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変容性片頭痛-慢性片頭痛-
変容片頭痛
①変容性片頭痛
変容片頭痛は薬物乱用の有無によって
A.薬物使用過多による頭痛
B.慢性片頭痛
に分類されています。
片頭痛は持続が 4~72 時間という短期時間の発作性の疾患です。しかし片頭痛発作を長期間繰り返すうちに片頭痛発作特有の「拍動性頭痛」「光・音過敏」「悪心・嘔吐」といった本来の特徴が徐々に消えてなくなり、あたかも緊張型頭痛のような持続性のダラダラした頭痛に変化してくきます。変容片頭痛には上述の2つのタイプがあります。
1つ目は、鎮痛薬を連日使用した結果おきてしまう「薬物使用過多による頭痛」です。
2つ目は、頭痛頻度が次第に増加し、本来の片頭痛の姿が変容する「慢性片頭痛」です。
A.薬物使用過多による頭痛については前の章で詳しく解説しました。
B.慢性片頭痛 ここでは慢性片頭痛を解説します。
慢性片頭痛
慢性片頭痛は、元々は片頭痛の既往があります。そして大多数は「前兆のない片頭痛」です。ある時期を境に、頭痛の頻度が増すとともに「拍動性頭痛」「光・音過敏」「悪心・嘔吐」といった本来の片頭痛の特徴が消えていき、あたかも緊張型頭痛のような持続性のダラダラと続く頭痛に変化していきます。一番多いパターンは典型的な片頭痛から、緊張型頭痛の要素も加わった混合性の頭痛に変化します。この慢性片頭痛の有病率は 2%前後で、発作型の片頭痛から慢性片頭痛に移行する年間発症率は約2.5%と言われています。 慢性片頭痛に移行する危険因子は、薬物乱用・いびき・ストレス・うつ・不安・環境の変化・慢性疼痛疾患など共存症の関与が指摘されています。
「思い返してみると以前は月に数回、発作的に強度・拍動性、嘔気や光・音過敏がある特徴的な頭痛だったのがいつのまにか連日続く特徴が一定しない頭痛に変化している」
このような頭痛は慢性片頭痛を疑うべきです。
診断基準
A 緊張型または片頭痛(あるいはその両方)が月に15日以上の頻度で3ヵ月を超えてB,Cを満たす
B 1.1 「前兆のない片頭痛」の診断基準B-Dをみたすか、1.2「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が、併せて5回以上あった患者におこる
C 3 ヵ月を超えて月に8日以上で以下のいずれかを満たす
すなわち,前兆のない片頭痛の痛みの特徴と随伴症状がある
1 . 以下の a~d のうちの少なくとも 2 つを満たす.
(a) 片側性(b) 拍動性(c) 痛みの程度は中程度または重度(d) 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により 頭痛が増悪する、あるいは頭痛のため日常的な動作を避ける
そして、以下の a または b の少なくともひとつ
(a)悪心または嘔吐(あるいはその両方)(b)光過敏 および 音過敏
2. 発作時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンまたはエルゴタミン製剤で改善
Dほかに最適なICHD-3の診断がない
「慢性緊張型頭痛」との鑑別点
次に解説する「慢性緊張型頭痛」との鑑別点は
①片頭痛の既往がある
②頭痛持ちの家族がいる
③片頭痛的な要素を多く認める
④神経症状、胃腸症状も多い
⑤月経期の増悪があった
⑥妊娠中の軽快があった
⑦片頭痛治療薬の効果がある
これらの点です。決定打になる鑑別点が見つからない説明ですが、どこかに片頭痛らしさが見え隠れします。また昔の頭痛を詳しく聞くと典型的な片頭痛の特徴を話し出してくれる事が多いので、鑑別にはさほど困らないかと思います。