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脳疾患を知る

5-2
未破裂脳動脈瘤とは

有病率

未破裂脳動脈瘤は『全人口の3~5%の人に存在する』と言われています。破裂して「くも膜下出血」を起こせば激烈な症状が出現して病院に受診するので、動脈瘤が発見されるのは当然ですが、破裂しなければ症状を呈さない未破裂動脈瘤疑が何故発見されるのでしょうか?未破裂の状態で見つかる動脈瘤はたまたま脳のMRI, CT検査を受けたり、脳ドックを受診したりして見つかる場合がほとんどです。その他の発見理由としては、未破裂脳動脈瘤が大きくなって脳の神経を圧迫し、神経症状が出現して発見されるケースも存在します。

動脈瘤の分類

脳動脈瘤には以下の2種類のタイプがあります。

 

  • 嚢状動脈瘤

先述した脳動脈の分岐部にできた風船状の動脈瘤です。これが最も頻度が高い脳動脈瘤です。普通成人に発症します。

 

  • 紡錘状動脈瘤

脳の血管自体が膨らんでできた動脈瘤です。破裂してくも膜下出血になるもの、脳梗塞になるもの、大きくなり脳を圧迫するもの、安定しているものなど病態の異なるいくつかのタイプがあります。本幹動脈瘤の中で有名なものは解離性動脈瘤です。

しかし、”動脈瘤”といえば、血管分岐部の嚢状動脈瘤の方をさす場合が殆どです。

好発部位

脳動脈瘤は脳底部血管(ウィルス輪)にできることが多く、中大脳動脈、内頚動脈、前交通動脈、脳底動脈などに好発します。

① 前交通動脈            (40%)

② 内頚動脈-後交通動脈分岐部       (30%)

③ 中大脳動脈            (20%)

④ 椎骨・脳底動脈           (10%)

 

大きさは径2mm程度の小さなものから30mm以上の大きなものまでできますが、75%以上は10mm未満の大きさです。

何を気にすれば良いのか?

ここで肝心な事を説明します。多くの方は検査や脳ドックで未破裂動脈瘤が発見されて、一応説明をされたものの気が動転し、整理が出来ない状態でこのページに辿り着いているかと思います。今後「このまま様子を見るのか?」または「手術を行うのか?」その判断には「動脈瘤の自然歴」と「治療の成功率」の2つの要素が重要です。

「自然歴」とは、その発見された動脈瘤が今後どのような経緯を辿るのかです。「破裂するのか?」「破裂しないのか?」この2点が一番重要ではないでしょうか。

「治療の成功率」とは、仮に今後確実に破裂すると仮定するならば、破裂する前に行うこととなる手術はどの程度の安全性が確保できるのか?

その2点につきるかと思います。破裂率が100%、破裂前に行う手術の安全率が100%であれば迷う事は何一つありません。逆に破裂率が0%ならば、これもまた迷う必要がありません。しかし実際には「破裂率」と「治療の安全率」は動脈瘤の発生した部位、大きさから手術を受ける方の年齢、全身状態、脳の状態、術者の技量、経験値と数多くの要素によって左右します。治療をするかどうかの判断は、この「自然歴」と「治療の安全性」を両てんびんにかけて常に比較しながら検討していきます。

脳動脈瘤の破裂率

無症候性未破裂動脈瘤の破裂率は、2012年に行われた5720人規模の日本人の調査 (UCAS Japan)において、全体平均 0.95%/年という結果が出ています。動脈瘤の大きさと破裂率の関係は以下になります。

3-4mmの動脈瘤  年間破裂率      0.14-0.90%

5-6mmの動脈瘤  年間破裂率      0.31-1.37%

7-9mmの動脈瘤  年間破裂率      0.97-3.19%

10-24mmの動脈瘤 年間破裂率      1.07-6.94%

25mm以上の動脈瘤  年間破裂率   10.61-126.97%

他にも破裂率が上昇する要因が複数存在します。

 

  • 動脈瘤の形状)

形がいびつであるほど破裂しやすく、bleb(動脈瘤からさらに小さいコブが出ている形状)があると1.63倍と報告されています。

 

  • 動脈瘤の部位)

前交通動脈瘤、後交通動脈瘤、脳底動脈瘤は破裂率が増す傾向にあるとされています。

 

  • 他の要素)

他にも破裂に関与する要因として高血圧、喫煙歴、女性、症候性(動脈瘤によって症状が出ているもの)、多発動脈瘤、くも膜下出血の既往、家族歴くも膜下出血 など様々な要因で破裂率の上昇があります。一方3mm未満で形が綺麗なものは破裂の心配はほとんどありませんので、過敏になる必要はないかと思われます。このように破裂率は一般的に低いのです。ですから未破裂脳動脈瘤が見つかったとしても,『すぐに手術をしなければならない』ということではありません。

注意が必要な未破裂脳動脈瘤は?

これらの結果から、日本脳ドック学会のガイドライン(2014年)日本脳卒中ガイドライン(2015年)では、未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、原則として患者の余命 が10~15年以上ある場合に、下記の病変について治療を検討することが推奨 される。

A 5~7mm以上のサイズの動脈瘤
B サイズが上記より小さくても
(B-1) 物が二重に見える、など症状の原因となっている瘤
(B-2) 前交通動脈と内頸動脈・後交通動脈分岐部の瘤
(B-3) Dome neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ

については『治療を含めた慎重な検討が必要』となっています。