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眼科 脳神経外科
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5-5
ボトックス

眼瞼痙攣 症状の確認

        両側眼瞼の痙攣       
        瞬きが多い       
        羞明       
        Charcot徴候       
        開眼困難       
        ドライアイ       
        頭痛・抑うつ       

眼瞼痙攣 試験

         速瞬試験         
         軽瞬試験         
         強瞬試験         

施行注意点の確認

     眼瞼下垂合併例    
     精神疾患症例    
     患者意識(金銭面との整合性の確認)  

施行前外来

         同意書の記載       
         注文・発注       

眼瞼痙攣・開眼失行に対するボトックス

欧米では第一選択として扱われています。日本でも上肢・下肢痙縮、片側顔面けいれん、痙性斜頸、小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足と多くの疾患に適応されています。添付文書ではA型ボツリヌス毒素として初回に1.25~2.5単位/部位を、1眼あたり眼輪筋6部位の筋肉内に注射します。片目あたり7.5-15単位、両眼合計15-30単位となります。

 

当日の準備

ボトックス50単位または100単位を用意
バイアル刺入部をアルコール消毒・乾燥を待つ
50単位ならば生理食塩水1ccに溶解(22G針装着2.5ml注射器)
22G針を残したまま注射器のみ外す
1mlツベルクリン用注射器に針を刺し吸引
30Gの針を装着
0.1cc5単位溶解

施行直前準備

       点眼麻酔       
       アルコール消毒し乾燥を待つ       

眼瞼痙攣に対するボトックスのポイント

標的筋

 

  • 眼輪筋(特に瞼板前部)
  • 必要に応じて皺眉筋/鼻根筋/鼻筋横部

禁忌

 

  • 前頭筋
  • 上眼瞼挙筋
  • 下眼瞼内角近傍
  • 下眼瞼耳側部深部

 

  • 下眼瞼は瞼縁に近すぎると眼瞼外反を起こすため施注しない

 

  • 下眼瞼眼窩部は深部注射すると下斜筋に毒素が及び複視となる

 

  • 開眼失行はRiolan筋(上眼瞼瞼板前部特に辺縁部1mm以内)下眼瞼は施注しない

眼瞼痙攣2.5-5単位/部位

開眼失行1.25-2.5単位/部位

 

標的筋の確認

         眼輪筋         
         皺眉筋         
         鼻根筋         
         鼻筋横部         

禁忌部位確認

         前頭筋         
         上眼瞼挙筋         
         下眼瞼内角付近         
         下眼瞼耳側深部         

投与単位の確認

初回半量
眼瞼痙攣2.5-5単位/部位 開眼失行1.25-2.5単位/部位

注射時の注意

眼輪筋:極めて薄く浅いため、針先は皮膚とほぼ水平に刺入します。皮膚に刺入したら皮膚を少し持ち、つり上げるようにして注入口を完全に皮膚内に入れます。皺眉筋はやや刺入部位の皮膚が硬いため眼輪筋より針は角度を付けて深めに注射します。

鼻根筋:鼻根3mm手前から刺入します。出血しやすいので注意します

出血時の対応

施行後の注意

施注後当日の洗顔、入浴は禁止する以外に日常生活に制限はありません。揉んだり擦ったりの機械的刺激は避けるように指導します。ボツリヌス毒素の有効率は90%程度で効果は3ヶ月程度持続します。症状が再発したら再投与します。2 か月以内の再投与は避けるべきと言われています。また、再投与の際には初回投与量の2倍までの用量を用いることができます。治療の副作用は局所性のものがほとんどで、全身性の副作用は非常に稀です。注射部位の疼痛、浮腫、皮下出血、一過性の知覚過敏などが報告されています。他に効果が強く、閉眼不全となり角膜潰瘍を起こす重大な副作用発生時には人工涙液などの点眼剤を投与するなど適切な保湿を行います。また上眼瞼挙筋の麻痺による眼瞼下垂や下斜筋、外直筋の麻痺による複視や、内眼筋浸潤による複視、瞳孔散大、羞明などの報告もあります。下眼瞼耳側部投与では深部到達によって、外眼筋に作用し複視が現れることがあるので注意が必要です。

洗顔 入浴 機械的刺激の禁止
翌日は 疼痛・出血・浮腫知覚過敏・眼瞼下垂・複視・散瞳の確認

まとめ

 

 

