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脳卒中
脳卒中とは脳の血管の病気の総称です。つまり脳出血・脳梗塞・くも膜下出血など脳の血管が原因となった疾患を包括して脳卒中と呼びます。日本脳卒中学会という学会があり、専門医制度を設け脳卒中専門医が中心となり脳血管予防に努めております。当院にも脳卒中専門医は在籍し、脳血管と高血圧の専門的な加療を行っております。さて高血圧ガイドラインでは以下の記載がされておりますが、急性期管理はクリニックでは非現実的です。
①脳梗塞発症してすぐの超急性期で血栓溶解療法といって脳梗塞の原因となった血栓を溶解した場合は、治療後24時間以内は180/105mmHg未満にコントロールする必要があります。
②脳梗塞で血栓溶解療法の対象にならない発症24時間以内の超急性期・急性期(発症2週間以内)の場合は収縮期血圧220mmHg・拡張期血圧120mmHgを超える高血圧が持続する場合や、大動脈
解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合は慎重に降圧療法を行う必要があります。
③脳梗塞が発症して1ヶ月以上経った場合は130/80mmHg未満を降圧目標とします。両側の頸動脈が高度に狭窄している場合や、脳主幹動脈閉塞を有する症例、または脳血管について未評価の場合は特に過降圧に注意し、140/90mmHg未満を目標とします。
④脳出血が発症して早期の急性期の血圧は、早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、このレベルを維持することを考慮してもよいですが、降圧に伴う腎機能障害に注意が必要です。発症してから1ヶ月が経過した慢性期では130/ 80 mmHg 未満を目標とします。
⑤発症から脳動脈瘤処置までの破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血では、再出血予防のために積極
的に降圧する必要があります。目標血圧を明記していませんが、通常140/90mmHg未満を目標として持続的に降圧剤の点滴静脈注射や必要によっては鎮静・鎮痛・筋弛緩を行い人工呼吸器装着下に厳格に血圧を管理します。
脳卒中救急医療を行っていると、これらの血圧管理は非常に重要です。持続的観血モニターといい直接動脈内に管を入れて24時間測定しているため24時間常に血圧管理を行っているようなものです。大学病院や総合病院に在籍している脳神経外科医は手術はもちろん昼夜問わず血圧の管理を行っています。この辺りの治療はクリニックが行う慢性期管理とは異なりますが、これらの管理を行う脳神経外科医達に敬意を持って割愛させて頂きます。