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脳疾患を知る

5-3
妊娠中の片頭痛治療

非薬物療法

まずは片頭痛発作の誘引になる要素を避けることです。日常生活の工夫をしましょう。適正な睡眠時間をとる。これは寝不足は勿論のこと週末の寝過ぎも良くありません。適正な睡眠時間を取り規則正しい生活を心がけましょう。また仕事も無理をしない。他食事や匂いで誘発される要因があれば極力避けましょう。睡眠によって改善する事が経験的に分かっていればしっかり休むことも大事です。

薬物治療-急性期治療薬

 

  • アセトアミノフェン

軽度-中等度の片頭痛発作に対しては効果を示し、制吐剤との併用投与が勧められています。実績のある安全性の高い解熱鎮痛薬です。NSAIDsに比べ、効果はゆるやかですが、副作用が少なく長期の使用も比較的安全です。激しい痛みには不向きかもしれませんが、軽度から中等度の広範な痛みに適用可能です。安価なのも利点です。妊娠・授乳期の仕様に関して専門家の一致した見解で第一選択薬となるお薬です。

 

  • 非ステロイド系抗炎症剤NSAIDs

妊娠初期から中期にかけては消炎鎮痛剤使用の催奇形性の報告はありません。添付文書で妊娠中使用が禁止されているものは、インドメタシン・ジクロフェナック・メロキシカムです。その他の消炎鎮痛剤は、アセトアミノフェンを使用してみたものの効果が薄く、治療の有益性が危険性を上回るときにのみ投与可能とされています。ただし安全性の面を第一に考えますと、アセトアミノフェンが安心です。一方、妊娠後期はアセトアミノフェン以外の鎮痛剤は投与しないことが原則です。理由はNSAIDsは胎児の動脈管収縮を生じる可能性があるためです。さて動脈管収縮を説明する前に、プロスタグランジンという物質があります。この物質は身体に炎症が起きた時に作られます。そして身体を発熱させたり、痛みを強くする物質です。多くの解熱鎮痛剤は、このプロスタグランジンの産生を抑える作用をします。プロスタグランジンの産生が抑えられれば、解熱や鎮痛の効果が出るわけです。このプロスタグランジンは妊娠後期の母胎では全く別の働きをしています。胎児は母体内では、へその緒を通してお母さんから栄養や酸素を受け取ります。そこで受け取った血液は心臓に戻ります。出産後はそこから自分の肺に血液が行くのですが、母体内では肺には行かないで動脈管という通路を通って循環しているのです。プロスタグランジンはお腹の中で胎児の動脈管を広げ、血液が動脈管を通りやすくする役割を持っています。よって解熱鎮痛剤を大量に内服して、プロスタグランジンが減ってしまうと動脈管が狭くなってしまいます。すると胎児は上手く血液を循環できなくなり、その結果「肺高血圧症」という病気の原因になることがあるのです。その他、本来は出産後に自然閉鎖するはずの動脈管がふさがらなくなってしまう事もあります。従って安全性を最優先に考えた場合、第一選択はやはりアセトアミノフェンというのが現実的な対応となります。NSAIDsの中ではイブプロフェン(ブルフェンなど)は比較的安全性が高いと言われています。授乳中の注意はイブプロフェン(ブルフェンなど)、メフェナム酸(ポンタール)、ナプロキセンなどは母乳へ移行するので投与は禁止と記載されていますが、イブプロフェン、ナプロキセンは国立成育医療研究センターでは、『授乳中でも安全に使用出来ると考えられる薬』の中に提示されています。

 

 

  • 第一選択薬は全期間においてアセトアミノフェン

  • 妊娠後期はアセトアミノフェン以外使用不可

他剤

トリプタン

トリプタン系薬剤に関しては、催奇形性や胎児毒性の報告はありません。いずれのトリプタンも添付文書上、妊娠中の投与を禁止していません。日常生活支障度が強い場合使用する事が出来ます。その中でもスマトリプタンが数多くのデータがあります。妊娠初期だけでなく、中期・後期も含めて有害事象の報告もないことより、スマトリプタンが最も無難な選択と考えられています。本邦で使用できる他のトリプタンに関してはスマトリプタンと比較すると報告数が少ないのが実情です。

 

エルゴタミン

エルゴタミン製剤は子宮収縮作用、胎盤血管収縮作用により妊娠、授乳期ともに使用する事はできません。

 

制吐剤

ドンペリドン(ナウゼリンなど)は妊娠中の使用は禁止されています。大量投与の動物で催奇形性の報告があります。そのため、妊娠中はメトクロプラミド(プリンペラン)を使います。

 

 

  • トリプタンは使用可能だがスマトリプタンが安全

  • エルゴタミン製剤は使用可能

  • ドンペリドン使用不可・メトクロプラミド使用可能

薬物治療-予防薬

妊婦に対する片頭痛予防の投薬治療は勧められていません。従って予防治療中は避妊することが望ましいと言えます。また妊娠中片頭痛発作が頻発する場合は、発作誘因の除去、リラクゼーションなど薬物を用いない方法を検討します。なるべく避けたいですが、妊娠中あるいは妊娠する可能性を前提に予防薬を検討するならばβ遮断剤(プロプラノロール)となります。そして少なくとも出産2週間前までに中止する方法がとられます。一般使用時には副作用の低いカルシウム拮抗薬(ロメリジン)は妊婦への使用は禁止されています。実験動物で障害の報告がありました。ヒトにおける催奇形性や障害の報告はありませんが、服用中に万一妊娠した場合は服用を中止します。アミトリプチリンも妊娠中の服用は回避すべきお薬です。バルプロ酸は前項でも述べましたが、ヒト胎児での催奇形性や胎内暴露によるIQの低下が示されております。妊娠の可能性がある場合、片頭痛予防を目的とした投与は容認されません。

 

  • 予防薬は原則推奨されない

  • どうしても使用するならばプロプラノロール

  • ミグシス・バルプロ酸・トリプタノール使用不可