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片頭痛 -前兆と予兆-
予兆
予兆とは発作前に起こる体調の変化を示すものです。発作の数時間から2日前に出現する事が多いようです。全く出現しないこともあります。予兆には興奮性の症状と抑制性の症状があります。
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興奮性の症状)
①気持ちが昂るなどの高揚感
②頭から離れない、同じ確認をくりかえしてしまう強迫観念
③焦る気持ちや、せきたてられる気持ちになる焦燥感
④光を異常に眩しく感じたり、音をうるさく感じる過敏性
⑤あくびが多く出たり、必要以上に寝てしまう過睡眠
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抑制性の症状)
①やたら疲れる疲労感
②集中力がなくなる集中困難
③肩こり、頚部のこり
④食欲低下
意識しなければ気がつかなかったり『なんか変だな』程度の感じ方として捉えられてる事が多いです。
前兆
片頭痛の分類では前兆の有無が重要になります。『通常5-20分にわたり徐々に進展し、かつ持続時間が60分未満の可逆性脳局在神経症状』と定義されています。5分から20分かけて頭痛の起こる直前または発作中に出現する症状です。可逆性という言葉は『いずれ元の状態に戻る事』ですので、症状が永続しないで60分未満に元の状態に戻るという意味です。そしてこの脳局在神経症状という言葉が一番難しいですので具体的に記します。
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①視覚症状
最も一般的なタイプの前兆で、眼に現れる症状です。閃輝性暗点として現れる場合が多いです。閃輝性暗点とは、突然視野の中央あたりにきらきらした点が現れ、ギザギザした光の波が拡がっていきます。その症状は目を閉じていても見えます。その結果、暗点を残します。視野の中で部分的に見えない部位を暗点と言いいます。5~20分ぐらいで自然に消失します。
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②感覚症状
チクチクした嫌な感覚が体の一部に出現します。半身または全身に波及したり、逆に感覚を失ったような感覚鈍麻が生じることもあります。
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③言語症状
頻度は低いですが、言葉の症状が現れる場合もあります。会話の内容に問題がある失語症と会話は正常だが呂律が回っていない構音障害があります。片頭痛の前兆は、会話の内容に問題のある失語の症状が現れる事が多いようです。
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④運動症状
手足に力が入りにくくなる脱力が局所に始まります。その脱力が徐々に広範に広がっていくケースが多いようです。半身のケースが大部分ですが、全身のケースもあるようです。
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⑤脳幹症状
脳幹とは脳の下の方にある大事な部分です。呼吸、血液循環、嚥下、睡眠や覚醒、といった生きる上で必要な活動を司る中枢です。脳幹症状を以下に具体的に記します。
1.会話は正常だが呂律が回っていない構音障害 2.回転性めまい 3.耳鳴 4.難聴 5.複視 6.運動失調 7.意識レベルの低下があります。力が入らない脱力はここには含みません。
また、見ているものが大きくなったり、小さくなったりする「不思議の国のアリス症候群」がみられることもあります。若年者、特に女児に多く、10歳以下では珍しくはないと言われています。
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⑥網膜症状
単眼性の視覚症状です。片眼だけに起きる症状です。片眼に閃輝、暗点、視 覚消失などが生じる事です。
これら①②③④⑤⑥が片頭痛の前兆になりますが、④⑤⑥は特殊な片頭痛になるため①②③とは別に考えています。前兆はこれらの症状のうち1種類の症状が出現するケースが多いです。しかし2種類以上の前兆が1回の片頭痛発作で発生する事もあります。2つ以上の前兆が出現する場合、同時に出現することはありません。はじめに現れた前兆が消失した後に、次の症状が連続して出現します。視覚症状で始まり、続いて感覚症状、その後に言語症状を生じる事が多いようです。これらの前兆は一次性頭痛である『前兆のある片頭痛』以外にも、二次性頭痛である『脳動静脈奇形』『頸動脈解離』『てんかん発作』などでも出現することがありますので注意が必要です。通常はこれらの前兆が終了する頃から片頭痛発作が出現します。
以上が予兆と前兆の説明になります。この前兆の有無によって片頭痛は大きく『前兆のある片頭痛』と『前兆のない片頭痛』に分類されています。