
A. 認知症の診断基準に一致
B. 少なくとも2つ以上の認知機能頒域で障害が潜行 性に発症し緩徐に進行する
C. 確実な AD(probable Alzheimer’ disease):1 か 2 のどちらかを満たす
1.家族歴又は遺伝学的検査から AD の原因遺伝 子変異がある
2.以下の 3 つ全てがある
a.記憶・学習の低下および他の認知機能領 域の 1 つ以上の低下
b.着実に進行性で緩徐な認知機能低下で, 進行が止まることはない
c.混合性の原因がない(他の神経変性疾患 や脳血管障害,他の神経疾患,精神疾患,全身疾患など)
疑いのある AD(Possible Alzheimer’s disease): 1 か 2 を満たさない場合
D 脳血管障害・他の神経変性疾患・物質の影響・そ の他の精神・神経疾患または全身疾患ではうまく説明できない
日本精神神経学会(日本語版用語監修)高橋三郎・大 野裕(監訳):DSM-5 精神疾患の診断・統計アニュアル. p602-603,医学書院,2014
他には、IWG-2 NINCDS-ADRDAによる診断基準があります。