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心疾患
心肥大
主要降圧薬のいずれも持続的かつ十分な降圧により心肥大を退縮させ、予後を大幅に改善します。特にレニン – アンジオテンシン(RA)系阻害薬・Ca拮抗薬は心肥大退縮効果に優れています。
冠動脈疾患
①冠動脈疾患の降圧目標は130/80mmHg 未満とし、第一選択薬は、Ca拮抗薬や内因性交感神経刺激作用のないβ遮断薬を使用します。冠攣縮性狭心症の第一選択薬はCa拮抗薬です。
②心筋梗塞後の患者ではβ遮断薬、RA 系阻害薬、MR拮抗薬が死亡率を減少させ予後を改善します。
心不全
①左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)の標準的薬物治療法はRA系阻害薬+β遮断薬+ 利尿薬の併用療法であり,死亡率を減少させ予後を改善します。
②標準的薬物治療を受けているHFrEFにおいて、MR拮抗薬は予後をさらに改善します。
③RA系阻害薬やβ遮断薬の導入にあたっては、心不全の悪化・低血圧・徐脈(β遮断薬)・腎機能低下などに注意しながら、少量から緩徐に最大忍容量まで漸増します。HFrEFでは病因・病態や併存疾患に応じた個別治療が重要となるため、一概に降圧目標値を定めることはありません。
④HFrEFを合併した高血圧において、利尿薬の適切な使用下に、RA系阻害薬・β遮断薬・MR拮抗薬を最大忍容量まで増量しても降圧が不十分な場合には長時間作用型Ca拮抗薬を追加します。
⑤左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)では、収縮期血圧130mmHg未満を目標に降圧します。
⑥HFpEFを合併した高血圧では、特に推奨される降圧薬のエビデンスはないですが、利尿薬を中心とした降圧薬治療を行います。
心房細動
①高血圧は心房細動発症の危険因子です。心房細動発症の抑制には収縮期血圧130mmHg未満の厳格な降圧が有効です。
②RA系阻害薬による心房細動発症予防効果は、高血圧患者全般については一次予防・二次予防とも明確とは言えないですが、左室肥大や心不全を合併する患者における心房細動新規発症抑制には有効であると考えられています。
③心房細動患者では適切な抗凝固療法や心拍数コントロールとともに、収縮期血圧130mmHg未満を目指した降圧が望ましいです。