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脳疾患を知る

7-1
緊張型頭痛-総論-

はじめに

緊張型頭痛は、生涯有病率が30-78%と報告され、最も頻度が高い頭痛です。しかし、頭痛の程度が軽度から中等度であることが多く、重度の頭痛を訴えることはまれです。したがって、緊張型頭痛が出現したとしても、多少の辛さの差はあれども仕事、家事、勉強などは行うことができます。そのため日常生活に大きな影響を及ぼす片頭痛をはじめとする他の頭痛と比べると、実際に頭痛外来を受診される方は多くありません。頭痛の性状は、頭全体か後頚部に鈍い締め付け感、圧迫感と表現される頭痛が出現します。ズキンズキンと脈打つような拍動性頭痛が特徴的である片頭痛に対して、緊張性頭痛は非拍動性の頭痛が特徴です。頭痛の頻度も個人差があります。持続時間も30分程度のことから1週間続くこともあり様々です。

原因

長時間同じ姿勢でのデスクワーク・読書・勉学・パソコン・スマホ・ゲームや、車の運転など不自然な姿勢が長時間持続することが要因になっている事が多いようです。また前傾姿勢、うつむき姿勢、睡眠中の不自然な姿勢、不適切な枕の高さなどが要因になっているケースも多いです。それらに加えて、ストレスや不安、緊張、プレッシャーなどの精神的な要因が神経や筋肉の緊張を高めて頭痛を誘引します。このような理由から筋肉への血液の供給が減少したり、筋肉が硬くなったりして、筋肉や筋膜を支配している神経が過敏になります。これは脳の感覚の中枢に原因がある中枢性因子という言葉に対して、脳から神経が出た後の末梢の問題ですので末梢性因子と表現されています。一方、末梢の筋肉や筋膜から三叉神経という神経を介して、中枢の脳幹や大脳に伝わり感作されます。こちらは中枢性因子と呼ばれます。緊張型頭痛のメカニズムは末梢、中枢いずれの関与も考えられ、発作の頻度が少ない緊張型頭痛では末梢性因子が主に関与し、発作の頻度が高い慢性の緊張型頭痛では三叉神経を介した、末梢と中枢の両者が複雑に関与していると考えられています。

特徴

頭の両側が締めつけられるような頭痛が、予兆や前兆といった症状がないまま、いつの間にか始まっている事が多いです。『きつい鉢巻きを締め付けられている』『ヘルメットをかぶっている』『重い感じがとれない』『肩こりから後頭部が重くて張った感じ』など表現は様々です。片頭痛のような吐き気や嘔吐などは通常伴いません。また姿勢や動作によって頭痛の強さが変化することもあまり認めません。光や音に対する過敏は感じられることもあるようです。

診断基準

A.頻度の規定

2.1:稀発反復性緊張型頭痛:1ヵ月に1日未満     (年間 12日未満)                                  

2.2:頻発反復性緊張型頭痛:1ヵ月に1日以上14日   (年間 12日以上 180日未満)                    

2.3:慢性緊張型頭痛: 1ヵ月に 15日以上       (年間 180日以上)

B.頭痛は 30 分~ 7 日間持続する

 (慢性緊張型頭痛は数時間-数日または絶え間なく持続)

C.以下の4つの特徴のうち少なくとも 2 項目を満たす

   1.両側性

   2.性状は圧迫感または締めつけ感 ( 非拍動性 )

   3.強さは軽度~中等度

   4.階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない

D.以下の両方を満たす

    1.悪心や嘔吐はない

    2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ

E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版

個人差はありますが、頸部、後頭部中心に数十分~数日間ダラダラと持続する両側性の重い感じが続きます。軽度から中等度の頭痛が多いために日常生活は痛いながらもおくれています。

頭痛の頻度によって3つの緊張型頭痛に分類されます。

 

『月に1回程度でたまに起きる程度』     2.1:稀発反復性緊張型頭痛。

『月に数日起きるが連日という感じではない』  2.2:頻発反復性緊張型頭痛。

『月のうち大半が頭痛で持続時間も長い』     2.3:慢性緊張型頭痛

 

