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短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
特徴
厳密に一側性の中等度から重度の頭痛発作が数秒ー数分間持続します。発作の頻度は1日に1回以上あり、通常顕著な同側眼の流涙及び充血が合併する疾患です。この疾患は同側眼の結膜充血と流涙両方を合併するSUNCTとどちらか一方を合併するSUNAに分類されます。群発頭痛と似ていますが、持続時間が違います。群発頭痛は15分ー180分の持続に対して、数秒から10分以内の持続時間です。群発頭痛は15ー180分、発作性片側頭痛は2ー30分、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作は1秒ー10分の持続時間です。群発頭痛と発作性片側頭痛は15ー30分の発作時間が重ねっていましたが、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作は群発頭痛とは重なりませんが、発作性片側頭痛とは2ー10分の持続時間が重なります。『左右どちらかの眼部中心に1秒から長くて10分の短い劇痛が出現して、眼の充血や涙、鼻水、瞼が腫れぼったくなる疾患』です。痛みのパターンが単発性、多発性、鋸歯状パターンの3種類あります。それぞれ「ズキッ」「ズキッズキッズキッ」「痛い中でズキッとする痛みが周期的に出現」するようなパターンです。鋸歯状パターンの場合は発作時間が長く感じられるために群発頭痛と誤診しやすいので注意が必要です。群発頭痛では疼痛の強さが常に一定であるのに対して、鋸歯状パターンのSUNCT・SUNAでは疼痛の強さに強弱がある点が臨床的な鑑別点になります。また、群発頭痛で効果を示すスマトリプタンがSUNCT・SUNAで無効なため経過を診ていく過程で気づくこともあります。また三叉神経痛と鑑別が難しいこともありますが、各々の発作が皮膚刺激に対する不応期を伴う三叉神経痛とは不応期なしに誘発される点で異なります。流涙,結膜充血といった自律神経症状は SUNCT の診断基準に掲げられているので、本来は容易に気付かれる症候です。しかし、SUNCT が三叉神経痛と診断されることが稀ではないようです。流涙,結膜充血といった自律神経症状に本人が全く気づいていない場合はSUNCTの診断が困難で短い激痛が出現する三叉神経痛と診断してしまうのはやむ得ない場合もあります。次に SUNCT は、頭痛と自律神経症状を同時に発症するのか、あるいは一方が他方に先行して出現するのかが問題です。
診断基準
A.B-Dを満たす発作が20回以上ある
B.中等度‐重度の一側性の頭痛が、眼窩部、眼窩上部、側頭部またはその他の三叉神経支配領域に、単発性あるいは多発性の刺痛、鋸歯状パターン(saw-tooth pattern)として1‐600秒間持続する
C.頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
①結膜充血または流涙(あるいはその両方)
②鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
③眼瞼浮腫
④前額部および顔面の発汗
⑤縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
D.発作の頻度が1日に1回以上である
E.ほかに最適なICHD-3 の診断がない
日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版
短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT・SUNA)も群発頭痛と同じく発作頻度で分類されます。発作頻度によって反復性SUNCT・SUNAと慢性SUNCT・SUNAに分類されます。反復性SUNCT・SUNAは発作が7日ー1年間続く群発期があり、群発期と群発期の間には3ヶ月以上の寛解期があります。慢性SUNCT・SUNAは寛解期がないか、または寛解期があっても3ヶ月未満です。
治療
SUNCTは難治性頭痛で、長期経過や転帰は不明な点が多いです。様々な治療介入が報告されいますが、多数例の報告はありません。薬物療法ではガバペチンをはじめ、ラモトリギン、トピラマートなどで有効例が報告されています。ラモトリギンとリドカイン静脈注射が最も有効と言われております。内服薬開始後は、頭痛発作に加えて、自律神経症状も軽快、消失することが多いようです。薬物抵抗例には外科的治療も行われます。三叉神経節熱凝固、γナイフ、微小血管減圧術などが行われています。