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小児片頭痛に関連する疾患
概念
片頭痛に関連する周期性症候群とは、以前は小児周期性症候群とも呼ばれ国際頭痛分類第3版で片頭痛に分類されています。その中に周期性嘔吐症 (CV)、腹部片頭痛 (AM)、良性発作性めまい (BPV) 、良性発作性斜頚が含まれています。以前は小児特有の疾患と考えられていましたが、成人でも発生するようです。いずれの疾患も診断の決め手となる検査はなく,、臨床経過と発作の特徴および器質的疾患の否定後に診断されます。CVの頻度は白人で2%との報告があり、国内の報告も多いです。しかしながら海外の報告でAMはありふれた疾患とされ、AMの有病率は1~4%との報告があり、BPVは海外の報告によると学童での有病率は2.6%です。しかし,ながら、AMもBPVも国内での報告は少なく概念が浸透していない可能性があります。
周期性症候群
周期性嘔吐症候群(cyclic vomiting syndrome CVS)とは数日間の嘔吐発作を周期的にくり返すが、間欠期は正常でり、数年の経過により自然治癒することを特徴としています。嘔吐はピーク時に6回/時間、傾眠、蒼白、発熱、流涎、嘔気、腹痛、食用不振、頭痛などの全身症状も加わります。30%が片頭痛に移行すると言われています。2003年の国際頭痛学会分類で周期性嘔吐症は小児に発症する「片頭痛の1つとして位置づけられ、片頭痛に移行することが多いもの」の一つとして分類されている疾患です。
診断基準
A.強い悪心と嘔吐を示す発作が5回以上あり、BおよびCを満たす
B.個々の患者では症状が安定化しており、予測可能な周期で繰り返す
C.以下の全てを満たす
1.悪心、嘔吐が1時間に4回以上起こる
2.発作は1時間-10日間続く
3.各々の発作は1週間以上の間隔をあけて起こる
4.発作間欠期には完全に無症状
5.その他の疾患によらない
診断
決め手となる検査はありません。臨床経過と嘔吐発作の特徴および器質的疾患の否定後に診断されます。
治療・予後
標準的な治療はなく輸液や制吐剤投与となります。軽症例であれば発症後2~5年程度で自然軽快することの多い予後良好な疾患でありますが、重症例では成人期まで症状の残る症例や片頭痛に移行する症例もあります。
腹部片頭痛
主に小児に認められ、中等度ー重度の腹部正中の痛みを繰り返す原因不明の疾患です。腹痛は血管運動症状、悪心、嘔吐を伴い、2-72時間持続し、発作間欠期は正常です。これら発作中に頭痛は起きません。大多数の児童は、後年片頭痛を発症します。
診断基準
A.腹痛発作が5回以上あり、B-Dを満たす
B.痛みは以下の3つの特徴の少なくとも2つを満たす
1.正中部・臍部もしくは限局性に乏しい
2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛
3.中等度ー重度の痛み
C.発作中、以下の少なくとも2項目を満たす
1.食欲不振
2.悪心
3.嘔吐
4.顔面蒼白
D.発作は未治療もしくは治療が無効の場合、2-72時間持続する
E.発作間欠期は完全に無症状
F.その他の疾患によらない
良性発作性めまい
繰り返し起こる短時間の回転性めまい発作が特徴的な疾患です。発作は前触れなく起こり自然に軽減します。
診断基準
A.BおよびCを満たす発作が5回以上ある
B.前触れなく生じ、発現時の症状が最強で意識消失を伴うことなく数分ー数時間で自然寛解する
回転性めまい発作
C.下記の随伴症状・徴候のうち少なくとも1項目を満たす
1.眼振
2.運動失調
3.嘔吐
4.顔面蒼白
5.恐怖
D.発作間欠期には神経所見および聴力・平衡機能は正常
E.その他の疾患によらない
良性発作性斜頚
反復発作性に頭部が片側に傾き、若干回旋している場合もあります。症状は自然に軽快します。幼児および乳児にみられ、生後1年以内の発症がほとんどです。
診断基準
A.年少児にみられる反復発作で、BおよびCを満たす
B.頭部が左右どちらかに傾いており、若干の回旋を伴う場合と伴わない場合がある。
数分‐数日間で自然寛解する
C.下記の随伴症状・徴候のうち少なくとも1項目を満たす
1.顔面蒼白
2.易刺激性
3.倦怠感
4.嘔吐
5.運動失調
D.発作時以外の神経所見は正常
E.その他の疾患によらない