と分類しています。

頭痛頻度が少ない『稀発反復性緊張型頭痛』は、肩こりなど肩や後頚部、頭部の筋肉の緊張が原因で起こることが多いです。一方、連日起こる「慢性緊張性頭痛」では、頸部・肩の筋緊張に加え、精神的なストレスなどが関与し、脳が痛みに対して過敏になっている状態です。そして日常生活の質を高度に障害し深刻な疾患として他2つとは区別して考えています。

慢性緊張型頭痛

慢性緊張型頭痛の発作の頻度は 1ヵ月に 15日以上 ( 年間 180日以上 )になります。他2つの頭痛が筋肉や筋膜の関与が問題であったのに対して、慢性緊張型頭痛においては中枢性要因(脳の筋肉の緊張コントロールや痛みを感ずるシステムの異常)が関係しているといわれております。筋肉をリラックスする能力に欠け,かつ痛みに感作されている状態です。ストレスによって誘引される緊張型頭痛ですが、他2つの緊張型頭痛は肉体的ストレスが誘引であるのに対して慢性緊張型頭痛は精神的ストレスの割合が大きいようです。うつ病との関連もあるようです。よって痛み止めの薬があまり効きません。それどころか痛み止めを連用してしまい、『薬物の使用過多による頭痛』という別の病態を引き起こしている場合も多いです。慢性緊張型頭痛の頻度はそれほど多くはありません。慢性緊張型頭痛は加齢により増加するようです。また緊張型頭痛の方は片頭痛患者と比較して受診率が低いと説明しましたが、慢性緊張型頭痛の受診率は高率です薬剤依存の傾向も高いです。

 

特徴)

  • 頭痛歴が10-20年の中年女性に多い
  • 治療に抵抗性
  • 日常生活に関係なく頭痛持続
  • 青年期に片頭痛・反復性緊張型頭痛・その両者を経験し、少しずつ頻度が増加
  • 慢性疼痛・うつ・不安症など共存
  • きついヘルメットや帽子に締め付けられるような
  • 日常生活による増悪はしない

 

診断基準)

A. 3ヵ月以上、平均1ヵ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する頭痛で、B~Dを満たす

B. 数時間ー数日、あるいは絶え間なく続く

C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
1. 両側性
2. 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
3. 強さは軽度~中等度
4. 階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない

D. 以下の両方を満たす
1. 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか1つ
2. 中程度・重度の悪心や嘔吐はどちらもない
E. その他の疾患によらない

(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳:国際頭痛分類 第3版)

 

治療)

反復性緊張型頭痛は肉体的ストレスが誘引であるのに対して、慢性緊張型頭痛は精神的ストレスの割合が大きいようです。うつ病、不安症、慢性疼痛との関連もあるようです。よって痛み止めの薬があまり効かない治療抵抗性のことが多いです。慢性緊張型頭痛は鎮痛薬があまり効きません。「頭が痛い」のではなく「心が痛い」のです。心的ストレスが疼痛感受部に投射したための痛みなので、当然消炎鎮痛薬は効きません。このような場合はセロトニン枯渇改善を促す抗うつ薬のアミトリプチリンが頭痛が軽減します。逆に消炎鎮痛薬を使いすぎると、かえって閾値が低下し、頭痛がとれにくくなる治療が困難な状況なのです。

検査 診断

緊張型頭痛も片頭痛と同じく一次性頭痛です。最終的には医師による問診と診察から頭痛の特徴を割り出し診断されます。しかし一次性の頭痛の原則は二次性の頭痛が否定される事です。つまりCTやMRI、他の検査によって二次性の頭痛の否定が不可欠になります。画像検査だけで緊張型頭痛を診断することはできませんが、画像検査なしにも緊張型頭痛は診断できません。二次性頭痛の中には生命の危険な状態の疾患が数多く存在するからです。例えばくも膜下出血、脳腫瘍、脳出血、脳動静脈奇形、解離性動脈瘤、脳膿瘍、と挙げればきりがありません。初めて緊張型頭痛と診断する時や、過去の頭痛と違う頭痛や頭痛の性状に変化がある場合は、画像診断で異常がないことを確認する事が不可欠となります。緊張型頭痛を客観的に判断できる検査方法はなく、片頭痛など他の症状と判別が困難な場合もあります。早期に診断をつけるためには、自らが頭痛の頻度や時間帯、痛みの感じ方などを記録するなどして、医師に症状を正確に伝えることが大切です。