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ボトックス外来(保険診療)
(ボトックスとは)
ボトックスとは、A型ボツリヌス毒素を有効成分とする骨格筋弛緩剤です。末梢の神経筋接合部における神経筋伝達を阻害することにより筋弛緩作用を示します。ボツリヌス毒素製剤は神経筋接合部で神経終末に作用し、アセチルコリンの放出を抑制します。これによりアセチルコリンを介した筋収縮が阻害され、筋の攣縮および緊張を改善します。ボツリヌス菌そのものを注射するのではないため、ボツリヌス菌に感染する心配はありません。
効果は数日後より現れ始め、1ヶ月目くらいにピークを迎えます。 通常3~4ヵ月間効果が持続し、その後効果は徐々に消退してゆきます。 よって、継続した治療を希望される場合は追加注射をします。
現在、国内のボトックス治療は保険制度内で治療出来る治療と保険制度は使用出来ない自費診療治療と対象となる疾患が異なります。
・保険診療の対象疾患
眼瞼痙攣 |
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片側顔面痙攣 |
原発性腋窩多汗症 |
上肢痙縮・下肢痙縮 |
・自費診療の対象疾患
原発性手掌多汗症 |
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前頭皺 |
眉間・目尻の表情皺 |
バニーライン・ガミースマイル・梅干し皺など |
咬筋注射による小顔効果 |
(ボトックス治療をお受けになるためには)
適応となる疾患が確認され、重症筋無力症,ランバート・イートン症候群,筋萎縮症,側索硬化症などの既往がない場合に治療が受けられます。
また症状を引き起こしている原因が脳腫瘍や脳動脈瘤などの場合はボトックス治療の適応ではなく手術が優先されます。他に薬に対するアレルギーや過敏症がない場合に限ってこの治療が可能となります。
ボツリヌス療法は、指定された医療機関に限って受けられます。診察を受け、医師が治療内容、薬の使用量を決定し、注射予定日を予約し、数日後、医療機関に薬が届けられてはじめて、治療が受けられます。
なお、この薬は使用する前の準備が必要な上、医療機関に長時間保存することもできません。予約した治療日時は、必ず守るようにしてください。
(副作用について)
ボトックスの投与量が多かったり、注射液が必要な範囲外にまで拡散してしまうと、抑制させたくない筋肉まで動きが制限されて表情が不自然になってしまうなどが起こる可能性があります。
これらの症状は一過性です。 注射してから1ヶ月間はボトックスの作用が強く出る時期ですので、目が開け難い・閉じ難い状態になることも多いのですが,効果の減弱に伴って効き過ぎ症状も楽になるので心配しないで下さい。 効きすぎを避けるために、次回の注射時には注射箇所を減らすことも出来ますが、その分、ボトックスの効果も早く切れるようになります。 ですので、初回は原則通りに注射し、2回目以降は患者様と相談しながら注射箇所を増減してゆきます。
注射には非常に細い針を用いますが、それでも一定の確率で皮下血腫となることがあります。これに対しては特に治療の必要はなく、1週間以内に自然に消失していきます。
皮下出血 |
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目が開き難い |
目が閉じ難い |
口が閉じ難い |
(保険診療で行うボトックス治療の流れ)
1)診察・症状に応じた検査
2)投与部位と投与単位の決定・施術日の決定・同意書の作成・予約
保険診療で用いられるボトックスはグラクソ・スミスクライン製に限られています。
グラクソ・スミスクライン社の同意書にサインを頂いた上で投与日を決め、事前登録を行った後に納品されます。在庫管理が出来ないお薬のため同意書・予約なしでの投与は行えません。
・投与日は火曜日・水曜日・金曜日の午後の予約に限られます。
3)投与方法
目標とする筋肉に細い針で筋肉注射をします。事前に麻酔クリームを塗布し、お顔への注射の痛みを緩和する場合もあります。注射にかかる時間は10分くらいです。眼瞼痙攣の場合、上瞼の両外側(中央は避ける)に2ヶ所、下瞼に4ヶ所が基本ですが、痙攣の状態によって調整もします。 片側顔面痙攣の場合は、眼の周囲に加えて眉間、口角など、攣縮が強く起こる部分にも適宜注射します。各疾患によって投与部位・投与量は異なるため、詳しくは各疾患の説明ページに記載しております。
4)帰宅後の注意
注射液が必要な範囲外にまで拡散してしまうと、抑制させたくない筋肉まで動きが制限されて表情が不自然になってしまうなどが起こる可能性があります。そのため、下記のことにご注意ください。
・当日
注射部位にできるだけ触れないよう心がけてください。
洗顔もできれば避けるか、注射部位は触れないようにすませます。
・注射後、数日間
強くマッサージしたり、シャワーなどの圧をかけるのは厳禁です。
5)ボトックスの効果確認・副作用のチェックのため投与2週間後頃に受診となります。
診察を行い、次回投与時期及び投与部位・投与量を決めていきます。
(費用について)
使用される単位量によって異なります。ボトックスは非常に高価な薬剤です。
医療費助成金制度を利用出来る場合もありますので、詳しい費用はお問い合わせ下さい。
各疾患による投与単位目安(薬価の目安です・診察料・検査料は別となります)
(疾患) | (目安となる単位量) | (1割負担目安) | (3割負担目安) |
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眼瞼痙攣 | 50単位 | 4000円 | 12000円 |
顔面痙攣 | 50単位 | 4000円 | 12000円 |
原発性腋窩多汗症 | 100単位(左右) | 7000円 | 20000円 |
上肢痙縮 | 150-200単位 | 18000円 | 52000円 |
下肢痙縮 | 200-300単位 | 21000円 | 60000円 |