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眼科 脳神経外科
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脳疾患を知る

14-7
スタージ・ウェーバー症候群

概要

スタージ・ウェーバー症候群は、脳の表面を細かな血管が覆う脳髄膜の血管病変と顔面の皮膚の血管腫(正確にはport-wine stain, 毛細血管奇形)と眼圧の上昇を特徴とする生まれつきの病気です。顔面の皮膚は、三叉神経の第1、2枝の領域(おでこと頬)の皮膚に分布することが多いです。脳の脳髄膜の血管病変は、両側に認められることもありますが、一側の方が多いです。脳と顔面の症状が両方ある場合には、完全型と呼ばれ、一方の場合を不完全型と呼ばれます。

原因

明らかな病因は不明ですが、胎生5-8週目に通常ならば静脈が発生する際に消失する原始静脈叢という静脈の塊が退縮しないで残存する結果発症すると考えられています。頭蓋内では静脈灌流障害が起こるため脳血流が低下します。そのため神経症状やてんかん発作、精神運動発達遅滞が生じます。同じく静脈系灌流障害により軟部組織の腫脹やポートワイン斑が、眼においても眼圧上昇が生じると考えられています。近年、GNAQ遺伝子の変異が報告されたために、何らかの遺伝子異常が推定されました。しかしながら、静脈発生不全を説明し得るものではないため、更なる原因検索が求められています。

症状

軟膜血管腫、ポートワイン斑、緑内障の所見が重要です。しかし全ての所見が認められるわけではありません。出現する所見によってRoach Scaleと呼ばれる以下の3つに分類されています。

Type I: 顔面病変、脈絡叢病変、頭蓋内病変 、緑内障が揃う場合(classic form).

Type II: 頭蓋内病変を伴わない顔面病変のみ.緑内障が伴うこともあります.

Type III: 顔面病変を伴わない頭蓋内病変のみの場合.通常、緑内障は伴いません.

臨床的には難治性てんかん、精神運動発達遅滞、片麻痺の出現及び緑内障が問題になります。難治性てんかんは半数が抗てんかん薬ではコントロール不良であり、てんかん外科治療が考慮されることとなります。精神発達遅滞も半数に見られ、てんかん発作の重症度や軟膜血管腫の範囲に比例して出現します。軟膜血管腫直下の脳は萎縮をしていることが多く、軟膜血管腫が広い程、精神発達遅滞の程度も強くなると考えられています。脳病変の部位は、頭頂部と後頭部が多いです。症状は、病変部位によって左右され、難治性痙攣、片麻痺や半盲などの局所症状、頭痛、精神発達の遅延などがあり、片麻痺と半盲は、一過性で脳卒中に似た発作を起こします。頭痛は片頭痛様で、両側性または血管腫の部位に限局し、血管腫の対側に前兆を伴う事が多いです。MRIではガドリニウム増強において明瞭となる軟膜血管腫、罹患部位の脳萎縮、患側脈絡叢の腫大、白質内横断静脈の拡張などが認められます。CTでは脳内石灰化が見られるケースもあります。

緑内障は静脈血のうっ滞のために眼圧が上昇すると考えられ、頭蓋内軟膜血管腫が前方に位置する例では眼圧上昇が激しく失明が問題となります。後頭葉の虚血による視障害と眼球病変の併存により、総合的な判断が必要となります。

顔面皮膚のポートワイン斑は三叉神経第1枝および第2枝領域に生じることが多いです。またポートワイン斑が両側に認められる例が約10%あるのに対し、約15%では顔面血管腫を認めない例が存在します。

治療

治療は、症状の緩和に重点が置かれます。けいれん発作をコントロールするための抗けいれん薬と緑内障の治療薬を使用します。薬物治療を行っても再発する難治性けいれん発作に対す焦点切除術が必要になる場合もあります。広範に軟膜血管腫の存在する場合には手術治療も困難です。アスピリンを使用することで脳卒中のリスクが低下する可能性があることから、低用量アスピリンを使用するケースもあります。しかし、アスピリンが有効であることを示す根拠はありません。

ポートワイン母斑の色を薄くしたり消したりするために、レーザー治療を行うこともあります。緑内障には、眼圧を下げる点眼薬を用いますが、効果が乏しいときには、手術治療を行うこともあります。