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脳疾患を知る

2-2
認知症専門医による「もの忘れ外来」(診療の流れ)

もの忘れ外来

認知症は、何かの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態をいいます。そして認知症が進行すると、だんだんと理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになります。老化による物忘れとは異なります。症状としては①記憶障害を軸とする中核症状と②幻覚や妄想などの心理症状や行動異常を軸とする周辺症状に分けられます。

 

①中核症状・・・・・「人の名前が出てこない」・「同じことを何度も聞く」・「日付日時が曖昧になった」・「食事した事を忘れている」・「計算が出来ない」・「道に迷って帰ってこられなくなった」など記憶障害を軸とした症状

 

②周辺症状・・・・・「性格が変わった」・「財布を盗まれたと言う」・「幻覚」・「不安」・「睡眠障害」・「暴言暴力」「猜疑心が強くなった」・「やる気を失った」などの心理的や行動異常を軸とする症状

 

これら全てが出現する訳ではありません。また記憶障害よりも周辺症状が目立つ事も多いです。そして初期段階では非常に軽い症状のため他の疾患と混同したり、診断に苦慮するケースも散見されます。それでもご本人、ご家族は「最近、人の名前や電話番号が出てこない」「何度も同じ事を言う」「月日を間違える」といった症状から「やる気を感じられない」「元気がなくなった」「妄想が強い」「性格が変わって怒りっぽくなった」などの症状から認知症を心配するのは当然の事かと思います。まず最初に判断すべき事は本当に認知機能が障害されているかどうかです。

 

本当に認知症なのか?

まず最初に『老化による物忘れ』なのか、本当に『認知症』なのかを判断します。仮に本当に認知症であるならば、認知症の進行の程度を確認する必要があります。

 

認知症の原因

本当に認知症であるならば認知症の原因によって、それぞれ治療方針が決まります。その原因を探る必要があります。アルツハイマー型認知症が有名なために認知症と診断されたら治らない病気と思われている方が多いですが、投薬や手術で改善する認知症も多数存在します。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症が原因で認知症になっている方は数十分の手術で認知症は改善します。これらはCTやMRIで即座に診断可能です。一度は必ず頭部の精査は必須な検査と言えます。また感染症やビタミン、アンモニアなどが原因の認知症は投薬で改善します。これらは採血を行えば即座に診断可能です。これらが否定されて初めてアルツハイマー型認知症を代表とする変性性認知症の鑑別が始まります。

 

・変性性認知症・・・・・脳の神経細胞が変化することによって発症する認知症。

(アルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症,認知症を伴うパーキンソン病,前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症など)

 

・二次性認知症・・・・・なんらかの外傷や病気を原因として発症する認知症。

(脳血管性認知症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、感染症,代謝性疾患)

 

この様に本当に認知機能が障害されていることが確認されたならば、頭部CT,頭部MRI,採血検査などから原因が見つかる二次性認知症のチェックを必ず行います。その結果二次性認知症であるならば元疾患の治療を開始します。二次性認知症が否定されたならば変性性認知症の鑑別を開始します。

 

認知症の治療

変性性認知症:記憶障害など中核症状の進行を薬で遅らせることができ、早く使い始めると健康な時間を長くすることができます。介護困難度は記憶障害よりも周辺症状に左右されます。周辺症状への対応は各々症状に応じた治療薬でコントロール可能です。また御家族が病気を理解し、対応を学ぶことにより認知症患者の尊厳を守りながら生活の障害を軽減する事が可能で、その後のトラブルも減ります。周辺症状をいかにコントロールするかが認知症専門医の力量が問われる分野です。

二次性認知症:基礎疾患の治療で寛解する可能性が強いため、基礎疾患の治療を開始します。

 

認知症の治療の目標

変性性認知症の場合、残念ながら発症前の正常認知機能に戻すことは現代医療では出来ません。しかし早期治療介入で進行を遅らせながら、周辺症状を上手にコントロールしご本人の尊厳を守りながら御本人、御家族が穏やかな生活を送れる事が目標になります。また病気への理解を深めると同時に行政や地域のサービスを利用し、安心して暮らせる体制を作っていきます。病院では①進行抑制治療②周辺症状の治療③薬の副作用のチェック(血液、心電図等)④進行状況を簡易検査、画像検査で定期的にチェックしてまいります。