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疫学・原因
疫学
脳卒中は、がん、心臓病とともに日本人の3大死因とされてきました。脳卒中の内訳で見ると1960年代初頭の脳卒中死亡の大部分は脳出血でしたが、急激にその割合が減少しています。理由は後に記載しますが脳出血の原因の大部分が高血圧だからです。高血圧治療が脳出血による死亡を優位に減少させることが分かり、国民への啓蒙に降圧剤の開発がすすみ高血圧管理が進歩したためです。それでも依然脳出血は多く、重篤な後遺症や死亡を招く原因疾患です。
原因
1 高血圧
最大の原因は高血圧です。長年の高血圧が脳の血管を蝕んでいきます。その結果、脆くなった血管が破れて出血するものと考えられています。脳の血管は表面を太い動脈が走り、内部へは細い動脈が枝分かれして走っています。長年の高血圧は、この脳の内部を走る細い血管を蝕み、細動脈硬化,リポヒアリノーシスなどと呼ばれる血管の構造上の変化を起こし、簡単に破れる血管に変えてしまうのです。高血圧の詳しいお話は今後高血圧の章で解説します。
2 脳アミロイドアンギオパチー
アミロイドという蛋白質が脳血管にたまって起こる血管障害で、繰り返し脳出血を起こす原因になる疾患です。高齢者に多い病気で認知症の原因にもなります。アミロイドアンギオパチーは、社会の高齢化に伴い注目される疾患ではありますが、治療法はいまだに確立されていません。
3 脳動静脈奇形
脳動静脈奇形は脳の中にできた「血管の塊」のようなもので、脳内の動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、塊(ナイダスと呼ばれます)となっている状態の血管の奇形です。胎児期に発生し、20~40歳代の若者の脳出血の原因のひとつです。出血を起こさなければ無症状の事も多いですが、度重なる片頭痛の原因になっている事や閃輝性暗点といい発作的に生じる視野狭窄、てんかんの原因になっていることがあります。ナイダスは正常な血管に比べて壁が薄く、破れやすいです。破れると脳出血、くも膜下出血となります。
4その他
その他の原因としてくも膜下出血の原因となる動脈瘤は通常脳の外に破裂しますが、脳内に向かって破裂する事もあります。この場合は脳出血となります。また抗血小板薬、抗凝固薬を内服している事が原因になる場合や、肝機能障害、膠原病、妊娠が原因になる場合もあります。