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前頭側頭型認知症ー治療ー
非薬物治療
初期にはマンツーマンの対応が望ましいと言われています。行動障害型前頭側頭型認知症の行動の特徴を利用した行動療法的アプローチや行動変容技術を用いて、社会的に許容可能な行動への置き換え(ルーティン化)療法が提唱されています。ルーティン化療法とは、前頭側頭型認知症の特徴的行動ある、同じことを繰り返す「常同行動」や「被影響性の亢進」を利用して「困った習慣」を「問題のない習慣」に変えてルー ティン化する作業療法的アプローチです。アルツハイマー型認知症と比較すると前頭側頭型認知症は見当識、エピソード記憶、手続き記憶、視空間認知力は比較的保たれているのですが、上手に能力を発揮できない状況に置かれています。ひとつの要素に拘る特徴を活かして、作業療法に結びつけます。
薬物治療
アルツハイマー型認知症(AD)の進行を遅らせる薬である抗認知症薬のドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンは、進行を遅らせる効果があるか不明です。むしろ精神症状を悪化させるという報告もあります。メマンチンには神経保護作用があり、精神症状などに有効という報告もありますが十分な検討はされていないのが現状です。
脱抑制、衝動性、攻撃性など、様々な精神症状を呈することが多い疾患のため介護が困難なケースが目立ちます。それらの症状を緩和する必要がある場合には、幻覚妄想、不穏、興奮を軽減する薬(抗精神病薬)や寝つきを良くし睡眠を維持する薬(睡眠薬) の投与が必要になります。反復する行動(常同行動)や食行動異常などに対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が有効と言われています。現在FTLDの行動障害を改善する目的で選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の使用のみが推奨されている唯一のお薬です。ただしSSRI、トラゾドン、アンフェタミンは何らかの行動異常を改善する可能性があるが、認知機能の改善を見込むことは出来ません。
オキシトシンは24単位の経鼻投与に対してNPI行動スコアを改善した報告があり、大規模試験の準備中です。