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前頭側頭型認知症ー原因ー
正直私には難しいお話ですので上手に解説できません。一応、解説を試みますが自信がないので興味ある方は成書を参考にして下さい。まずアルツハイマー型認知症を含めた他の認知症においても「タウ」という物質が必ず登場します。まず「タウ」を理解しないと話が進まないので繰り返しになりますが、「タウ」の解説を行います。
「タウ」と「タウオパチー」
神経細胞は情報処理装置としての特徴を備えています。形から見た特徴は、情報を受け取る突起(樹状突起)と情報を送り出す突起(軸索)を持つ点です。この軸索の骨格を形成しているのは微小管という物質です。微小管同士の結合は軸索の安定化に大きな影響をもたらしており、その結合の安定性に担っているのがタウ蛋白質です。
「タウ」・・・神経細胞の軸索の骨格である微小管を安定させている物質
タウは、リン酸化を受けることによって微小管への親和性が低下し、微小管を安定させている力を失ってしまい微小管はバラバラに分解されます。その結果、微小管から解離した不溶性のタウが神経細胞内に蓄積します。これがタウオパチーです。
タウは選択的スプライシングによって6つのアイソフォームが存在し、微小管結合部位が3カ所のもの(3リピートタウ)と4カ所のもの(4リピートタウ)が存在します。そして疾患との関連では3リピートタウが主にたまる疾患、4リピートタウが主にたまる疾患、その両者がたまる疾患に分類されます。両者がたまる疾患の代表はアルツハイマー型認知症です。神経原線維変化型認知症もこれに含まれます。3リピー トタウが主にたまる疾患はPick 病です。4リピートタウがたまる疾患には嗜銀顆粒性認知症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症が含まれます。
「タウオパチー」・・・タウがリン酸化されると力を失う。結果、微小管を安定化させる事が出来なくなりバラバラに壊れます。その結果タウは微小管から解離し不溶性の凝集体を形成します。タウには3リピートタウおよび4リピートタウが存在し、蓄積するタウの種類によって疾患が異なります。
FTLDとタウオパチー
前頭側頭型認知症には先述した異常タンパク質「タウ」の蓄積をする疾患以外にも、異常なタンパク質の蓄積を認める層が存在しました。2006年以前はその郡をタウ陰性のFTLDやFTLD-Uと呼んでいました。ちなみにFTLD-Uでは大脳皮質ニューロンに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)では運動ニューロンと大脳皮質ニューロンにユビキチン化した封入体が出現しています。ちなみに前頭側頭葉変性症(FTLD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の合併はしばしば経験されます。その疑問に対して2006年にある発見がありました。FTLD-Uの大多数例の封入体の構成蛋白はDNA/RNA結合蛋白のTDP-43という物質の存在が判明しTDP-43 proteinopathyと呼ばれるようになりました。この時期よりDNA/RNA結合蛋白の研究が進み、FTLD-Uの一部はユビキチン化封入体の構 成蛋白がFUSであることが判明してFTLD-FUSと呼ばれるようになりました。これらの発見によって混沌としていたFTLDの分類が蓄積されているタンパク質で分類される事となったのです。実際には前頭側頭葉変性症では、タウの異常を伴う症例が約45%、TDP-43の異常を伴う症例が約45%、FUSの異常を伴う症例が約5%と言われています。実際の分類は以下の表となります。
「TDP-43プロテイノパチー」・・・TDP-43は、不均一核内リボ核酸タンパク質と呼ばれるタンパク質の一種です。このTDP-43が過剰にリン酸化して細胞内やグリア細胞内蓄積したものをTDP-43プロテイノパチーと呼びます。近年、孤発性筋萎縮性側索硬化症もTDP-43プロテイノパチーに属することが判明しました。
さてここまでの解説で前頭側頭型認知症は症状からの分類と病理所見からの分類の2つの分類があることが理解できたかと思います。さてこれら症状からの分類と病理からの分類は関連はあるのでしょうか?前頭側頭葉変性症は、臨床的に(行動異常型)前頭側頭型認知症、意味性認知症、 進行性非流暢性失語症に分類されます。これらと病理所見は1対1対応はしておりません。(行動異常型)前頭側頭型認知症では、タウオパチーとTDP-43プロテイノパチーがそれぞれ45%程度、アルツハイマー病理が10%程度の割合です。意味性認知症では主にTDP-43プロテイノパチーが、進行性非流暢性失語では主にタウオパチーが多数を占めています。