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持続性片側頭痛
特徴
持続性かつ厳密に一側の頭痛で、頭痛と同側の結膜充血、流涙、鼻閉、鼻漏、前額部および顔面の発汗、縮瞳、眼瞼下垂または眼瞼浮腫(あるいはその両方)を認め、落ち着きのなさや興奮した様子を伴う事がある。この頭痛にはインドメタシンが絶対的な効果を示す疾患です。群発頭痛に似ていますが、大きく異なるの点は持続性とインドメタシン著効です。『1日中持続する連日性の左右どちらかの頭痛で,頭痛増悪時に眼の充血や涙、鼻水、瞼が腫れぼったくなる症状のどれかが出現し、インドメタシンが著効する』疾患です。
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(疫学)
40代に多いとの報告されています。男女比は1:3です。
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(痛みの特徴)
①持続性片側性の頭痛と②それに重なって生じる増悪発作の2種類が存在することが最大の特徴です。
①持続性片側性の頭痛
緊張型頭痛に似た痛みです
ズキズキ・ヒリヒリ・ピリピリ・重いなど様々です
強度は軽度~中等度で日常生活は営めます
体動による悪化などはありません
②激烈な増悪発作
群発頭痛のような最悪な痛みの発作が起きます
過去に経験した痛みの中で最悪といいます
持続時間は数時間ー数日と一定していません
発作頻度は一日に数回から数ヶ月に一回と様々です
半数は夜間に増悪発作が起きるようです
痛みは①ずっと連日続く持続性の片側性の頭痛と②それに重なって生じる激烈な増悪発作の2種類が存在します。①背景にあるずっと続く持続性の片側の頭痛は緊張型頭痛のような頭重感と表現される事が多いです。しかし中には『刺されるような痛み』『ズキズキする痛み』と表現されるケースもあり様々ですが、日常生活に支障がない程度の頭痛です。その経過中に②の激烈な増悪が繰り返されます。②背景にある頭痛に激烈な増悪発作が加わります。群発頭痛に似た最悪な痛みで、約半数の方が過去に経験した痛みの中で最悪といいます。
患者は①の背景の頭痛に関しては、日常生活を障害するほどの頭痛ではないため医師には②の悪化した激烈な頭痛のみを訴える事が多いです。そのため正確な診断の遅れに繋がる事があるので注意が必要です。痛みが2種類あることに気がつけば診断は容易です。群発頭痛様頭痛を疑ったら「持続性の背景の頭痛」がないかという質問を1回は確認した方が良いでしょう。よくわからないと言ったら「今現在軽い頭痛はないか?」確認しましょう。ある場合は持続性片側頭痛の可能性があります。
診断基準
A.B–Dを満たす一側性の頭痛がある
B.3か月を超えて存在し、中等度‐重度の強さの増悪を伴う
C.以下の1項目以上を認める
①頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
a)結膜充血または流涙(あるいはその両方)
b)鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
c)眼瞼浮腫
d)前額部および顔面の発汗
e)前額部および顔面の紅潮
f)縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
②落ち着きのない、あるいは興奮した様子、あるいは動作による痛みの増悪を認める
D.治療量のインドメタシンで完全寛解する
E.ほかに最適なICHD-3 の診断がない
(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)
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自律神経症状
自律神経症状とは具体的に説明しますと、頭痛と一緒に以下のような症状が出現します。ただし自律神経症状は、発作性片側頭痛や群発頭痛ほど著明ではありません。
①結膜充血 目の白目の部分が充血します
②流涙 涙が流れます
③鼻閉 鼻が詰まった感じがします
④鼻漏 鼻水が出ます
⑤眼瞼浮腫 目の瞼がむくみます
⑥前頭部および顔面の発汗
⑦縮瞳 瞳が小さくなります
⑧眼瞼下垂 瞼が下がります
これらの症状が発作中に頭痛が起こる同側に起きます。
しかし頭痛が激烈すぎて、これら症状に気づいていないケースも多いです。群発頭痛は90%近い方が自律神経症状を訴えますが、持続性片側頭痛は自律神経症状を訴えない方が多くいます。訴える場合は患側に自律神経症状を伴います。最も多く見られるのは流涙です。次いで結膜充血、眼瞼下垂、鼻閉。それよりも『目の中に何かがある・砂・石が入った』と訴える方が多いです。他のTACsではこういう言い方はしないので、この表現を聞いたときは注意が必要です。
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発作頻度
非常に個人差があります。激烈な悪化のパターンもなく個人個人全く異なった報告が多いです。1日に数十回悪化するケースから数ヶ月に1回というケースもあります。悪化の持続時間も数秒から数週と幅があります。約半数で夜間に悪化すると言われています。
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他の特徴
落ち着きのない、あるいは興奮した様子、あるいは動作による痛みの増悪を認める事が多いです。片頭痛様の特徴を持つ事があります。増悪時は約半数の患者が片頭痛の診断基準を満たしてしまうという報告があります。実際に国際頭痛分類第3版のコメントにも『光過敏・音過敏など片頭痛で見られる症状がしばしば認められる』と記載されています。ストレス。アルコール、不規則な睡眠が誘引要素です。
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分類
24時間以上の寛解期で中断される寛解型と寛解期を認めない非寛解型に分類されます。
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二次性持続性片側頭痛
外傷後が多く、次いで開頭術後。その他頭蓋内腫瘍、プロラクチノーマなどが報告されています。
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治療
持続性片側頭痛は、インドメタシンに完全に反応します。25-300mg/日の用量で使用しますが、多くの場合150mg/dayまでで、疼痛コントロールが可能と言われています。24時間以内に痛みが完全に消失する割合は10%程で、半数は1週間以上の時間がかかります。完全消失には4週間ほど時間がかかるとの報告もあります。インドメタシンは時間と共に減量が可能となることが多いですので、漫然と投与を続けずに減量のタイミングを探るべきです。他の有効な治療薬としては,セレコキシブ 、ガバペンチン、トピラマートの報告が多いです。他にもピロキシカム,アミトリプチリン,ベラパミル、イブプロフェンなどの報告例が散見されます。