片側顔面痙攣に対するボトックス

片側顔面痙攣に対して確立された有効性と安全性が認められておりボツリヌス毒素療法を第一選択と考えてよいかと思われます。神経が筋肉に接合している部分に作用しますので、注射後約3ヶ月はけいれんが止まります。しかし、手術を行って顔面神経圧迫血管が神経から剥がれるわけではないのでボトックスの効果が認められる3ヶ月が過ぎると再発します。しかしながら片側顔面痙攣は、最初から手術を希望する患者は少ないためボツリヌス毒素療法による対症療法を希望する場合が多いです。ただし顔面連合運動で、顔面麻痺が著しい場合はボトックスによって麻痺が悪化するためインフォームド・コンセントを行ってからの治療が必要です。また眼瞼痙攣と比較して少量の投与から開始します。注射部位の炎症や感染は禁忌事項ですし、外傷の既往と眼瞼下垂は慎重投与となります。特に眼瞼下垂合併例では注意が必要です。初回投与は合計で10単位とされています。4週間観察し、効果不十分ならば追加で合計20単位を上限に投与できます。症状再発の場合は、合計で30単位を上限に再投与可能です。ただし、2ヶ月以内の再投与は禁止されています。顔面には多くの小さな筋肉が密集しているため、周囲の筋肉に溶液が浸潤すると有害事象に繋がる可能性があるため濃い溶液を使用したほうが合併症が少ないです。生理食塩液0.5ccで50単位を溶解し、26~30ゲージの細い針を使用します。眼刺激を避けるため点眼麻酔を行い、注射部位にアルコール綿などで消毒します。ボツリヌス毒素のアルコールで失活を防止するため必ず乾燥してから注射を開始します。眼輪筋は非常に薄いため針は皮膚に水平に刺入しますが、他の筋肉は皮膚がやや厚いので、角度をつけて数㎜の深さまで針先を刺入します。

 

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片側顔面痙攣に対するボトックスの実際

(眼輪筋)通常上眼瞼2箇所、下眼瞼2箇所に注射します。眼瞼痙攣と異なり計4カ所となります。顔面痙攣の病態が顔面神経障害のため、眼瞼痙攣より少量の単位となります。麻痺が認められる場合は更に少量に投与します。

上眼瞼:::瞼板前部の内側と外側、瞼縁から3~5mmの距離へ1カ所1~2単位皮内注射します。上眼瞼ではRiolan筋へも効果が及ぶように瞼縁に近い部位へ注射します。

下眼瞼:::内側と外側、瞼縁から8~10mm以上離して1カ所1~2単位程度皮内注射します。少し距離をとるのは瞼縁に近いと眼瞼外反を起こすためです。

眼瞼中央部は上眼瞼挙筋があるため、誤って注射すると眼瞼下垂を来します。また、下眼瞼内側部には鼻涙管があり誤って注射すると鼻涙管麻痺をきたします。眼瞼痙攣と比較すると若干少なめの投与量で効果があります。顔面神経麻痺合併例では更に半量に抑えます。皮膚は非常に薄いため皮内注射するように浅く、針を皮膚と水平にして、針先が透けて見える程度に刺入します。眼輪筋は皮下出血を起こしやすいため、出血の徴候がみられたら即座に座位にして圧迫止血を行います。

(前頭筋)片側顔面痙攣では、閉瞼と眉挙上が同時に生じることがあります。前頭筋の収縮によって眉の高さに左右差があるような時に眉の最高点の高さから1.5センチ以上上方に1単位程度注射します。眉全体が挙上している場合は、眉の最高点の高さから1.5センチ以上上方に2-3センチ離して前頭筋内側部と外側部に各々1単位注射します。

(皺眉筋)眉間に縦皺を寄せる筋肉です。眉間の痙攣がある場合には眉毛中央部より内側に1単位注射します。

(鼻根筋)鼻根に横皺を寄せる筋肉です。痙攣を認める場合には中央に1-2単位注射します。

(鼻筋)鼻翼を動かしている時に1~2単位を注射しますが、近傍の上唇挙筋が麻痺すると上唇麻痺をきたしやすい. 

(大頬骨筋) 口角を引き上げる筋肉です。外眼角から下ろした垂線と鼻尖から引いた水平線の交点が目安です。中央部へ1箇所2~5単位を注射します。

(小頬骨筋) 上唇を引き上げる筋肉です。中央部へ1箇所1単位を注射します。内側に上唇挙筋があるため上唇麻痺に注意します。

(口輪筋)口を閉じて口唇を突き出す筋肉です。口唇を外側へ動かしている時は、上下各々1箇所あたり1単位程度を極力浅く注射します。口輪筋の下層に上唇挙筋および下唇下制筋の終止部が存在するためです。

(笑筋)口角を横に引く筋肉です。中央部へ1箇所2~5単位注射します。

(口角下制筋)口角を下に引く筋肉です。中央部は下唇下制筋に影響するためわざと外側に外して1~2 単位程度を注射します。

(下唇下制筋)下唇を外転させる筋肉で顔面痙攣で注射する機会は少ないです。

 (オトガイ筋)オトガイ部に皺を寄せて下唇を突き出します。1-2単位注射します。通常の筋肉は揉まないように指導しますが、オトガイ筋に限り揉みます。

(広頚筋)下唇・口角を引き下げる筋肉です。各皺に1-2cm毎に2-4単位注射します。

 

ポイント