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脳疾患を知る

5-1
妊娠前の注意点

はじめに

女性の片頭痛の有病率は高く、妊娠可能な年齢の女性に対する治療は妊娠時の対応を考えて治療を行わなければなりません。しかしながら前項で説明したように、妊娠した片頭痛患者の80%以上で片頭痛発作が軽減あるいは消失します。そのため実際には妊娠中に片頭痛が問題となることはあまり多くありません。

妊娠・出産は女性にとって大きなライフイベントであり身体的、精神的な変化が大きく、また初めての経験である場合、不安が大きくなるのは当然です。もちろんご家族や周囲の方々も喜びの一方、不安や心配が多い時期です。最も問題となるのは、妊娠を知らずに服用してきた片頭痛治療薬の胎児への影響になります。次に片頭痛発作が消失、減弱しなかった場合における片頭痛の治療法、そして授乳期における片頭痛の治療法を説明してまいります。

妊娠前ー初期の注意点

片頭痛は妊娠可能年齢に好発することから、医師が治療に介入する際には注意が必要であります。特に予防薬を投与する際には事前に薬剤について説明を十分に行う必要があります。統計的にいかなる薬物使用がない場合でも、一般的な新生児の奇形発生率は3~5%です。片頭痛治療薬でヒト胎児に奇形を引き起こすことが報告されている薬は予防薬のみです。急性期治療のみで対処していたならば、必ずしも過剰な心配をする必要はないと考えられています。しかしながら妊娠したことに気付かずに薬物の使用を継続しており、万が一問題が生じた場合に自分自身を苦しむ結果となります。

そのような事態を避けるために

 

  • ①月経周期を頭痛ダイアリーに記載

  • ②基礎体温測定をしっかり行う事

が推奨されています。妊娠が疑われるような場合は原則として予防薬は中止します。特にバルプロ酸は1000-1500mg/日を超えると催奇形性が高くなります。また胎内暴露によるIQの低下が示されているため使用には十分な注意が必要です。妊娠の可能性がある場合は片頭痛予防を目的とした投与は容認されません。妊娠の予定がないが、妊娠可能な女性に使用する際においても、投与量 1,000mg 以下・血中濃度 70ug/ml 以下、徐放錠を用いて他の抗てんかん薬と併用しないようにする注意が必要です。また400μg/日の葉酸を食事ないしサプリ メントから摂取するよう推奨されています。

 

薬剤による胎児への影響

薬剤による胎児への影響は妊娠週数によって危険度が異なります。この点は妊娠を考えている女性の片頭痛治療にはしっかりと説明を行い不安を和らげる必要があります。

 

大原則「All or None」という法則

 

妊娠週数の考え方は、最終月経開始日を0日としてカウントします。40週0日目が分娩予定日となります。受精前~受精2週間以内に薬剤の暴露があった場合、薬剤の影響があれば

 

  • ①着床が出来ず自然流産する
  • ②完全に修復されて健児を出産する

2択しかありません。このことから「all or nothingの法則またはall or noneの法則」と呼ばれます。もう少し詳しく記載しますと、最終月経の初日から 2週間前後で排卵が起こります。この時に受精すると、分裂しながら子宮へと移動し着床します。これが妊娠です。この時期に薬物を服用して、大きな問題があれば受精卵は死んでしまいます。よって自身が妊娠とは気付く事はありません。これがALLです。一方で(OR)薬剤を服用し仮に問題が生じても、分裂中のために他の細胞が代償して、問題ない普通の発育が出来ます。これがNONEです。 したがって、受精から 2 週目までに薬を服用したとしても影響はないと考えられています。この時期に妊娠週数を把握することは難しいため、気がつかずに薬を服用することがありますが、たとえ薬を服用したとしても問題ないことをお伝えし、不安を与えないようにしなければいけません。また月経周期が一定であるならば、一般的な片頭痛治療薬は月経が遅れた時点で(排卵から14日くらいまで)中止すれば問題がないと言われています。