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降圧ー薬物療法 総論ー
生活習慣改善のみで目標血圧に到達できない場合は降圧薬の使用が必要となります。ここから先はお薬のお話となります。降圧薬には数多くの種類があり、そのなかから各々の血圧値や全身状態、その他の病気の有無などによって最適な薬を決めていきます。特に先述した脳、心、腎臓、血管の状態の評価と糖尿病合併の有無によって選択する降圧剤と目標血圧は大きく変わります。よって臓器障害に見合った薬の選択は重要な意味を持ちます。目標血圧に到達するにはいくつかの薬を組み合わせなければならないこともありますが、近年は2種類以上の成分が含まれる配合剤が登場しています。なるべく薬の量が増えないように工夫が可能です。薬の選択基準、内服の間隔などはしっかりと主治医の先生に相談をして厳守して下さい。
第一選択薬は何にすべきか?
さて降圧剤を使用することが決まれば、数多くの降圧剤から一つの降圧剤を選択します。数多くの降圧剤の中でも作用機序から大きく分類すると代表的なお薬は
①カルシウム拮抗薬
②ARB
③ACE阻害薬
④αブロッカー
⑤βブロッカー
⑥αβブロッカー
⑦利尿薬
⑧MR拮抗薬
などがあります。降圧治療の最終目的は、脳心腎血管病発症予防です。主要降圧薬のなかから1剤を選んで少量から開始することとなります。副作用の問題や、目標血圧に単剤投与で到達出来ない場合は増量、降圧剤の変更、もしくは他剤療法となります。ただしACE阻害薬やARB以外の降圧薬は、増量した場合、副作用の出現頻度が増加します。
特別な事情がない限り、最初に選択すべき降圧薬は,カルシウム拮抗薬・ARB/ACE阻害薬・利尿薬の中から選択します。ARBとACE阻害薬は同列に記載しましたが、積極的適応疾患はほぼ同じで合併疾患、副作用の有無、忍容性の問題などで細かい選択しますが、使い分けは後述します。どちらも妊娠時には使用することは出来ません。
-降圧剤選択の原則-
①脳心血管抑制効果は、降圧度によって決まる
②Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・少量利尿薬・β遮断薬を主要降圧薬とする
③合併症有無により適切な降圧剤を選択する
④積極的適応がない場合はCa拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・利尿薬から選択する
⑤1日1回投与を原則、1日2回投与が好ましいこともあり
⑥緩徐な降圧が望ましいが、III度高血圧や危険因子保有の場合は、速やかな降圧が必要
⑦コントロール不良時は2,3剤の併用を行う
-併用療法の基本-
①2剤併用:Ca拮抗薬+RA阻害薬、RA阻害薬+利尿薬、Ca拮抗薬+利尿薬が推奨
②3剤併用:Ca拮抗薬+RA阻害薬+利尿薬が推奨
③配合剤はアドヒアランス改善に有効
-併用療法の組み合わせ-
Ca拮抗薬+RA阻害薬
脳心血管イベント高リスク群・後期高齢者に推奨
RA阻害薬+利尿薬
体液貯留を認める患者に推奨
Ca拮抗薬+利尿薬
心筋梗塞、脳卒中発症リスク低減
ACE阻害薬+ARB
単独投与よりも透析導入、死亡率増加が見られ推奨されない