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アルツハイマー型認知症ー遺伝・危険因子ー
遺伝因子
アルツハイマー型認知症は孤発性(遺伝は関係ない)と家族性(遺伝が関係ある)の2つのタイプがあります。遺伝性を非常に心配する方がおられますが、アルツハイマー型認知症に90%は遺伝と関係のない孤発性アルツハイマー型認知症です。「家族性アルツハイマー病」は認知症の原因疾患の一つですが、発症年齢が早く20歳代後半~50歳代に発症しやすいといわれています。また、この病気には遺伝性があることがわかっており、両親のどちらかが家族性アルツハイマー病であると、その子供は50%の確率でアルツハイマー型認知症になると考えられています。優性遺伝形式をとる家族性アルツハイマー型認知症の原因遺伝子は APP, PSEN1, PSEN2 が同定されています。ところが最近、孤発性アルツハイマー型認知症にもPSEN1の変異が報告されました。3 遺伝子に加えて、孤発性アルツハイマー型認知症に家族性の前頭側頭型認知症の原因遺伝子と考えられるMAPTやGRNの新規の変異やC9orf72の繰り返し配列伸長が 見つかっており今後更に増える可能性もあります。
危険因子
まず最大の危険因子は加齢になりますが、誰しも加齢から逃れることは出来ません。それでは他にはどのような危険因子があるのか、この章で解説します。
①優性遺伝形式をとる家族性アルツハイマー型認知症の原因遺伝子
APP, PSEN1, PSEN2
②遺伝的危険因子
A ApoE-ε4遺伝子
アルツハイマー病に関わるリスク遺伝子は150以上も報告されていますが、アポリポ蛋白E (ApoE遺伝子)は最も強力な危険遺伝子です。APOE遺伝子は、第4エクソン内に存在する2カ所のアミノ酸置換を伴うSNPの組み合わせによってε 2、ε 3、およびε 4 の 3 つの対立遺伝子(アレル)が存在します。アレル頻度はε 3>ε 4>ε 2の順で、この順位はアルツハイマー型認知症でも健常者でも変わりません。アルツハイマー型認知症でε 4の頻度が健常者に比べ、とりわけ高く、ε 4 を持つ遺伝子型の場合、遅発型アルツハイマー病を発症する強力なリスクファクターであると言われています。またAPOE-ε 4と脳内のアミロイド斑の増加には関連性があります。その他にもAPOE-ε 4アレルを多く持つと、アルツハイマー型認知症の発症年齢が若年化することが知られています。しかしながら日常診療におけるApoE-ε4遺伝子検査は2020年の時点では推奨されていません。アルツハイマー型認知症の診断目的に検査する意義は低いと言われています。
B ダウン症
③血管性因子
A 高血圧 B 糖尿病 C 虚血性脳血管障害 D 脂質代謝異常
④生活習慣
A 肥満 B 運動不足 C 喫煙
D 低教育 E 抑うつ F 頭部外傷
G 高ホモシステイン血症
⑤食事に関して
コレステロール、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、総脂肪酸は有意な関連性は認められませんでした。ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、フラボノイドが認知症予防効果があるようです。食事では魚・緑茶や赤ワインのポリフェノールが認知症予防に有効と言われています。地中海料理が予防に最適と言われる所以はこのあたりにあります。オリーブ・魚介・トマトに赤ワインが中心の料理です。世界アルツハイマーレポートによると、認知症が少ない国はフランスとインド、西アフリカ地域となりました。これには食生活が関連しているとみられ、フランスでは赤ワインがよく飲まれるためポリフェノールが認知症を抑制。またインドの主食となるカレーにはターメリックが多く含まれ、そのターメリック中には抗酸化物質が含まれていることが影響していると考えられています。
⑥防御因子
A 余暇活動 B 社会参加 C 運動 D 精神活動