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眼科 脳神経外科
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脳疾患を知る

10-2
脳血管性認知症ー原因ー

65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率は2025年には約700万人、5人に1人になると見込まれています。65歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主原因の第1位は 「脳血管疾患」が17.2% と最多で、次いで「認知症」16.4%となっています。認知症の最大の原因はアルツハイマー型認知症であり、第二位は脳血管障害によって引き起こされる脳血管型認知症となります。また昨今の報告によると、アルツハイマー型認知症の増悪因子として血管性危険因子が注目され、糖尿病、高血圧、脂質異常といった血管危険因子の管理が脳卒中や全身の脳・心・腎・下肢の血管疾患予防だけではなく認知症予防にも有効と報告されています。報告された脳血管障害の原因となる高血圧・糖尿病・脂質代謝異常・高インスリン血症・喫煙さらには心房細動すらアルツハイマー型認知症の関連を指摘されております。

脳血管型認知症と脳血管障害の因果関係に関しては、病変の部位とサイズが症状に説明がつくことです。病変の部位とサイズとはCTやMRIなど画像所見における血管の支配領域や程度を示していますが、病変領域として大血管の閉塞と小血管病に分類されています。大血管と小血管は、解剖学的特徴から病態や病理像が大きく異なります。

脳小血管病とは

脳の動脈は太い大動脈から小ー最小ー毛細血管となります。頸動脈、中大脳動脈など脳主幹動脈が脳大血管と総称される一方で脳細動脈から毛細血管は脳小血管と総称されています。脳小血管に病変を来たす最大の原因は、高血圧です。高血圧が細小血管を蝕み、細動脈硬化、血管壊死、硝子様変性といった変化を起こします。細小動脈は主として脳深部領域、基底核領域に栄養しているためこれら深部領域に病変を起こします。脳小血管病は、無症候性ラクナ梗塞、白質病変、微小出血、血管周囲腔拡大に分類されます。

 

・無症候ラクナ梗塞

脳細動脈が高血圧による細動脈硬化により閉塞したものですが、運良く重要な機能を持っていない部位に梗塞が起きたか、サイズが小さく重要な部位に絡まずに済み無症状で経過したものです。ラクナ梗塞について詳しくは https://kuwana-sc.com/brain/523/ をご覧下さい。

 

・白質病変

MRIのFLAIRという撮影条件で白く散在する斑点として現れ、進行すると塊となって描出されます。慢性脳虚血性変化といいます。脳の血の巡りが悪くなり、脳の毛細血管に血液が流れず変化した部分と考えられています。長期間の高血圧や不十分な高血圧管理は、脳の細い動脈に動脈硬化をきたします。その結果、脳血管は弾力を失い、内腔は狭くなります。 そして血管から水分が漏れ出し斑点として現れます。軽微な白質病変はほとんどの高齢者で観察されますが、白質病変が重症化すると各種の神経症状を呈すると考えられています。

白質病変について詳しくは https://kuwana-sc.com/brain/690/ をご覧下さい。

 

・微少出血

一般のMRI撮影、CT撮影では診断は出来ません。非常に小さく、症状を出すことはほとんどありません。MRIのT2*画像という撮影法で5mm未満の低信号病変として検出されます。微小出血にも高血圧性血管病変を背景とした脳深部、基底核領域のものと大脳皮質下に多発性に認められるアミロイド血管症を背景にしたものの2種類が存在します。脳血管の脆さのバロメータを意味し、次は大きな脳出血になる可能性があります。微少出血の有る人は、無い人と比べて脳卒中を生じる可能性が約25倍ほど高くなるという報告もあります。

 

・血管周囲腔拡大

MRI画像で辺縁明瞭、整形で均質、通常大きさが3~5mm未満でT2強調像で高信号、T1強調像で等~低信号、FLAIRで等~低信号で、辺縁に高信号を伴わないものです。血管周囲腔の拡大が集簇して、基底核全体にびまん性に淡い高信号=etat cribleと表現されます。海馬では側脳室下角内側の歯状回とアンモン角CA1の間に好発し、しばしば多発性、両側性です。従来Virchow-Robin腔の拡大であって臨床的意義が薄いものと考えられていましたが、近年認知機能低下との関連性が報告されています。脳細動脈が血管硬化に伴い蛇行し、そのため血管を取り囲むVirchow-Robin腔が拡大し、円形あるいは卵円形の低信号域として検出されます。