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中核症状ー失認ー
体の感覚を司る器官(目・耳・鼻・舌・皮膚等)に問題がないにもかかわらず、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感に関係する認知能力が正常に働かなくなる状態を「失認」といいます。
(視覚の失認)
- 視覚失認
視覚失認は、視力が保たれているのに物品が何か分からなくなる事です。視力が保たれているのにも関わらず物品の呼称・使用法・分類が分からなくなります。視力は保たれているのに、見せられた物品の名前を答えられません。「鍵」を見せると「ハサミ」と答えたり、「見えん」「ハサミじゃないかな?」などと答えることが多いです。対象物の模写が可能か否かによって純覚型と連合型に分類され、損傷部位が後頭葉、一次視覚野、脳梁膨大部、海馬と予測されますがこの場ではこれ以上詳しく記載しません。
- 相貌失認
「顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、もって個人の識別が出来なくなる症状」と定義されています。人は顔を覚えるために、目・鼻・口の特徴を瞬時に判別し、無意識のうちに分類して記憶しています。これら顔領域の認識は紡錘状回、上側頭溝、扁桃体が働いています。この部位の障害で人の顔だけが分からない相貌失認が生じます。
- 地誌的見当識障害
明らかな認知症や半側空間無視のように広範な高次機能 障害を伴わないにもかかわらず、道に迷う状態を地誌的失見当識と言います。認知症の方が家に帰れなくなるのは全般的な認知機能の低下であり、半側空間無視の方が道に迷うのは地誌的情報の処理障害と説明できます。慣れた街並みが分からなくなる街並失認や自己の位置を定位することが困難である道順障害があります。街並失認は海馬傍回後部、舌状回前部、道順障害は脳梁膨大部から頭頂葉内側部にかけての損傷が指摘されています。
(聴覚の失認)
- 聴覚失認
聴力は保たれてるにも関わらず、音を聞いても分からないが、見たり触ったりすると何かがわかるのが聴覚失認です。
(ゲルストマン症候群)
ゲルストマン症候群とは縁上回、角回を中心とした 頭頂葉障害から、手指失認、左右失認、失書、失算の2つの「失認」が構成要素とな理、4つの症候を呈る病態です。一般的には脳梗塞、脳出血などの脳損傷の後遺症として典型例が発生します。
①手指失認・・・指定された指を示せない。個々の指を手で掴んだり、呈示したり、名称を言うように指示されてもできないです。
②左右失認・・・左右がわからなくなります
③失書・・・・・自発的に字を書くことも書き取りもできなくなります。
④失算・・・・・暗算も筆算もできなくなります
(触覚)
- 触覚失認
基本的感覚(触覚、痛覚、温度覚、深部知覚など)に障害がないにも関わらず、触ることでは物品を認知できない事です。
- 病態失認
他の人からみて明らかな異常な症状があるにも関わらず、自身はその症状に気付いていなかったり、その症状を軽くみている症状です。