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眼科 脳神経外科
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脳疾患を知る

13-1
進行性核上性麻痺

中高年で発症し、パーキンソン病と似た症状が進行する疾患です。パーキンソニズムを示す疾患の中でParkinson病に次いで頻度が高い疾患で、パーキンソン病のおよそ1/20の頻度となります。中脳の黒質という部分に病変が存在するパーキンソンと比較して、進行性核上性麻痺は中脳後方が委縮し、4リピートタウ蛋白という異常なたんぱく質が蓄積します。この中脳後方部は上下方向の眼球運動や歩行、姿勢保持に重要な役割を果たしており、垂直性眼球運動障害、頚部後屈、歩行障害がみられます。

 

症状

初発症状はパーキンソン病に似ています。しかし安静時振戦は目立たず、易転倒性、すくみ足、姿勢保持障害が目立ちます。後方への転倒を伴う姿勢保持障害は発症早期から目立ちます。筋強剛は四肢よりも頚部、体幹に強いです。進行すると頸部後屈と反り返った姿勢、垂直性核上性眼球運動障害、構音障害、嚥下障害、想起障害が出現します。徐々に寝たきりになります。

 

①神経症状

A 易転倒・歩行障害

初発症状です。パーキンソン病より遙かに重い歩行障害です。初期から転倒を繰り返します。頚部後屈など姿勢の不安定さに加え、注意力が低下するため、何度注意を促しても転倒を繰り返します。歩行障害は開脚歩行・すくみ足・突進現象などです。

B 核上性眼球運動障害

垂直方向の運動障害で特に下方注視麻痺が現れます。進行すると水平性障害も現れます。

C パーキソンニズム

振戦は少なく、体幹に強い固縮が現れます。動作緩慢だが突然立ち上がり後方に転倒するロックサインや頚部後屈する頚部ジストニアが現れます

D認知機能障害

認知機能障害は運動症状出現後にみられるようになります。健忘(十分に時間をかければ思い出せる)を主訴とすることも多いが、前頭葉機能障害が目立ちます。 つまり注意障害、遂行機能障害、アパシーなどを呈します。前頭側頭型認知症に似た認知機能障害の現れ方をします。皮質下認知症のようにも現れ、思考緩徐で反応が悪く、問いかけに対して返答がないようにみえるが、時間を十分にかければ返答が返ってきます。遅延再生障害が特徴であるアルツハイマー型認知症とは大きく異なります。

 

②精神症状

感情障害と幻覚・ 妄想状態が現れやすいです。

A感情障害

抑うつ症状が病初期によくみられます。しかし罪業感に乏しい抑うつ症状です。

B幻覚・妄想

幻覚・ 妄想はよくみられます。幻覚は幻視であったり、幻聴であったりします。嫉妬妄想や性的異常行動を示すこともあります。これらは一 過性であることが多く、統合失調症の幻覚・妄想のように体系化し長く続く ことはありません。

 

診断

症状、経過、診察所見が最も重要なのはパーキンソン病とかわりませんし、パーキンソン症候群とよばれる疾患群との区別はとても重要です。

画像的特徴を以下に記載します。

①ハミングバードサイン

進行性核上性麻痺の場合、脳MRIで中脳の後ろが委縮して、ハチドリの頭のような形になりハミングバードサインと呼ばれます。 蜂鳥は,、小さな鳥で蜂のように飛び続けながら長い嘴で花の蜜を吸い取ります。その姿と似ているためです。

②第3脳室拡大

③四丘体槽拡大

④シルビウス裂拡大

⑤前頭葉萎縮、側脳室拡大など

⑥SPECTおよびPETにおける前頭葉の血流低下

 

治療と予後

根本的な治療薬はまだありません。薬物療法として、パーキンソン病治療薬や抗うつ薬が用いられますが、効果は一時的です。非薬物療法やリハビリ加療、または対処療法が中心となります。リハビリは筋力維持やバランス訓練が行われます。また、手足の関節拘縮の予防を行います。一般的には歩行障害などが進行して転倒を頻回に起こし、やがて寝たきりとなります。発症してから寝たきりになるまでの期間は平均で4~5年程度と言われています。根本的な治療がないため、とにかく転倒予防が大事です。そのための環境の整備は非常に重要です。そばにあるものを取ろうとして転倒しないように、手を伸ばして取ろうとするような物は片付け、普段使うものは体に近いところへ落ちないようまとめておくようにします。トイレに行く際の転倒も多いため、余裕を持って早めに排泄するようにします。他にもスリッパは転倒を招くため、気をつけて下さい。またカーペットのわずかな段差も転倒の要因になります。

嚥下障害の状態に応じて食事形態を変更します。飲み込まないでどんどん口に詰め込んでしまう場合は、声掛けも必要です。水分でむせる場合にはとろみをつけたりします(とろみ剤は薬局で手に入ります)。経口摂取ができなくなったら、経管栄養食を併用したり、経管栄養に切り替えて鼻腔栄養や胃瘻からの栄養補給(腹壁から直接胃の中にチューブを入れる)を行ったりします。

寝たきりになったら、時間おきに体の向きを変えて(体位変換)床ずれを防ぎます。また口の中を清潔に保つようにし、適宜痰を吸引(吸痰)して肺炎を予防するようにします。

 

当院は静岡県伊豆半島に開院した脳神経外科専門医・眼科専門医・脳卒中専門医・頭痛専門医・認知症専門医が常勤しているクリニックとなります。一般的な眼科・脳神経外科・内科などの外来はもちろん、頭痛外来・もの忘れ外来などの専門外来も常時受け付けております。眼科は白内障や眼瞼下垂、硝子体の手術を行っております。脳神経外科で手術が必要な場合は昭和大学脳神経外科、順天堂大学脳神経外科、その他ご希望の病院と提携し紹介させて頂いております。駿東郡・清水町・三島市・沼津市・長泉町・伊豆の国市・函南町・裾野市・熱海市・伊東市・伊豆市・小山町の方々から遠方の方々まで、気になることがございましたらいつでもご相談下さい。